終演。
森から出てきた漆黒竜は、地面から頭に突っ伏した。
それと同時に、ハント組が駆け出した。
何とか起きるも、荒い息をする漆黒竜。
そんな漆黒竜の様子を見たグレンが、一言カリネに指示を出した。
「任せたっ。」
肩に大砲を吊るしたカリネも、一言で答える。
「任された。」
言ったと同時に、大砲の先から玉が飛び出た。
漆黒竜の胴体に着弾すると爆発した。
それを受けた漆黒竜が、横に吹き飛んだ。
そのまま、地面に倒れた。
グレンが叫ぶ。
「今だぁっ。かかれぇっ。」
漆黒竜の胴体に飛び乗ったハント組が、力を込めた一撃を与えていく。
そして、顔に乗ったグレンが顎の関節に大剣を叩き込んだ。
露になった胴体に傷がついた。
樹に落ちた事により、ついた傷が更に深くなる。
「充分だ。後はこの傷を開いていく。」
ハント組が離れたと同時に、漆黒竜が立ち上がる。
ハント組に咆哮する漆黒竜。
しかし、以前のような威力はない。
回転するように尻尾を振るが、簡単に避けられる速さだ。
しまいには、尻尾の遠心力に負け倒れてしまう。
エリクが、漆黒竜の様子を看破した。
「こいつへばってやがるな。」
「随分と、走らされたようなんよ。」
動き一つがゆっくりだ。
近くのシルファに噛みついてくるも、簡単に避けられる。
しかも、勢いのまま頭から地面に突っ込んだ。
「これなら避けれるんよ。」
「振り回されてる。」
「そうだな、頑丈な胴体が仇になっているんだな。」
頑丈ゆえにパワフルな自身の動きに、体がついていかないのだ。
しかし、それでも力があるのは確かなのだ。
迫る尻尾を、後ろに飛び退きかわす一同。
「遅いからと言って、手を抜くとやられるぜ。」
「分かってるんよ。」
「うん、気を引き締める。」
攻撃を仕掛けるハント組。
まず、顔にエリクが槍斧を叩き込んで押さえ込む。
続いて、グレンが大剣を足に叩き込んむと横に傾く。
その隙に、上に登ったシルファとユーリアが、胴体の側面を斬った。
「おらっ。」
「っ。」
勢いよく剣を振り、胴体を裂いた。
そのまま、横に倒れると同時にもう一撃をくわえて離脱。
深追いはしない。
「暴れんなっ。」
暴れた漆黒竜は、押さえ込んでいた槍斧を振りほどく。
その勢いで立ち上がった漆黒竜は、足を踏ん張って前に突っ込む。
体勢を崩したエリクを噛みつこうと迫るが、その前にグレンが立ち塞がった。
「させないっ。」
先程、一撃を与えた方の逆の顎の関節に、大剣を叩き込んだ。
その一撃で顎が外れたのか開いたままだ。
涎が口から大量に流れる。
「うわっ、どろっどろ。」
「垂れ流し。」
「まぁ、息苦しそうにしてたからちょうどいいんよ。」
気楽な感想を述べる三人。
そんな三人に尻尾が迫る。
それを、下がってかわす。
余裕を見せる三人だが。
「上から来るぞっ。」
グレンの叫びで頭上を見上げる。
漆黒竜が、振った勢いで振り上げた尻尾がそこにあった。
三人に向けて、尻尾が叩きつけられた。
しかし、動きが遅いのでかわせれた。
「すごい勢いなんよ。」
「当たると大変。」
「まぁ、なんとかなる速さで良かったぜ。」
「だが、ここに来て攻撃を繋げ出した。次の動きが読みづらくなる。」
武器を構えて次の攻撃に備える。
まだ倒せる気配がない。
足に力を込めた漆黒竜。
ハント組にのしかかる様に突っ込んできた。
立ち上がると、尻尾をぶん回す。
「思ったより元気じゃねぇか。」
「遠心力に身を任せてる感じだな。体力を温存するためだろう。」
「なるほど、力を使わなくても攻撃が出来るって事なんよ。つまり。」
「体力の節約。」
「ならば、話が早い。」
グレンが前に出た。
突っ込んでくるグレンに尻尾を回す漆黒竜。
グレンは止まらず、走る勢いのまま尻尾の先に大剣を当てた。
すると、尻尾の少し先が切れた。
だけど、それだけでは、遠心力は減らせない。
更に、尻尾を振り上げる。
「同じことしか出来んのか。芸がないっ。」
降り下ろされる尻尾に対し、大剣を振り上げぶつけるグレン。
斜めに入った大剣が、尻尾の一部を切り取った。
尻尾の断面が、切られた通りに斜めになる。
「わざわざ切りやすいよう、勢いをつけてくれているのだ。切らないと申し訳ないからな。」
大剣の振る威力と、尻尾を振る威力がぶつかる事によって、お互いの威力が合わさった威力が尻尾にかかったのだ。
グレンの大剣と腕にもかかったはずだが問題ない。
「さすがに一度は無理だが、ゆっくり切っていってやるさ。」
そう言って、また大剣を構えるグレン。
他のメンバーも負けてはいない。
胴体の横に回り込んだエリクが側面を槍でついた。
その槍を足場に、シルファとユーリアが飛ぶ。
側面の傷を切り裂いた。
その攻撃によって、とうとう血が流れ出した。
「よし、効いてるんよ。」
「効果あり。」
「このまま、押してくぜっ。」
その時、漆黒竜が暴れだした。
何もない場所にひたすら尻尾をぶつける。
近づこうとしても、近づけない。
急いで離れる一同。
「何だ? やけを起こしたのか?」
「近づけない。」
「確かにな、これでは攻撃が仕掛けれない。」
「面倒な事になったんよ。」
漆黒竜の様子を伺う一同。
近づけないでいると、竜車の車輪の音が聞こえてきた。
振り向くと、すぐそこまで竜車が来ていた。
前座のアリアが、ハント組に声をかけた。
「皆、一気に仕掛けるわよ。」
暴れる漆黒竜を見るアリア。
事情を知っていそうなアリアにエリクが聞いた。
「あれ、どうなってんだよ。」
「空腹がピークに達した時に、血の匂いをかいたせいで我を失っているんでしょう。頭に空気が回ってないのもあるわね。過去の補食の記憶が目に浮かんでいるのでしょうね。」
「食べたばかりじゃないのか? どうして空腹に?」
グレンが質問をすると、アリアがある一点を見た。
先程、漆黒竜が垂らした涎だ。
その部分の草が溶けている。
それを見て、アリアが答える。
「あの涎、酸が混じっている。推測だけど、動けば動くほど強力な胃酸が分泌するんでしょうね。とにかく、今がチャンスよ。ここからは、私達も参加するわ。遠距離で止めるから後に続いて。」
「分かった、任せる。」
動き出す竜車。
小竜に指示を出すと、アリアも二階に上がる。
設置型ボウガンに、矢を設置する。
「側面に回ったら攻撃よ。」
「いつでも良いっすよ。」
「任せなさーい。」
同じく設置型ボウガンについているコガラキと、大砲を担いだカリネが返事した。
側面に回り込んだ竜車は、ちょうど樹に衝突したばかりの漆黒竜の側面に移動。
すると、竜車の二階から一斉に攻撃。
倒れる漆黒竜。
そこに、次々と攻撃をあたえていく。
「今よっ。」
「任せなぁ。」
攻撃がやんだ瞬間、ハント組が攻撃を仕掛けた。
血が溢れる胴体を、更に斬り込んでいく。
傷が広がり、流れる血も増える。
「もう少し。」
しかし、漆黒竜が立ち上がった。
急いで離れるハント組。
もう落ち着いたのか、一同を睨む。
アリアが小竜に指示を出した。
「小竜逃げてっ。」
竜車が後ろを向いて走り出した。
しかし、目的は逃げるためではない。
カリネが叫んだ。
「でかいの一発いくよーっ。誰か誘導して。」
「任せるんよっ。」
足元の石を掴んで駆け出したシルファが、漆黒竜の顔に乗ると目に石を投げた。
痛みに顔を振る。
その直前、シルファは後ろに一回転して降りていた。
もう一度石を投げて怒りを誘う。
「こっちなんよっ。」
背を向け走るシルファを漆黒竜が追いかける。
向かう先は、停止した竜車。
竜車の中に入ったカリネが大砲を向けている。
「そのまま直進でっ。」
「おうっ、後は任せるんよっ。」
大砲を、漆黒竜の足に向けるカリネ。
距離を見定めて発射。
「そこっ。」
漆黒竜の足元で爆発。
その爆発で漆黒竜がバランスを崩す。
それと同時に、シルファが竜車の下に潜り込んだ。
バランスを崩した漆黒竜が竜車に突っ込むその寸前。
カリネがスイッチを押す。
「スイッチ、ポン。」
竜車の下から槍が飛び出す。
突っ込んでくる漆黒竜の顔と首に突き刺さった。
槍先の刃が、硬い筋肉をほじくりながら進んでいく。
「うわっと。」
その衝撃で竜車が押されるも小竜が踏ん張り耐える。
そのせいで、更に槍が進んでいく。
結果的に、首の半分まで貫いた。
竜車の下に潜り込んでいたシルファが、その光景に引いている。
「うわぁ、えぐいんよ。」
「ちょっと、私の開発した物に文句あるの? まぁ、私もここまでなんて予想して無かったけどね。」
下を覗いたカリネがシルファに文句を言う。
いつまでもこうしているわけにもいかないので、竜車を進め槍を引き抜いた。
そこから血が流れる。
その様子を観察するアリア。
「体重が重いぶん、槍が深く刺さったのね。他じゃ、こうはいかないから安心なさい。」
「なんのフォローなんなんよ。それはさておき、これで死んだ・・・。」
死んだんよと言おうとした直前、漆黒竜が起き上がった。
そして竜車に突撃するも、横にかわされる。
そのまま、地面に頭から突っ込んだ。
シルファが武器を構える。
「しつこいんよっ。」
「安心なさい、もう意識はないわ。食欲だけで動いてるだけよ。楽にして上げなさい。」
「食欲だけでこれって。どんだけ欲求に忠実なんよ。」
漆黒竜が竜車に向けて尻尾を振った。
それと同時に、他のハント組が追いついた。
迫る尻尾をグレンが斬って防いだ。
シルファと共にハント組が、竜車の前に立つ。
「もう意識は無いらしいんよ。なんで、さっさと倒すんよ。」
「よし、ならば一気にいこう。」
まずエリクが駆け出した。
槍斧を顔に叩き込んで槍を刺した。
足にグレンが大剣を叩き込んで転ばせる。
最後に、シルファとユーリアが竜車の槍で開いた穴を切り開く。
胃酸と血が溢れると、漆黒竜が動きを止める。
「終わったか。」
沢山の命を奪った今回の事件。
まるで舞台の様に、次々と起こる出来事。
今、一つの残虐な舞台が終演した。
強いと言うのも不便ですね。
これから先は、グレン達の負けは書かないと思います。




