seven
「それにしても、ノンノはまだかな……」
「うん。気になるね……」
夏月とアリーチェはため息を吐いた。すると、ドアがノックされる。
「ノンノちゃん!」
慌てて、夏月がドアへ向かう。ドアを開けると、そこにはノンノが立っていた。
「どうぞ!」
ノンノは、軽く頭を下げ中へ入る。
「今日は、どこへ行ってたの?」
冷蔵庫から、三人分のプリンを取り出し、夏月が訪ねた。
「……動物園……」
「動物?」
コクリと、ノンノが頷く。
「……行ったこと……ないから……」
「そっか……。楽しかった?」
「……うん」
夏月は冷蔵庫から出したプリンを二人にくばり、自分もベッドの端に座る。
「パンダ見た?」
「……人がいっぱいで……ちょっとしか……見られなかった……」
いつもよりも、おしゃべりな状況で、よっぽど楽しかったのが見受けられる。こんなに楽しいと思わせてくれた酒井に、夏月は感謝した。
花子は、秋月の横を歩く。特に用事はなく、ただ秋月に会いたかっただけなのだ。怒っているだろうかと、チラリと秋月の顔を見る。
「花子さん」
「はい!」
突然、名前を呼ばれて驚いたのか、少し大きめの返事をした。
「会えて良かった……」
突然の秋月の笑みに花子は驚き、はずかしさから顔が紅くなる。
「わ、私も……」
怒られるものと思っていた。休みの日に、突然訪ねたのだから。しかし、秋月は笑って何事も無かったように振る舞う。
「会いたくて……ごめんなさい……」
「いいよ。私も会いたいと思っていたしね」
歩いているうちに、いつもの場所、中庭の東屋に到着した。
「どうぞ」
秋月が着席をすすめ、花子は座る。すぐに、秋月が座った。
「私たちは、休みの日に出られるけど、花子さんたち職員の人は出られないんだよね……」
「そうですね。機密保持だとかで、出ることは叶いません」
「そのうち、出られるようになったら、外を二人で散歩しよう」
秋月の提案に驚いた。しばし、返答が止まる。本当に、外へ出られるようになっても、自分と居てくれるのだろうかと疑問を持ちながらも返事をした。
「はい」
安心したように、秋月が微笑んだ。
「今、夏月が大変でね……。アリーチェさんと、敵は嫌だと言い出して……」
花子は、大人しく秋月の言う事を聞く。
「それで、どうしたもんかと……」
「そうですね……。ゲームみたいなものだと話してみては?」
「ゲーム?」
秋月が不思議そうな顔をした。