強力な援軍。
「リーダー!」
セシルに呼ばれたグレンが、そっちを見た。
ラックを離して、指示を出す。
「今の内に下がりなさい。」
「は、はい。」
セシルのいる方へ下がるラック。
ふらついているが、何とか歩けるようだ。
すると、背後で大とかげが立ち上がる音。
千切れた舌を伸ばして、グレンを襲う。
「そんなに斬られたいか。」
振り向くと同時に、舌を掴むグレン。
強く引っ張ると、片手で大剣を叩き込んだ。
舌が更に千切れた。
「まだまだっ。」
大剣を両手で掴み直すと、大とかげの顔に叩き込んだ。
さらに、懐に飛び込み、足に一撃を当ててよろめかせる。
体が傾いたのを確認すると、一回転して勢いをつけ、飛びこむように叩き込んだ。
その衝撃を胴体に受けた大とかげが、横に吹き飛んだ。
それでも立ち上がる。
「手早く済ませたい。とっとと来い。」
煽りを受けたからなのか、グレンに突っ込む大とかげ。
それに対して、後ろに大剣を構えるグレン。
直撃する直前に回避。
その際、首に向かって斬り上げた。
またまた横に吹き飛ぶ大とかげ。
首からは、大量の血が流れている。
「とどめだっ。」
飛び込むように、首に大剣を叩き込んだ。
首から血が溢れると、動かなくなった。
目を覗き込んで、死を確かめるグレン。
無事、死んでいるようだ。
大剣をしまい、セシルと合流する。
「怪我は無いか?」
「はい、大丈夫です。でも。」
後ろを見るセシル。
倒れている同期が呻いている。
隣でも、ラックが足を押さえている。
「皆を守れませんでした。」
「弱かったから負けた。それだけだ。」
セシルに教えるグレン。
自然相手に言い訳なんて通用しない。
誰か一人が、何て事も無い。
結果だけが残る世界なのだ。
「そう、ですね。でも、守れるようになりたいです。」
「なら、強くなればいい。方法ならいくらでもあるからな。自分に合うのを探していけばいいさ。」
力が無くても出来る事はある。
方法次第で誰でも強くなれるのだ。
それを聞いていたラックが呟いた。
「自分に合った、か。」
その言葉は、誰にも届かない。
自分のあり方を考えているのだ。
そんな話をしていると、広間に竜車が入って来た。
グレン達の近くで止まった。
「無事、済んだようね。ギルドにも伝えておいたわ。さぁ、怪我人を竜車に運んで頂戴。」
セシルとグレンで、怪我人を竜車に運んでいく。
地面にしいた布に、寝かせていく。
最後に、ラックを運んだ。
まだ、足を痛そうにしている。
アリアが気づいた。
「あなた、足が炎症しているわね。カリネ、治療薬を足にかけてあげて。」
「はいよ。」
薬品棚から薬を出すと、ラックの足にかける。
痛みが収まったのか、足を抑えなくなった。
アリアが説明する。
「生き物の中には、酸の唾液を持ったのがいるわ。気を付けなさい。」
そう言って、前座に戻るアリア。
カリネが階段を上げると、竜車が出発した。
森を抜けて、平野を進む。
その間、セシルが質問をする。
「そう言えば、どうして来たんですか?」
「今までの情報を見て気づいたからよ。資料には、子供の群れが何度か確認されている。でも、大鼠の親が子供をけしかける事はありえないのよ。じゃあ誰が。要するに、親じゃない誰かがけしかけているって事。しかも、親よりも強いのが、ね。」
「でも、どうやってここの場所が分かったんです?」
「相手の狙いは大鼠の巣。なら、この辺りの巣の情報、群れが来た順番から次の狙いを計算したのよ。そしたら、案の定群れの死体が転がっていたからやっぱりって。」
たったそれだけで、全ての答えを導き出したのだ。
セシル達は、群れがいるから親がいる。
全ては親のせいだ、としか分からなかった。
しばらく平野を進んでいると、ギルドの竜車が見えたのでそばで止まる。
職員に話しかけるアリア。
「負傷者救助。もう引き上げて良いわよ。」
「皆は、大丈夫か?」
セシル達と同じチームに割り振られていたハンターが聞いた。
事情は知っているようだ。
アリアが答える。
「大丈夫よ。それより、情報ありがとうね。群れの情報が無かったら遅れてたわ。」
「その為に、戻って来たからな。役目をこなせて良かった。」
そう言うと、ギルドの竜車の中に入っていく。
ギルドの職員に別れを告げて竜車を走らせる。
それから、すぐに町についた。
門の前で、複数の馬車と白衣の人達が待っていた。
その中の一人が、目の前で止まった竜車に近づいた。
「ギルドマスターから、怪我人の報告がありました。間違いないですか?」
「えぇ、後ろに乗せているわ。運んで頂戴。」
白衣の人達が、階段から中に入る。
一人一人を、外に運んで馬車に移していく。
セシル以外のメンバーが運ばれた。
移し終えた馬車から、町に入っていく。
ギルドマスターから通信が来た。
『報告が来たぞ。休暇中に済まなかったな。』
「全くよ。大鼠の生態、ちゃんと覚えなさいよ。」
『すまない。群れ同士でなんかあったという認識しか無かったんだ。』
「少しは論文読んで勉強しなさい。それじゃあ、事件も解決って事で帰るわね。」
元凶を討伐したのだから解決したと言うことだろう。
後のしまつは、ギルドに任せれば良い。
別れを告げて通信機を切った。
そして、竜車を走らせ門を潜った。
特に用事も無いので、そのまま拠点へと戻る。
竜車をしまうと、グレンが皆に言った。
「今日は解散だ。今度こそ休めよ。」
「そうね、研究所に報告したらすぐに休むわよ。」
「私も休もうかな。試作品も上手くいったし、しっかり寝て完成させたい。」
三人はもう限界のようだ。
ゆっくりするつもりが、大変な事態に巻き込まれたのだ。
無駄に体力を使って、疲れたのだろう。
その場で解散して、それぞれ別れる。
拠点に戻ったセシルは、部屋に向かう。
すぐさま、ベッドに倒れこんだ。
(疲れた。)
セシルも限界だ。
無理をして行ったのだ。
あんなことに巻き込まれてしまったせいで、溜まっていた疲れがあふれたのだろう。
体を脱力させ、ベッドに体を委ねる。
そして、目を閉じる。
それだけで、眠りに入るには充分だった。
数時間後、セシルが目を覚ました。
空が暗い。
早くに寝たのだから仕方がない。
でも、日は変わっているだろう。
真っ先に感じたのは空腹だった。
「お腹がすいた。でも、まだどこも開いてないだろうな。そういえば。」
棚の引き出しを開けて瓶を取り出した。
町をぶらついた時に買ったものだ。
保存食のため、安心して食べられる。
空腹を誤魔化したセシルは、服を着替えた。
昨日から着たまんまだ。
すると、脱いだ服から札が落ちた。
「そういえば返してない。ついでに皆に会いに行くか。」
札を見て、皆を思い出したのだ。
共に戦った、同期達が心配だ。
でもまだ、病院も開いてないだろう。
また寝る気にも慣れず、ボウガンの練習所へと向かった。
(もっと上手くなりたい。)
練習用のボウガンを取って撃っていく。
何度も何度も繰り返し撃っていく。
以前よりも、上手くなった自信はある。
昨日のグレンの言葉を思い出す。
「自分に出来る事か。」
自分に出来る事を考えながら、ボウガンを撃っていく。
強くなるために。
それから、どれくらいたっただろうか。
空が明るくなった。
椅子に座って休んでいるセシル。
「さて、日課を済ますか。」
休暇とは言っても、日課は欠かせない。
運動をして、ユーリアと小竜の世話をする。
その際、ユーリアに指摘された。
「なんか、悩んでるね。」
「分かります?」
「顔に出てる。」
顔に出るほど、悩んでいたようだ。
しかし、どちらかというと悩んでいる訳ではない。
セシルが答えた。
「別に暗い話では無いですよ。そろそろ、自分に合った戦い方を見つけたいんですよ。」
「次のステップ。だね。」
どこが駄目とかではなく、どうしたいだ。
ユーリアの言う通り、次の段階に進みたいのだ。
参考として、ユーリアに聞いた。
「そういえば、変わった武器使って増すよね。どうしてです?」
「女だから力が足りなかった。」
「えっ。」
ユーリアの背中を見た。
重い籠を、軽々と持っている。
少なくとも、一般男性よりは力があるだろう。
視線に気づくも、無視をして続けるユーリア。
「効率を考えたら、拳を振り下ろすのが良いってなった。」
「な、なるほど。」
一番、攻撃力があるのを考えて選んだのだろう。
武器の工夫次第で、足りないものを補えるのだ。
そんな話をしながらも、小竜の世話を終える。
拠点を出て、病院へ向かう。
場所は、ギルドハウスに行く時に見えていたから分かる。
(そろそろ、この町の事も分かってきたな。)
見慣れた道を歩いて行くと、病院へとついた。
もう昼も近いので、起きているだろう。
中に入って、受け付けに聞いた。
「すみません。昨日、この病院にハンターが数人運ばれたと思うんですけど。」
「お見舞いですか? 昼までにお願いしますね。」
慣れているのか、簡潔に説明して引っ込んだ。
まずは、近い姉妹の病室に向かった。
ノックをすると、中から返事が来たので中へと入る。
まず、ルイが声をかけてきた。
「やっほー。お見舞い? ありがとね。」
「迷惑をかけてすまないな。私達は大丈夫だ。」
「親に怒られたけどね。」
娘が危険な事をしたから心配して怒ったのだろう。
何だか、いつもより元気がない。
スイが言った。
「それよりも、ルイが私の朝食のフルーツを奪ったのがな。」
「手をつけなかったから食べただけじゃん。」
「後でゆっくり食べるつもりだったのだ。」
どうやら気のせいのようだった。
今日も元気に喧嘩している。
そんな二人に別れを告げて次の病室へ。
病室に近づくと、話し声が聞こえた。
先程と同じくノックをすると、中から返事が来たので中へと入る。
そこには、男性チームの四人がいた。
セシルに気づいたナイルが言った。
「おぅ、セシルか。聞いてくれよ、シェルが俺のイビキがうるさいって。」
「本当の事を言ったまでだ。」
「まぁ、うるさいって知ってたけど、一緒に寝るまで忘れていたよ。」
「ちょっ、ラックまでっ。」
そういいながらも、二人は笑っている。
ナイルも、つられて笑った。
ペータがセシルに謝る。
「うるさくしてすまないな。まぁ、こんな感じで元気にしてるよ。」
「おっと、見舞いに来てくれたんだったな。ありがとな。」
ナイルがセシルに礼を言った。
しばらくして、四人は黙った。
ナイルがセシルに言った。
「昨日はすまなかった。勝手に巻き込んで危ないことさせて。」
「ついていったのは自分だよ。四人の考えが正しいって思ったからついていった。だから、気にしないで良いよ。」
「いや、元はと言えば俺が周りも見ずに行動したからだ。」
申し訳なさそうに頭を下げた。
でも、セシルは気にしていない。
続いてペータが言った。
「実は俺達、一からやり直そうってなってな。」
「昨日は、セシルがいなかったら俺達は死んでいたからな。」
シェルがそう言った。
力不足を感じているようだ。
ナイルが続ける。
「あぁ、あれぐらい俺達も出来ねぇとなって。」
「うん。もっと、戦略の幅を広げたいんだ。」
「そんな訳だから、まず、自分に出来る事は何かって話しあっているんだ。」
セシルと同じだ。
自分に出来る事を模索している。
その会話を聞いて、セシルはある判断をした。
そんなセシルに、ナイルが言った。
「そんな訳で、これからもよろしくな。」
その言葉を最後に、四人と別れた。
病院を出たセシルは、自分に出来る事をする為に研究所へと向かった。
セシルの同期の話は、セシルの成長のきっかけの為に書きました。
あと、グレン達のヤバさを伝えるのもありますが。




