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世紀末とボク?  作者: さくら
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ten

 そう一郎が言い終わると同時に、玄関のドアが閉じられた。言葉の意味を理解し、秋月は慌てて靴を履き外へ飛び出したが、そこには既に二人の姿はなかった。

 

 高い塀に囲まれた大きな門の前で、一台の車が止まった。運転席から一郎が降り、後部座席のドアへと向かう。一郎がドアを開けようと手をかけた瞬間、勢いよくドアが開く。急なことで一郎は避け損ない、もろに当たってしまった。

「失礼。伊藤さん」

「いえ……」

 ぶつかった額を押さえ、ずれたメガネを直しながら一郎は平然を装った。あれから何度か電話で連絡があったが、肝心なことは何度尋ねてもはぐらかされ、今日を迎えてしまった。車中でも色々と質問をしたが後で分かるというだけで、苛立ちが限界に近い状態であった。

「疑問なんすけど、なんでかのじょはいつも鈴木の名字を間違えるんすか?」

 助手席から降りるとすぐに後ろの後部座席のドアを開け、ジョンは夏月に尋ねた。

「間違えるんじゃなくて、覚えてないというか、覚える気がないというか……。しづきちゃん、男の人はどうでもいい人だから、あまり気にしない方がいいです」

「男嫌いってことっすか?」

「嫌いじゃなくて、どうでもいいという感じ……」

「つまり、GLの人ってことっすか?」

「じーえる?」

 不思議そうな顔をして小首を傾げる夏月の側に、秋月がやってきた。白を基調とした制服姿の二人が並ぶ。

「なんか、マジパネェ美形な兄と妹って感じっすね」

 スラックスの男子生徒の制服の姉と、スカートの女子生徒の制服の弟が並んでいても、特に違和感は無かった。

「そういえば、その制服、要望を受けてから急いで作ったのですが、お気に召していただけましたか?」

 一郎が、怖じ怖じと尋ねた。

「悪くはないです」

 素っ気なく、秋月が答えた。

「あ、そういえば、なんで僕はスカートなの? しづきちゃんと逆だよね?」

「そっちの方が夏月に似合うよ」

 そう答えた秋月に対し、夏月は軽く頬を膨らまして抗議を示す。だが、秋月は特に気にかける様子もない。

「とりあえず、詳細は中で伺えるんですよね?」

 まだふくれている夏月を放置し、秋月が尋ねる。

「あ、私たちは、この中に入れないんです。なので、詳細は中の人に聞いてください」

「そっす。男子禁制なんす」

 二人の言葉に、秋月は考え込む。

「じゃあ、夏月はこの中には入れないのでは? これでも一応、男ですし……」

 秋月はゆっくりと、視線を夏月へと移す。

「あ、たぶん大丈夫です」

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