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ハンターチームの裏方仕事  作者: 鍋敷
学校編

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83/166

牙を剥く自然の脅威。

 歩く先に森が見えてきた。

 ナイルが皆に聞いた。


「森か。どうする?」


「大鼠は、森に巣を作る。たぶん、この先にあると思う。」


「私もここで間違いないと思う。」


「おっしゃあ。じゃあ、さっそく行こうぜ。」


 我先にと森に入るナイル。

 他のメンバーも後に続く。

 先は、樹で隠れて見えない。

 立ち塞がる樹を避けて先へ進む。

 終わらない樹に、ナイルが疑問を持つ。


「本当に巣なんてあるのか? 空間すらねぇぞ。」


「あるはずだよ。たぶん。」


 巣があるから大鼠の子供が現れたのは間違いない。

 しばらく進むと、セシルが立ち止まった。

 空を見上げている。

 それに気づいた皆が、セシルを見る。

 ペータがセシルに声をかけた。


「どうしたんだ。」


「臭いが。」


「臭い。確かにするけど。」


 臭いが気になるセシル。

 なにせ、前に嗅いだ事があるからだ。

 そう、血の臭い。

 セシルの代わりにシェルが答える。


「血の臭いか。」


「何だって!? そうなのかセシル。」


「間違いないと思う。でも、場所が分からない。」


 間違いないなく、臭いがするのだ。

 でも、辺りに充満して出所が判らない。

 姉妹も同意する。


「うむ、獲物を解体していた時に嗅いだ臭いと同じだな。」


「そういえばそうだね、解体小屋の臭いがいつもこんな感じだったんだよね。」


「じゃあ、この辺りか。シェル、場所は分かるか?」


 ナイルがシェルに聞いた。

 首を傾げながらも先頭に出るシェル。

 道を変えて先に進んでいくと広間に出る。

 そこにある光景に一同が呆気にとられた。


「ここなのか、って何だあれは。」


「虫がたかっているね。でもあれは。」


 ナイルの疑問にルイが答える。

 まさに、何かの物体にたかっているようだが、虫が邪魔で分からない。

 広間にナイルが出た。


「虫なんて追っ払えば良いだろ。」


「ちょっ、少しは周りを警戒して。」


 ナイルを追ってラックも出る。

 仕方ないので他のメンバーも出た。

 たかっている虫を追い払うナイル。


「おらぁ、邪魔だぁ。」


「俺達も払おう。」


 他のメンバーも、虫を斬って追い払う。

 軽く短剣で斬っただけで、多くの虫が逃げていく。 

 段々と、隠れていた物があらわになっていく。

 それは、本来倒すべきだった大鼠の親だ。


「何だよ、既に倒されてんじゃねぇかよ。」


 その正体に、落ち込むナイル。

 やっと戦えると思ったらこの有り様だ。

 シェルが死体を確かめる。


「この臭いの正体はこいつで間違いない。」


「じゃあ、俺達の役目は終わりって事だ。」


「そりゃあ、無いぜ。」


「残念だったね。役目が無いなら、もう帰ろうか。」


 ラックがナイルを励ます。

 本来倒すべき相手はもういない。

 ならば、足止めの必要もない。

 立ち去ろうとした瞬間だった。

 シェルが皆を止める。


「待て。」


「どうした?」


「こっちに何か来ている。」


 ペータが聞くと、シェルがそう答える。

 さっきの襲撃の事もあるので、一同は警戒をする。

 確かに、虫の羽音が近づいてくる。

 ナイルがシェルに聞いた。


「虫の羽音か?」


「いや、ただの羽音じゃない。」


 シェルが言った。

 羽音は、他のに比べて大きい。

 すると、スイが叫んだ。


「こっちだっ。」


 スイが見ている方に視線が集まる。

 その先の樹の奥から、他よりも大きい虫が現れた。

 それに向けて構える一同。


「なんだよこいつ。こいつらの親か?」


「虫の群れは、他の子供も混ざるからボスの方が正しいよ。」


「へぇ。って言ってる場合かよっ。」


 ナイルの疑問に、ラックが答える。

 しかし、虫のボスは既にこちらを見ている。

 ペータが、ナイルに言う。


「どうする?」


「どうするっつったって。よぉっ!?」


 急に、ボスが突っ込んできた。

 対処しきれずに、先頭のナイルが吹っ飛ばされた。

 空を舞うボスは、もう一度突っ込んできた。

 ペータと、シェルが受け止める。


「くそっ。」


「押されるっ。」


 勢いと重さで増した突進の威力は大きい。

 段々、押し潰されていく。

 すると、姉妹が同時に飛び出した。


「「そのままでっ。」」


 押し潰そうとするボスを左右から斬った。

 地面に倒れるボス。

 解放されたペータが追撃を入れようとするが、空に逃げられる。

 ペータとラックが悪態をつく。


「ちくしょう。」


「これじゃあ、届かねぇぞ。」


 空にいるため、短剣じゃ届かない。

 一人を除いて。

 ラックが叫んだ。


「セシル、お願い。」


「はいっ。」


「皆はセシルを囲んで。」


 それぞれ、返事をしたメンバーは、セシルの周りに集まる。

 セシルに背中を向けるように周りを囲み、ボスを迎え撃つ。

 真ん中のセシルは、空のボスに向けてボウガンを撃っていく。

 だけど、当たらない。


「くっ、自在に動いて当たらない。」


「落ち着け、焦らなくて良い。」


「おぅ、いくらでも守ってやるから安心しな。」


 ペータとナイルが、セシルを落ち着かせる。

 その間にも、ボスが勢いをつけ突っ込んでくる。

 それを、ナイル、シェル、ラックの三人で押し返す。

 そこに、ボウガンの矢が飛ぶも当たらない。

 

「よっしゃあ、三人でなら何とか行けそうだぜ。」


「でも、当てれないっ。」


「細かく動いてるからな、向かう方向さえ分かれば。」


 スイの言う通り、左右自在に動くので、偏差射撃が狙えない。

 だけど、その言葉でセシルが作戦を閃いた。

 ポーチから玉を出す。

 ペータが聞いた。


「何する気だ?」


 答えず、近くの樹に投げた。

 直撃した玉から煙が出る。

 いつもの、普通の煙だ。

 上に昇った煙は、空を覆う。


「こっち。」


「なるほど、セシルを追うぞ。」


 駆け出したセシルを追って、樹の下に移動する。

 樹に背中を預けたセシルを中心に、半円で周りを囲んだ。

 セシル以外は、しゃがんで待機。

 すると、ボスが降りてきた。

 

「予想通り。」


 見えなくなったので、降りてきたのだろう。

 しかし、こっちは羽音で場所が分かる。

 姿を現した瞬間、ボウガンの矢が刺さった。

 吹き飛ぶボス。


「もう一発。」


 今度は、長い矢を飛ばすと、ボスに命中。

 ボスを貫いた矢は、ボスごと飛んで後ろの樹に刺さった。

 暴れるボスだが、動けない。


「止めは貰うぜっ。」


 駆け出したナイル。

 斬りかかるも、直前で抜け出し空へと逃げた。

 空を斬る短剣。

 セシルが謝る。


「ごめん。浅かったっ。」


「気にすんな。どっちみち、あれをぶら下げたまま飛べねぇだろ。」


 ナイルの言う通り、最初の矢は刺さったままだ。

 重いのか、傷が深いのか、飛びづらそうにしている。

 実際、高度もそんなにない。

 姉妹が指摘する。


「落ちてきているな。」


「動きも遅いね。」


「そんじゃあ、今度こそ止めは貰うぜ。」


 必死に浮こうとするボスに、ナイルが斬りかかった。

 次の瞬間、樹から飛び出した何かがボスを突き刺した。

 とっさに引いたナイル。


「何が起こったっ。」


 とっさの事で、ナイルがしりもちをついてしまう。

 唖然として、ボスを突き刺したそれを見ている。

 他のメンバーも同じく見ている。

 それは、長い紐状の物。

 しかも、赤色で生々しい。


「ナイル下がれっ。」


「分かったっ。」


 ペータに言われた通りに急いで下がる。

 そんなナイルを庇うように立つ他のメンバー。

 すると、紐がボスを持ち上げた。

 そのまま、樹の奥につれていく。

 警戒を強める一同。


「どうする?」


「どうって。隙を見せたら次は俺達だぜ。」


 ペータの質問にナイルが答える。

 あの早さには、誰も気づけなかった。

 動きを見せたら、狙われる。

 そうすると、一瞬で終わる。

 セシルが提案する。


「ゆっくり下がろう。」


「それが、良いな。」


「それじゃ、ゆっくりだよ。」


 姉妹が同意する。

 ゆっくりと、音をたてずに下がっていく。

 すると、ラックが虫に引っかかり後ろにこけた。


「痛っ。」


「ラック!?」


 大きな音が出てしまった。

 次の瞬間、飛び出した紐状の物がラックに迫る。

 気づいた時には、すぐ側まで迫っていた。


「しまっ。」


 悪態をつく暇もない。

 紐状の先端が、ラックに向かう。

 すると、衝撃音と共に紐状の物が弾け、すぐ横の土に刺さった。


「えっ。」


 直撃はしなかった。

 しかし、恐怖で声が出ず固まっているラック。

 スイが、ラックの前に落ちたボウガンの矢に気づいた。


「セシルか?」


 見ると、セシルは、ボウガンを構えていた。

 そして、新しい矢を装着している。

 安堵の表情をしているセシルが言った。


「間に合った。」


 紐が飛び出た瞬間。

 皆がラックを見ていたのに対して、セシルは紐を見ていた。

 咄嗟に撃ったのが、紐状の物に当たって軌道をずらしたのだ。

 安心したのも束の間、紐状の物が元の場所に戻っていく。

 その代わりに、舌を伸ばした大とかげが出てきた。

 紐状の物は、大とかげの舌だったのだ。

 スイが叫んだ。


「モンスターっ。何でこんな所に。」


「まずいっ。俺達が敵う相手じゃないっ。」


 ペータも叫ぶ。

 構えるペータだが、一瞬で短剣がへし折れた。


「えっ。」


 いつの間にか舌が迫っていたのだ。

 へし折れたのに気づいた瞬間、ペータの体は宙を舞っていた。

 もう一度、ラックに舌が迫るが、シェルが割り込んで軌道をずらす。


「させん。」


 しかし、あっと言う間に吹き飛ばされた。

 今度は、姉妹が舌に攻撃を仕掛ける。


「ルイっ。」


「分かってるよ。」


 しかし、かわされて吹き飛ばされる。

 吹き飛んだ者は、全く動かない。


「ふざけんなよっ。」

 

 ナイルが叫んだ。

 動けるのは、セシルとナイルだけ。

 たった、一瞬の事。

 しかも、相手は全く動いていない。

 少し舌を振るっただけで、この有り様なのだ。

 やけくそぎみに駆け出したナイル。


「くそがっ。」


 舌を潜って大とかげに突っ込む。

 それに対して、一度舌を戻す大とかげ。

 ナイルに向けて舌を振るうが、はじかれる。

 セシルのボウガンだ。


「ありがとよっ。」


 セシルの援護を察したナイルが、大とかげの懐に飛び込んだ。

 大とかげに向かって短剣で斬りかかった。

 しかし、刃は皮膚を通さない。


「ちくしょうがっ。」

 

 舌で吹き飛ばされる。

 大とかげの前に落ちたナイルは、地面を転がる。

 そのナイルに、無慈悲にも舌の先が向いた。


「させないっ。」


 ボウガンを大とかげに向けるセシル。

 その横を影が通り抜けた。

 ナイルが目を閉じる。


「皆、すまん。」


 覚悟を決めるナイルに何かが覆い被さった。

 そして、悲鳴。

 目を開けると、自分の上にラックがいるのが分かった。

 血が、お腹の横から垂れている。


「ラック。どうして。」


「気づかれたのは僕のせいだから。」


「何言ってんだ。傷は、大丈夫なのか?」


「うん。セシルが逸らしてくれたから。でも。」


 痛みで、言葉がつまる。

 一呼吸して言う。


「捕まっちゃった。」


「なっ。」


 ラックの足を見ると、舌が巻き付いている。

 そして、少しずつ引きずられていく。

 無理に体を起こしたナイルが、足を掴んだ。


「くそっ。話せっ。」


 一緒に引きずられるが、掴める力も少なく手を離してしまう。

 そして、ラックが宙に持ち上げられた。

 ナイルが叫んだ。


「ラァック!!」


 ラックが、舌と共に口に運ばれていく。

 次の瞬間、矢が舌を貫き樹に刺さった。

 セシルのボウガンの矢だ。

 舌の収納が止まる。

 ナイルの前に、セシルが立った。


「セシル。すまねぇ。」


「大丈夫だよ。」


 不思議と恐怖はない。

 何故なら、聞き覚えのある竜車の音が迫っているから。

 ボウガンを向けるセシル。

 それに対して、舌を引っ張るのを止めた大とかげがセシルを見る。

 セシルに突っ込んだ瞬間、大とかげの顔が爆発した。

 広間に聞き覚えのある声が響いた。


「ひーーっと。最っ高っ。」


「なるなぁ、俺も負けてられんっ。」


 その直後、影が飛び出し鉄の塊を、大とかげの顔に叩き込んだ。

 大とかげの体が、横に吹き飛んだ。

 更に、舌に叩き込む。

 舌がちぎれ、ラックが落ちてくる。


「わぁーーっ。」


「おっと。」


 影が落ちてくるラックを受け止めた。

 そして、鉄の塊を背中にかけた。


「元気にしているか? 若いの。」


 その影は、ははと笑って大とかげを見た。

大とかげと言っても、顔の位置が三メートル位です。

それでも、モンスター級なんで大がついてます。

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