第二章 これは、魔法少女ですか?
門をくぐると、鬱蒼とした森が広がっている。この先に何があるのかと見てみるが先は見えず、二人の不安が増してくる。どちらともなく、握る手に力が入った。しばし考えるが、いつまでもここに佇んで居るわけにもいかず、互いに顔を見合わせ頷くと思い切って足を踏み出す。数歩、歩いただけで目の前に洋館風な建物が見えた。思わず立ち止まり、揃って振り返ってみるが、そこには鬱蒼とした森が広がっているだけだった。再び目の豆の建物に視線を戻すと、意を決したかのように揃って歩き出す。
「なんか、きれいなお化け屋敷? って感じだね」
不安をかき消したいのか、夏月がそう言葉を発した。
「あぁ、言われてみれば、そんな感じだ」
夏月の言葉に少し和み、足取りが少しだけ軽くなった。
重苦しい扉の前にたどり着いたが、特に呼び鈴のような物は見つからず、二人は揃って小首を傾げる。
「そういえば、夏月はどうやってあの門を開けた?」
「え? こうやって触ったら勝手に開いたよ」
そう言いながら、夏月は目の前の扉に触れる。すぐに音もなくすっとドアが開いた。
「ああ、これが通行証だって言っていたな」
納得したようにそう呟くと、秋月は夏月を扇動するようにドアへと向かう。
ドアをくぐった先は、洋風なエントランスが待ち受けていた。そこに立つ一人の若い女性が深々と頭を下げた。キッチリとしたタイトミニのスーツを身に纏い、髪もかっちりと結い上げられ、銀縁のメガネも手伝い、一分の隙も無いような感じだ。
「稘 夏月様、稘 秋月様でございますね。お待ちしておりました」
「はい……」
雰囲気に飲まれたような二人の心許ない返事を聞き、スーツの女性が頭を上げる。
「私、勘解由小路 花子と申します。皆様のお世話をさせていただいております。よろしくお願いいたします」
「はい。よろしくお願いします」
夏月が頭を下げた。秋月は花子の前へと進み、その手を取る。
「花子さんとお呼びしてもよろしいでしょうか?」
「はい」
特に臆することなく花子が答える。
「ありがとうございます。これから、ご指導、ご鞭撻のほど、よろしくお願いいたします」
未だに手を取る秋月を、花子は気にすることもない。
「それでは、ご案内いたします」
ジッと見つめる花子の視線に、秋月は名残惜しそうに手を離した。軽く会釈をし、花子はゆっくりと振り返り歩き出した。エントランスの階段へと向かうその後を、二人は付いて行く。