無双。
密林に入り、分かれ道も越え、乱戦が行われた舞台へ。
死体は転がったままだ。
すると、また通信機が鳴った。
ボタンを押すと、通信機から声が流れる。
『こちら作戦本部。参加者全員に流している。』
ジンバルの声だ。
参加者全てのチームに、通信を送っているようだ。
一方通行なのでこっちの声は向こうにいかない。
『敵は目下、接近中。我々はかの個体を神獣と名づけた。以後このように呼ぶ。その神獣が、胴体を水面から出したと同時に攻撃を開始する。それまでに配置についておいてくれ。』
水中だと、攻撃が通らない。
なので、地上に出た瞬間を狙うという事だろう。
その時は、一刻と迫っていく。
「だそうだ。全員、戦闘配置につけ。コガラキは、鳥で先を見ておいて欲しい。」
一同から了解との返事が来る。
コガラキが笛を吹くと、鳥が密林の入り口に向かった。
ハント組が、竜車から降りる。
その際、疑問を聞くシルファ。
「そういえば、ここを選んだのは何でなん?」
「丁度良い感じに壁があるからよ。」
「合理的。」
アリアが質問に答えると、ユーリアが同意した。
壁とは、転がっている死体の事だろう。
入り口付近に転がっているので、真正面からは攻めにくいだろう。
アリアが続ける。
「それに、匂いも残っているしね。」
「いっその事、もっとつけるか?」
「一応、ボスクラスも来るから無理ね。」
エリクの提案を呆れながら却下するアリア。
来るのは雑魚だけではないのだ。
すると、通信機から声が流れる。
『神獣の、胴体が一部見えた。そろそろ開始する。砲撃準備。』
再び静まり返る。
タイミングを見計らっているのだ。
そして、とうとうその時が。
『全隻、撃てぇーっ。』
すどーーーんっ。
ジンバルの指示と共に、砲撃音が密林全体に響いた。
遠くから、反響が聞こえる。
砲撃音が密林を越えて、周囲のエリアに広がったという事だ。
『もう一発っ。装填した船から撃っていけっ。ある玉、全部使いきるまで砲撃を止めるなっ。』
さらに、そこから砲撃音が立て続けに起こる。
ここまで騒がしいと、森にすむ者達も黙ってはいないだろう。
砲撃音の反響に混ざって、生き物の鳴き声が聞こえてくる。
グレンがそれに気づく。
「来てるな。」
「えぇ、間違いなく。」
森が騒がしくなってきた。
それに構わず、砲撃音が続く。
こちらを信頼しての事だろう。
ぴーひょろろろ。
コガラキの鳥が鳴いた。
それを聞いたハント組が武器を抜いた。
大量の足跡が迫ってくる。
グレンが後ろに声をかける。
「セシル。真正面の敵は任せれるか?」
「出来ます。」
迷わず断言した。
両手でしっかり持って、狙いを正面に向ける。
次の瞬間、肉食小竜が鳥竜の上に乗った。
しかし、現れたと同時に後ろに飛んでいった。
セシルのボウガンの矢が吹き飛ばしたのだ。
「よっしゃあっ。ぶっこむんよっ。」
「続く。」
シルファとユーリアが、鳥竜を越えて先に行く。
まず目の前の肉食小竜を斬る。
すぐさま次へ。
回転も加えながら、さらに数匹連続して斬る。
どれも一撃必殺の一振り。
一瞬にして、十匹以上を切り捨てた。
「爪が甘いっ。」
「任せてるだけなんよ。」
逃れた数匹はユーリアが斬る。
そのまま、通路に出て群れを斬っていく。
それでもこぼれた相手は広場へ。
壁を越えてきたものは、コガラキとセシルが落とす。
さらに、竜車の上からカリネ。
「おらぁ、まとめてこんかぁい。」
「あれ、カリネさん?」
「人が変わってるっすね。」
暴走気味のカリネに、偵察組が呆れている。
そんな中、中央から来る小竜を撃っていく。
それでも乗り越えてくるものは、エリクとグレンに叩き潰される。
竜車には絶対に近づけない。
すると、シルファが叫ぶ。
「ちぃっ。そっちにボスが行ったんよ。」
「問題ない。任せろっ。」
ボスが鳥竜を飛び越えて急接近。
遠距離攻撃をかわして、飛びかかって来た。
それと同時に、直撃した大剣がボスを持ち上げる。
てっぺんに持ち上げたと同時に振り下ろす。
地面に勢いよく叩きつけられたボスが絶命した。
「さすがだぜ。」
「たわいもない。次来いっ。」
迫る群れを、一同が落としていく。
その死体は、数十匹にもなるだろうか。
群れは、虫やネズミなど複数の種類が混じって増えていく。
エリクが聞く。
「数多くねぇか?」
「匂いが残ってるって言ったわよ。恐らく、六割近くがこっちに来るでしょうね。」
「六割か。まぁ良いや。全部やりゃあいい話だよなっ。」
「そういう事よ。頑張んなさい。」
引き続き、群れを斬っていく。
数は減らないが、先は譲らない。
さらに、虫のボスが三匹。
そのうちの一匹を、叩き落としてユーリアが首を刈り取る。
シルファがまた叫ぶ。
「虫のボスが二体、そっちに行ってるんよっ。」
「撃ち落としますっ。」「撃ち落とすっす。」
現れた虫のボスに、矢と爆発玉が着弾。
地面に向けて落下。
その下に、グレンとエリク。
「「おらぁっ。」」
虫のボスを大剣と槍で持ち上げた後、地面に叩き落とす。
一撃で絶命。
雑魚の相手の為、時間はかけられない。
「よし、いなくなったっ。そっちにいるので全部なんよっ。」
「よし、まとめて潰すぞっ。」
「おっしゃあ。」
広場の雑魚をまとめて潰す。
死体を乗り越え、グレンとエリクも通路へ。
残りを、四人で挟んで倒す。
グレンが最後の一匹を潰す。
「殲滅完了。」
残っているのはもういない。
死体の数は、通路と広場合わせて百体を越える。
完全に通路を押さえきれたのだ。
「なんだ、もう終わりなん?」
「まだまだいけるぜ?」
「同じく。」
「残念だが。もういないな。竜車に戻ろう。」
ハント組は、まだまだ戦いたいようだ。
がははと、笑ったグレンを先頭に竜車に戻る。
裏方組は、すでに竜車の中に戻っている。
「で、向こうはどうだ?」
「あまり、よくないようね。」
グレンの質問にアリアが答えた。
通信機の音を聞いている。
グレンも同じように、通信機に近づいた。
『・・・ん、駄目だ。ちっとも効いていない。もっと速くっ。』
ジンバルが叫んでいる。
砲撃音はまだ続いている。
グレンが言う。
「手こずっているようだな。」
「そうね。以前は、大竜の助けがあってようやくだもの。仕方ないわ。」
前回、神獣の進行をずらせたのは、大竜の貢献が殆どだという事だ。
それが無い今回だと、手こずるのは当然なのだろう。
その直後、地面が揺れる。
ずしーーん。
その振動がすべてを揺らす。
さらに、もう一度。
段々とその音が大きくなってくる。
アリアが説明する。
「水が震動を消せない所まで来てるわね。もう時間がないわよ。」
「みんなっ、あれを見るっす。」
コガラキが叫んだ。
コガラキが指をさす方を見る一同。
その先には、神獣の首がある。
ジンバルが叫ぶ。
『もう無理だ。上がられるっ。』
その直後、今までよりも強力な振動が来た。
一同は、その震動を知っている。
まさに、以前、近くで浴び続けた振動そのものだからだ。
アリアが指示を出す。
「出発準備っ。私達も行くわよ。」
いてもたってもいられない。
行っても何が出来るかなんて分からない。
でも、行かなくてはいけない。
すぐに準備を済ませて竜車を動かす。
「行った所で何が出来る、考えるのよ。」
竜車を走らせながらアリアは考える。
大竜の援護はもうない。
自分達に出来る事を考える。
すると、カリネが言う。
「じゃあ、新兵器出しますか。」
「新兵器?」
「まぁ任せなさいって。」
自信満々にカリネが答える。
竜車は、神獣を追って走っていく。
主人公達の成長をちゃんと書けたと思います。
背丈の近い相手だと、もう余裕ですね。




