レッスンラスト ウルフの子と共に
アメッサがほぐした焼き魚をウルフの子に食べさせていく。
ウルフの子は美味しそうに食べている。
「ちゃんと子供の頃から食べさせないといけないんですよ。」
「これは嫌って、食べ物が偏っちゃうんだよね。って、文献にあったんだよ。」
子供の頃から大人になってから食べる物の味を刷り込む必要がある。
栄養の無い物しか食べなくなるからだ。
その様子を見ながら魚を焼いていくセシル。
「気を付けますね。」
「うんむ。でもそれは、飼い主との付き合いも同じ。しっかりとした付き合いを子供の頃からさせないといけないのだよ。」
「そうだね。適当な付き合いをしていると、舐められたりするから。」
「ひねくれるって事ですね。」
あんなに純粋な子でも、大人になるとどうなるか分からない。
つまりは、子供の頃からの付き合いが大事という事だ。
トーパが解説する。
「必要なのは、同じ事を共有する事。と、いう事で、最後の試練はウルフの子と一緒に過ごす事。むしろ、これが今日習う事の本題だね。」
「一緒に過ごす。ですか?」
「そう。私達がいなくてもやっていけるかテストだよ。テント張りからご飯の準備といった事を君達でやってもらう。」
今後のレッスンには一切関わらない。
完全にセシル一人に委ねるという事だ。
アメッサが追加で言う。
「何か合ったときの為に、医療室で待機はしておきますけどね。」
「まぁ、明日のじゅ・・・。する事が一杯だしね。」
「じゃあ、晩ごはんまで丸投げするんでよろしくー。」
自分達の分の焼き魚を取ったトーパが医療室に入っていった。
そして、ウルフの子の食事を終わらせたアメッサがウルフの子を抱きかかえた。
そして、セシルの下へ向かう。
「はい。この子をどうぞ。私もいるので怪我があれば言って下さいね。時々、傷口を見に来ますから。」
セシルにウルフの子を渡したアメッサも医療室へ。
これで完全に一人と一匹だけに。
ここから、本当の試練が始まる。
「って、言っても何をすれば。なぁ。」
ワン。と、返事が来た。
いきなり自由になると、何も分からなくなる。
取り合えず、ウルフの子を地面に降ろすセシル。
すると、ウルフの子は、律儀に座ってセシルを見上げた。
「そういえば、テントを張れって言われたっけ。確か、食事の準備の時に、それっぽいのがあったはず。」
馬車の隣に、色々置いてあるスペース。
まずは、その場所に向かうのが先決だろう。
移動をしようとしたが、その際に笛を長く吹く。
「こういう時も、しっかりと覚えさせないとね。」
セシルの後を、とことこついてくる。
ウルフの子を引き連れ馬車の横に。
そこにある物をあさっていく。
「あった、テントだ。これは、ボールに紐? これで遊べって事か。」
一応、何か出来るようの物は用意しているらしい。
しかし、まずはテントだ。
寝床を整えるのが先決。
テントを取ったセシルが立ち上がった。
「一応、立てた事はあるけど。」
それは、昔の村での事だ。
テントの骨組みを見て思い出す。
早速組み立て始める。
「まずは、骨組みだな。」
骨組みを繋げていく。
そして、カバーを被せる。
経験者ゆえここまでは簡単だ。
次は、固定具を埋めていくのだが。
「おーい、それはおもちゃじゃないよ。」
ウルフの子が、台に使う固定具を噛んで遊んでいる。
ここは叱るべきなのだが、通じないので怯えさせるだけだろう。
「こういう時の笛だな。」
セシルが笛を長く吹くと、とことことセシルの下にきた。
固定具を持つとあっさり離してくれた。
そして、ウルフの子の頭を撫でる。
「もしかして、遊びたいだけ? そういえば、ほったらかしだなぁ。」
暇をもて余したので、自分で遊びだしたのだろう。
今回は、一人でやるものではないのだ。
「そうだよな。一緒に、だもんな。」
早速、笛を軽く吹いた。
ウルフの子は、テントの道具の所へ。
固定具を噛んだのを見て、笛を長く吹いた。
こっちに持ってきてくれる。
「よーしよし。良い感じだよ。」
頭を撫でて、もう一度。
固定具を持ってきてもらう。
更に、もう一度。
固定具を刺しながら、繰り返す。
「よーし。良いぞっ。」
最後に、ロープを固定具に通して完成。
揺らして確認。
強度は問題なし。
「よしっ、突撃っ。」
笛を吹いて、ウルフの子と共にテントの中に飛び込むむ。
そのまま一緒に床に寝転がる。
そして、横にいるウルフの子の頭を撫でる。
「気づいてやれなくてごめんな。」
返事はない。
ただ気持ち良さそうにしている。
まだ、試練は始まったばかりだ。
「よし。遊ぶかっ。」
笛を吹いて、テントの外に。
それからは、用意してくれたボールを投げたり、紐を引っ張りあったりと楽しい時間を過ごした。
気づけば辺りは暗くなっていた。
すると、トーパとアメッサが医療室から出てきた。
「やぁ、順調のようだね。」
「いつの間にか、仲良しさんですね。」
セシルとウルフの子は、休憩がてら座って休んでた所だ。
ウルフの子は、セシルの横で寄り添って寝ている。
どこからどう見ても、仲の良いコンビだ。
「で、どうだった? 邪魔されたでしょ。」
「知ってたんですね。」
「そりゃあねぇ。何にでも興味を持つ子だもん。」
知ってた上で黙っていたみたいだ。
それで、大事な事に気づくきっかけになるんじゃないかと、わざと言わなかったのだろう。
実際、そうなったのだから目論見通りという訳だ。
「じゃあ、お待ちかねの晩御飯だよ。」
「良い食材を用意しておいたからね。」
医療室から箱を取り出すトーパ。
箱を外すと、肉の塊が出てきた。
そして、その横には梱包されたブロック状の肉が沢山。
「じゃじゃーん。お肉だよー。わざわざ取り寄せて置いたんだよ。それと、こっちはウルフの子用だよ。普段、助手ちゃん達にあげてるやつ。」
「それじゃあ、私達が食材の準備をしている間、ウルフの子にあげてね。」
「良いんですか?」
「そろそろ良いかなって。私も見てるし大丈夫。じゃあ、手を出して。」
と、ブロック状のお肉が詰まった袋を開けるアメッサ。
すると、出したセシルの手に水をかけて、肉を乗せていく。
「じゃあ、そのまま。ウルフのの前に。」
言われた通り、寝ているウルフの子の前に手をかざす。
すると、匂いでウルフの子が起きた。
目の前にあるお肉を見て、セシルの顔を見た。
すると、アメッサが言う。
「一個、食べさせてあげて。」
「えーと。こうですか?」
中から一個を掴んで、ウルフの子の口へ。
それを、噛んで飲み込んだ。
すると、セシルの手の上のお肉を食べ始めた。
アメッサが解説する。
「ご飯だって分かんなかったんだね。」
「そりゃあ、今まではスプーンで食べさせてあげてたからですな。」
「そうなんですね。って、じょりじょりする。」
食べ終わったウルフの子が、セシルの手をなめ始めたのだ。
舌がざらざらと、セシルの手を擦っていく。
それを、羨ましそうにトーパが見ている。
「私もやりたい。やらしてくだせー。」
「はいはい。まずは手を洗ってからね。」
同じように洗った手の上にお肉を乗せたトーパが、ウルフの子の前に手を差し出す。
それを食べるウルフの子。
トーパは嬉しそうだ。
「わはー。ほんとにじょりじょりしてるー。アメッサもどう。」
「私は既に堪能済みなので。」
「えー。ずるーい。何でやらしてくれなかったの?」
「私以外に食事をあげれなかったからですよ。それより、私達もご飯を食べましょう。」
二人に斬られた、お肉を食べていく。
塩につけて一口。
なかなか美味しい。
ウルフの子に水を飲ませながらも、食事を進める。
「ふぅ。食べた食べた。ウルフの子は?」
「そこで、眠そうにしてますよ。」
「ホントだ。」
ウルフの子は、セシルの足元でほぼ寝かけている。
気づかずに踏みそうな位置だ。
「沢山、動いてたもんね。」
「そうだね。じゃあもう寝ちゃいなさい。」
「試練は、どうするんです?」
「そういえば、ゴールを決めてなかったよね。じゃあ、一緒に朝を迎えなさい、って事で。」
一緒に夜を過ごせという事らしい。
元々は、どう過ごせるかを見るもの。
寝る時も同じでないといけないのだ。
一日を共に過ごすなら、寝て起きた時が締めに丁度良いという事だろう。
「それじゃあ、お言葉に甘えて。」
笛を吹いてウルフの子を呼ぶ。
そのまま、一緒にテントの中に。
床に布を敷いて、共に寝転がる。
「ふぅ。学ぶ事が沢山だな。」
返事はない。
もう、限界みたいだ。
丸まって、うっすらとこっちを見ている。
「どうしてお前は自分を選んだんだ?」
返事はないし期待してはいない。
でも、ふと聞きたくなったのだ。
答える事なく、ウルフの子は瞼を閉じた。
「自分も寝るかな。」
トーパとアメッサが、医療室に戻った音がした。
それを最後に、セシルも眠った。
翌日。
研究所の前に小さな竜車が止まった。
セシルは、ウルフの子と共に竜車の前に。
トーパがセシルに指示を出す。
「この前あげた布。この子にかけて。」
はい。
ウルフの子の首に布を巻いてあげるセシル。
素直に受け入れてくれたので、すんなりと巻けた。
「なかなか良いじゃない。かっこいいぞ。」
しゃがんだトーパが、ウルフの子の頭を撫でた。
アメッサが、それを注意する。
「もう出発するからその辺でね。」
「ほーい。じゃあ、セシル君乗って。」
三人と一匹が乗り込んだ。
そして、ふかふかな椅子に座る。
トーパが、前座にいる人に声をかけた。
「準備完了。行って良いよ。」
「はい、お嬢様。」
竜車が走りだして研究所を離れる。
そのまま、都市の外へ。
目的地の学校へと出発した。
最後に出た竜車は、トーパの実家のものです。
なので、豪華な装飾で彩られています。
でも、小さいです。




