強さを目指して
研究所に向けて歩き出す。
その前に、ご飯を食べる為ギルドハウスに向かう。
既にお腹が限界なのだ。
ギルドハウスの食堂に向かい昼ごはんを食べる。
食事をしていると、周りから噂話が聞こえる。
「なぁ、知っているか? この国の王女が帰って来るらしいぞ。」
「王女って確か、他の国との交易の話をしに行っていたっけ。上手くいったのか?」
(王女か、自分には関係無さそうだな。)
庶民のセシルには、縁の無い話だ。
そう判断しつつも、噂話を聞きながら食事を食べる。
昨日の話をしている者もいれば、仕事の話をしている商人もいる。
「王女と言えば、王都の品揃えはどうなってんだ?」
「全然だな。まぁ、王女しだいって所だ。」
「ほんと、最近の品揃えどうなってるんだ。かき集めんのに苦労しまくりだ。」
商人が愚痴っている。
目ぼしい情報も無いようなので、そそくさと食事を済ませた。
ギルドハウスから出ると、改めて研究所へと向かう。
勝手に入っていいのかと思いながらも中に入る。
「すみませーん。」
中に入ったセシルに教授が気づいた。
椅子に座って、お茶を飲んでいる。
教授がセシルに挨拶をする。
「あら、いらっしゃい。アリアならいないわよ。」
「いえ、教授に話があって。」
「ふふっ、覚悟を決めたようね。」
教授には、全てお見通しのようだ。
見透かされ驚くセシル。
教授が話を続ける。
「何で、知っているかの顔ね。まぁ、あなたが来るとしたら、それぐらいしかないもの。推理する程でも無いわ。とりあえず、座ったらどう?」
教授に促され、同じテーブルの椅子へと座る。
今思えば、教授の言う通り簡単な内容だ。
椅子に座ったセシルに、教授が聞く。
「それで、どういう心境の変化かしら?」
「えぇと、昨日の事なんですが。強い相手に殺されかけて。」
「話は聞いてるわ。今、その大とかげを解体している所よ。災難だったわね。」
「えぇまぁ、それで自分が出来る事に妥協はしたくないと。」
今出来る事を、全力で挑みたい。
でも、自分一人では限界がある。
その為に、自分に足りない物を補ってくれる力が欲しいのだ。
教授が何か考えている。
「なるほど。やけになっている訳ではなく、しっかりとした心の芯で導いた答えね。いいわ。紹介状を書いてあげる。その代わりといってはなんだけど。」
「はい、手伝いですね。任せてください。」
「今回は、紹介状の間だけで良いのでお願いしますね。」
自信満々に言うセシル。
これぐらいは、しないと申し訳ないのだ。
渡された籠を持って、薬草を取りに行く。
教授は、自分の部屋へと向かった。
いつもの場所についたセシルが薬草を摘んでいく。
(余裕。これなら早く終われるぞ。)
手慣れた動きで、薬草を摘んでいく。
その速さゆえ、更に奥へと向かう。
そこで、セシルの手が止まった。
「なんだこれ。」
そこにあるものに、戸惑うセシル。
つい言葉に出てしまった。
なにせ、そこにあるのは果実なのだ。
取り方が分からない。
「えぇと。」
引っ張っても取れない。
千切ろうとすれば、砕けそうで出来ない。
手間取っていると、横から出た手が、果実を回す。
その人物は、果実を持ってにっこり笑った。
「果実は回して取るんだよ。」
「もしかして、教授ってば果実の取り方を教えてねぇのか?」
「らしいね。まぁ、回せば取れるから、次からはそうしてね。」
ふと、声がする方を見るセシル。
そこには、セシルを囲む、三人の白衣を着た人がいた。
果実を持っている人は、セシルの籠に果実をいれる。
「どうも。この研究所の植物担当の助手だよ。」
「まぁ、何人か解体に回されていないけどな。」
「お陰で、たーいへん。それより君、アリアさんといつも一緒にいる子よね。って事はハンターなの?」
「は、はい。裏方です。なったばかりですけど。」
いきなり話しかけられ驚くも、返事を返すセシル。
この助手の人達は、ちらちらと視界に入っていたが話すのは初めてだ。
先程、果実を取った黒髪の女性が、笑って言う。
「あははっ。やっぱりそうだっ。アリアさんってば、あまり詳しく教えてくれないんだもん。気になっちゃうよね。」
「まぁな。いきなりつれてくるもんだから、どんな奴かぐらいは気になるよな。」
黒髪の男性も言った。
いつもの風景に入って来たイレギュラー。
気になるのも仕方ない。
すかさず、セシルが謝る。
「なんか、すみません。」
「あははっ。何で君が謝るんだいっ? そんな事よりさ、新人って大変じゃない?」
茶髪の女性が言ってきた。
ハンターに興味があるようだ。
セシルが答える。
「何度も死にかけましたよ。でも、仲間のおかげで乗り越えれました。」
「そうなんだぁ。それじゃあ、沢山の生き物を見てきたって事だよね。どう、やっぱり迫力はすごいの?」
「一目見ただけで、こんなのにどうやって勝つんだってなりますね。」
ぐいぐいと迫る、茶髪の女性の疑問に答えるセシル。
大きさもそうだが、一つ一つの動きが、見る者を震え上がらせる程だ。
実際セシルも、何度か体がすくんでいたのだ。
茶髪の女性が、男性に後ろに引っ張られる。
「ほら、あまりがっつくなっ。すまねぇな。俺達、死体ばっか見るけど、動く相手は見たことがねぇんだ。」
「それなんだよねぇ。死体見るたびどう動くのかって、よく酒のつまみに盛り上がってんだよ。いつか、見てみたいよねぇ。」
確かに、こんな所にこもっていれば実物を見るなんて出来ないだろう。
憧れが日々増しているのだろう。
黒神の女性が言う。
「でも、この道を選んだのは後悔していないよ。」
他の二人も頷いた。
自ら選んだ道だ。
後悔なんて、あるわけがない。
そんな話をしていると、教授がやって来た。
「あらあら、いつの間にそんなに仲良くなったのかしら。」
「さっきな。というか教授、果実の取り方教えてねぇだろ。代わりに教えておいたぜ。」
「あら、そうだったかしら? ありがとうね。」
「いや、別に構わねぇけどよ。」
元々は、セシルに興味があっただけなので教えたのはついでだ。
むしろ、話すきっかけが出来て良かったと思っている。
教授がセシルに話しかける。
「さて、紹介状の用意が出来たわよ。行きましょうか。」
「分かりました。それではこの辺で。」
薬草を摘むのは、紹介状を作る間の話だ。
教授の後をついて、研究所に戻るセシル。
名残惜しそうに、セシルを見送る三人。
「今度来る時は、ハンターの話を聞かせてね。」
「おう。遠慮せずにまた来いよ。」
「じゃあ、またねぇ。」
手を振って見送ってくれる。
手を振り返したセシルは、研究所に入る。
教授は、封筒をセシルに渡した。
「実はね。セシルが、ウルフの子を受け入れてくれて嬉しく思っているの。」
受け取ったセシルは、黙って聞いている。
教授は続ける。
「私はね。あなたが、ウルフの子に出会ったのは運命だと思っているの。さっきの子達ともそうだけど、出会いを大切にしなさい。それが、いつかあなたの力に代わると思うわ。」
「はい。」
そう言って、頷くセシル。
教授なりのアドバイスなんだろう。
心にしかと刻み込んだ。
教授は恥ずかしそうにしている。
「なーんて。運命なんて研究者が言う言葉じゃ無いわね。前にも言ったけど、エメリナ達の指示を聞きなさい。まぁ、既に何かしらの準備をしてそうだから、問題ないでしょうけどね。」
セシルが受ける前提で、話を進めているのだろうか。
あの人達ならありそうだと、セシルは思うのであった。
教授と別れ研究所を出たセシルは、拠点へと戻る。
「ボウガンの続きでもするか。」
今のセシルは、気分が乗っている。
決断をしたことにより、気が楽になったのだ。
拠点に戻ると、早速練習場に向かう。
すると、そこには先客がいた。
「おや、お帰り。ちょうど良かった、こっちに来て。」
そこにいたのはカリネだ。
ボウガンを持っているようだ。
カリネに近づくセシル。
「何ですか?」
「これ撃ってみて。」
カリネが持っているボウガンを手渡されるセシル。
それを構えると、その大きさに驚いた。
ボウガンの弓は、セシルの横幅よりも大きい。
しかも、本体はとにかく長い。
「何ですかこれ。」
「いいから、いいから。」
言われるがままにボウガンを撃った。
その瞬間、強力な反動がボウガン全体に響いた。
そして、セシルの体にずしんと衝撃が走った。
飛んだ矢が刺さった的は、砕けている。
その結果に、カリネが喜んでいる。
「よっし、成功だね。威力も充分。獣のボスぐらいなら、大丈夫な筈だよ。」
「確かに、これならいけそうですけど。どうするんです? これ。」
「セシルの武器だよ。それ。」
「えっ、これ何度も撃つんですか? いつか、肩が吹っ飛びますよ。」
「そこは、頑張れ。少年よ、体を鍛えるのだ。」
他人事のように、無理を言っているカリネ。
しかも、大きな問題が残っている。
セシルが指摘する。
「弓の部分が大きすぎて運べないんですけど。」
「それね。ちゃんとしまうから安心して。」
ボウガンの下にある何かを引いた。
すると、あんなに大きかった弓がたたんだ。
でも、まだ運びづらい。
「なんか、足とかぶつけそうですね。」
「まぁ、弓の真ん中が折れただけだしね。何とかしてくれたまえ。」
「と言うか、矢とかどうするんですか?」
「頑張って鍛えてね。」
重くなるのでそっちでどうにかしろと言う事らしい。
不便が過ぎるが、これぐらいこなせないとやっていけないのだろう。
それぐらい、セシルでも分かる。
「分かりました。使いこなして見せましょう。」
「おっ。よく言った、それでこそだよ。新兵器、ロングボウガン。任せても良さそうだね。」
明日から鍛えよう。
そう心に決めたセシルであった。
その時、拠点の通信機がなった。
カリネが向かう。
「ほいほーい。私が取るよー。」
通信機を取ったカリネ。
何度か頷いて返事をしている。
セシルがその様子を覗きこんだ。
通信機をおいたカリネが、セシルを見る。
「なんて言ってました?」
「明日、集合だって。見つけたらしいよ、巨大な生き物。」
モブにキャラをつけたら作品が良くなるかな、と、思って助手を出しました。
ようやく学校編と思ったけど、その前に全面戦争をぶちこみます。




