同期との約束
研究所から拠点に戻るセシル。
昼はもう過ぎているらしく、お腹が減っている。
帰る前に、ギルドハウスでご飯でも食べようと向かう。
その際、ギルドハウスの方から騒がしい声が聞こえてきた。
原因を探るべくギルドハウスに入るセシル。
中には、人が沢山いるようだ。
周りを見ていると、ギルドマスターが声をかけてきた。
「おーい、セシル。話は聞いたぞ。大変な目に遭ったらしいな。ってそれどころじゃねぇっ。グレンはどうした?」
「しばらくチームは休暇ですよ。」
「そうか、参ったな。」
そう言うと黙り込んでしまう。
この騒動と関係あることなのか。
ギルドマスターに聞くセシル。
「何かあったんですか?」
「実はな。お前達が帰って来る前から、大鼠の子供が大量発生してな。親も見つからないし、それなのに何故かこの周辺に集まるしで困ってたんだ。お前達にも調査に向かって欲しかったんだがな。」
それで、関係者を見つけたと思ったら休暇だったということだ。
悩んでいる辺り、相当困っているらしい。
更に、踏み込んで聞くセシル。
「そんなに大変なんですか?」
「そうだ。腕利きには、町の周りを守らせているから離れられない。森を見て欲しい為、遊撃隊のハンターを雇っているのだけど、実力を考えると危険な事はさせれない。」
つまり、グレン達に見てきて欲しいと言う訳だ。
もしかしたら、親がいるかも知れない。
そうなると、腕利きに頼れない今見に行かせる訳にはいかない。
ギルドマスターが、ぼそりと呟く。
「ダメ元でグレンに頼んでみるか。俺としては休みを邪魔したくは無いんだがな。もちろんあんたも、早く休んで疲れを癒せよ。じゃあ俺は仕事があるから。」
そう言って、奥に引っ込むギルドマスター。
話の内容から察するに、ここにいるのは遊撃隊の志願者なのだろう。
気になるセシルだが、今は休暇中なので他のハンターに任せるしかない。
早く帰ろうと、ギルドハウスを出ようとした時だった。
誰かがセシルに声をかけてきた。
「おや、そこにいるのはセシルか?」
「本当だ、久しぶりだねっ。」
そちらを見ると、同期の姉妹がいた。
今日も変わらず二人でいるようだ。
姉のスイが、セシルに聞いた。
「確かに久しぶりだな。よくここに顔を出しているが、見たことが無いな。」
「仕事でしばらくこの町を離れてたんですよ。」
「プロのチームに入ってるんだっけ。じゃあ仕方ないかな。それで、今日はどうしたの? やっぱり遊撃隊の申請?」
「様子を見に来ただけですよ。町から離れていたので何事かなって。」
本当に、ただ気になっただけだ。
どうこうするつもりは、全く無い。
すると、ルイがセシルの手を握った。
「じゃあ、私達と一緒に戦ってよ。数が多くて大変なんだ。」
「いや、自分は休暇中だから。」
「そっかぁ。」
落ち込むルイ。
いつ、また向こうに行くか分からないから、しっかり疲れを取っておきたいのだ。
落ち込む妹に呆れるスイ。
「あまり無茶を言うんじゃない。口ぶりからすると帰って来たばかりだろうな。ちゃんと、休ませてやろう。」
「そっか、ごめんね。」
「いえ、こちらこそ。」
謝りあうルイとセシル。
せっかく誘ってくれたのにと、申し訳ない気持ちで一杯だ。
そのまま別れを告げようとしたら、スイが提案する。
「せっかくだ。一緒にご飯でもどうだ?」
「はい、それぐらいなら。」
元々、ご飯を食べに来たので断る理由はない。
二人の後について、食堂に向かう。
注文を済ませ席に向かう。
すると、セシル達を呼ぶ声が聞こえた。
「おっ、セシルだ。久しぶりだな。」
「マジだ。しばらく見ねぇからどうしたんかと思ったぞ。」
四人組の男性チームだ。
セシルに声をかけてきたのは、兄貴肌のペータと、リーダーのナイルのようだ。
頭脳のラックと冷静なシェルも同じ席にいる。
ラックが三人に聞いた。
「折角だし、一緒に食べようよ。」
「どうします?」
「私達は構わないよ。」
スイが言うとルイも横で頷いた。
近くの席の椅子を借りて、一つの机についた。
ナイルが三人に聞いた。
「あんたらも遊撃隊か? どうせなら一緒にやろうぜ。」
「私達はともかく彼は休暇だそうだ。ちょうど私達も振られたところだよ。」
セシルの代わりに、スイが肩を掬いながら答えた。
セシルもごめんと謝った。
ナイルが、片手で頭をかきながら言った。
「せっかくだし同期で集まろうと思ったけど、そういう事ならしゃあねぇな。じゃあ、二人ならどうだ?」
「そうだな、せっかくだしお供しようか。」
「私もいいよ。これだけいれば、楽になりそうだしね。」
どうやら二つのチームで挑むようだ。
その様子を見たセシルは、疎外感をおぼえる。
自分だけ仲間外れにされたような感覚。
決意するセシル。
「やっぱり、自分も行くよ。」
「いいのか? 疲れてんだろう。」
「大丈夫。リーダーに聞いてみるよ。」
ペータが気にかけてくれるが、実際疲れはある。
しかぃ、同期で集まろう、に反応したのだ。
そこに、自分だけがいないのは寂しい。
それもあるが、せっかく誘ってくれたのだから行きたいのもある。
唯一の同期だから繋がりを大切にしたいのだ。
「そうか? じゃあ明日の昼、これるならこの前で集合だな。」
「構わないよ。」
「自分も良いですよ。」
「よし、じゃあ決まりな。」
それと同時に食事が来た。
そろって食事を取る。
食事をしながら、ナイルがお互いの近況を聞いてきた。
「あんたらの最近はどうなんだ?」
「基本、手頃な依頼をこなすだけだよ。それ以外は全然かな。」
「こっちもそんな感じかな。んで、セシルはどうだ? やっぱりすげぇ奴と戦ったのか?」
そう聞かれて言いよどむセシル。
なにせ、言っても信じてくれない事ばかりなので言いづらいのだ。
とにかく、当たり障りのない範囲で話す事にした。
「まぁ、何かエリアに入って色々と。」
「エリアと言えば縄張り争いで危険らしいね。大変だったでしょ?」
「マジか。どんだけヤバかったんだ?」
ラックが代わりに解説する。
こういった知識もあるようだ。
それを聞いたナイルは興奮する。
また、当たり障りのない範囲で話すセシル。
「確かに、色んな大物がいたよ。」
「そっかぁ。エリア、俺も行ってみたいなぁ。」
「いや、まだ俺達には早いだろ。」
「無理だな。」
興奮するリーダーをたしなめるペータとシェル。
実際、素人が足を踏み入れては、ただでは済まないだろう。
スイも同意する。
「そうだな。私達では、手も足も出ずに死ぬだろうな。」
「でも、セシルは、行って帰ってこれてるぜ?」
「それは、セシルのいるチームはこの町で一番強いらしいからだよ。」
ナイルの疑問に答えたのはルイだ。
ルイもグレンの事は知っているようだ。
ルイが続ける。
「なんでも、一度に沢山の依頼を受けて一日でこなすらしいよ。この間も、Cランクに上がったとか。」
「Cって、ランクの壁と言われているランクだよね。それ以上のハンターは限られてくるとか。」
「そんな人達だからこそって奴かな。」
ラックの解説にスイが補足する。
セシルが体験した事はイレギュラーだったとはいえ、それなりの実力がなければいけないのは確かなのだ。
スイが続けて説明する。
「そういえば、裏でサポートしている人達も優秀らしいね。ギルドマスターも誉めていたらしい。」
「確かに。強ければ良いって訳じゃないからね。良い事を聞いたよ。」
ラックが何かしらメモを取っている。
頭脳担当らしく情報集めに余念はない。
すると、ナイルはある事に気づいた。
「というか、あんたらどうしてそんなに詳しいんだ?」
「私達の親がここの職員だからだよ。よく話を聞かせてくれる。」
「そうそう、元々親がこの町に派遣されたから私達も来たからね。有名人の事ならよく知ってるよ。」
そう答える姉妹。
以前、最近こっちに来たと言っていたがこれが理由だ。
それが分かった所で、食事が終わる。
「はぁ、腹がいっぱいだ。」
「調子に乗って大盛りにするからだ。それじゃあ、そろそろ別れよう。」
「そうだね、私達もこれで。有意義な時間だった。」
「自分も帰ります。それでは。」
「あぁ、明日よろしくな。」
この場で別れる事になった。
それぞれが、別の場所から食堂を出る。
セシルもまた食堂から出て拠点へ向かう。
拠点について、扉を開けようとすると中から声が聞こえる。
扉を開けて中に入る。
「おっ、帰って来たか。遅かったな。」
「そうね。お喋りでもしてたのかしらね。」
そこには、いないはずのグレンとアリアがいた。
既に解散していたはずだ。
セシルが二人に聞く。
「今日はもう解散したはずでは?」
「そのつもりでいたが、ギルドマスターから個人的な連絡が来てな。セシルも聞いているだろ?」
「えっ、どうしてその事を?」
「休暇の事を知ってたからな。セシルとやり取りをしたはずだとな。それで受ける事にしたんだ。」
確かに、ギルドマスターと話した時に言った。
でも休暇中のはずだ。
セシルがグレンに聞いた。
「戦うんですか?」
「いや、周りの腕利きと交代するだけだ。その代わりに、交代した腕利きが調査にいかせるらしい。それだけでいいからと言われたので、個人として承諾した。」
「私は、研究所に依頼があったからなんだけどね。何人かで行く事になったから、責任者として行く事になったのよ。ようやく休めると思ったのに。」
珍しく文句を言っているアリア。
グレンと違ってほぼ強制らしく、断れなかったらしい。
そんなアリアをグレンが励ます。
「そう言うな。人が揃えば直ぐに片付くから気楽に行こう。」
「そうね、竜車からのんびりと見学でもしているわね。」
楽だと思えば気も落ち着くだろう。
本人も、完全にくつろぐつもりだ。
しかし、参加するのは二人だけではない。
二人に先程あった事を話すセシル。
「実は自分も同期に誘われて。」
「なんだ、セシルも来るのか? 体調は大丈夫なのか?」
「何とかなると思います。」
「そうか、無理はするなよ。」
止めるつもりは無いようだ。
ともあれ、これで明日の予定が決まった。
初めての同期とのクエストが楽しみなセシルであった。
四人組の名前が変わりました。
拠点の町周辺の、敵の種類の数は、虫>鼠>ウルフの順で多いです。




