手記、仲間と合流。
迫りくる大羽鳥。
手に持っていたボウガンの矢を構える。
しかし、恐怖には勝てない。
体が震えて動かないのだ。
「情けないな。こんな時に腑抜けるなんて。」
大物との遭遇には慣れていた気がした。
だけど実際にはこの始末。
こっちの様子を見ていた大羽鳥が体勢を低くする。
飛び込んでくる気だ。
どう対処しようか迷っていたら、どこかから声が聞こえてきた。
「ほらよ。使いなっ。」
声と共に近くでがしゃんと音がした。
そちらを見ると、見覚えのあるボウガン。
「これはっ。」
とっさに体が動いた。
飛び込んできた大羽鳥をかわすように、セシルもまたボウガンに飛びついた。
急いで、ボウガンに矢を設置する。
それと同時に大羽鳥がセシルを見た。
だが、セシルはもう腑抜け無い。
(狙いは一つ。)
大羽鳥を何度も見ていたセシルには、狙う場所が分かっていた。
後ろに倒れ、体の重心を固定する。
そして、そこにめがけてボウガンを向けた。
「お前は、襲う瞬間に口が開く。」
餌に食いつく攻撃故か、必ずその瞬間に口が開く。
そして、言葉通り口が開いた。
その瞬間、ボウガンの引き金を引いたセシル。
飛び出した矢が、口に飛び込んだ。
それにより悶絶する大羽鳥。
暴れると、仕舞いに樹に衝突し倒れる。
次の瞬間、影からシルファが現れた。
「良くやったんよ。後は俺がっ。」
胴体にかけ上がると首に一撃。
一度顔をあげる大羽鳥だが、そのまま地面に沈んだ。
大羽鳥から降りるシルファ。
更に、影から現れたエリクと共に、セシルに駆け寄る。
「あそこで冷静になれるとわな。」
「成長って奴なんよ。写真に残しておけば。」
「からかわないで下さいよっ。」
「からかってないんよ。ほら。」
シルファが差し出した手を取って立ち上がるセシル。
その瞬間、ポーチに挟んでおいた手帳が地面に落ちた。
それを取ったシルファが表紙を見た。
「これセシルの? 手帳を持ってるとこ見たことがないんよ。」
「そうだな、いつの間に持ってたんだ?」
「いや、自分のじゃなくてですね。」
事のいきさつを話した。
例の化け物や、この先の惨状。
そして、そこでこれを拾ったこと。
それを聞いたシルファが手帳を開いた。
「なるほど、という事はこれに何か手がかりがありそうなんよ」
「勝手に見ていいのかよ。」
「情報を集める為、致し方なしなんよ。」
遠慮せずページを捲っていく。
中には、何かの記録がページ毎に書かれている。
ページの上には、部隊名が書かれている。
「これは、部隊の記録か。」
「何ですか、それ。」
「確か、隊の出来事をまとめた物だったはずなんよ。たぶん。」
その日の欠席者や、部隊の達成した目的などを記したもの。
更に、ページを捲っていくシルファ。
すると、あるページに目をつけた。
「村を壊滅させた存在の討伐?」
「それってここに来た理由って奴か。でも、それなら上が知らないはずが無いだろ。」
「どうい事ですか?」
話が理解出来ないセシル。
なにせ、騎士の話なんて知る由が無いからだ。
エリクが分かりやすく説明する。
「セシルの村は、何かあれば村長に報告するするだろ? それと同じだよ。」
「もし騎士団が知っていたら、今回の騒動がもっと早くに対処に動けていたはずなんよ。施設だって守れてたはずなんよな。」
派兵する途中で施設の周辺の異変に気づけていたはずだ。
もしそうなら、鳥竜も大蛇も事前に駆除できていただろう。
すでに、禁止区域に指定されており、施設の人間も皆救い出せていたかもしてない。
「まぁ、結果論だがな。とは言っても、可能性があったのは事実だ。でもそうなって無いことわ。だ。」
「っ、もしかして報告してないって事ですか!?」
「そ、村が潰れた事も、村を滅ぼした存在の事も知らせていないって事だ。」
何も知らないんじゃあ手だての打ちようがない。
しかし何故、こんな重大な事を報告してないのか。
その事実は次のページにあった。
そこから先は、今までとは異質な事になっていた。
「次のページにいくんよ。ん? なんなんよこれ。」
「愚痴、だろうな。ええと、『隊長がおかしな事をいい始めた、この事件を解決して手柄が欲しいだと、他に取られないように報告はしない。上には、崖崩れが多発しているから見に行くといっておけ。』」
『確かに我が隊は、他より地位が低く雑用ばかり。仕舞いには他の隊に馬鹿にされる。しかし、それでも騎士である事に誇りを得ていたはずだ。それが何故。いや、落ち込む部下に心を痛めていたのは知っている。それをどうにかしようとしただけだ。悪いのは、むしろ副隊長でありながら、知らないふりして何もしなかった私なのかもしれない。』
どうやら、副隊長の手帳のようだ。
そんな事が書かれていた。
騎士団もただならぬ組織では無いという事だ。
しかし、三人はそれに対して呆れたのだ。
「要するに、騎士団の揉め事に巻き込まれた訳だな。」
「責任者に文句を言わせるんよ。まったく。」
「きちんと報告されていればこんな事には。いや。」
もし、報告されていれば死ぬ人はいなかったはず、と言いかけたセシルだが、先程の光景を見て考えを改める。
あれは果たして、騎士団に勝てるだろうか、そもそも、人類が勝てる相手だろうか。
急に黙り込んだセシルを余所に、シルファがページを捲った。
「うげっ。びっくりしたんよ。」
「どうしたんだ? うわっ。」
「っ!?」
ページを捲った先には、助けてという文字が殴り書きされていて、その上からぐちゃぐちゃあっと、線で塗り潰されている。
どこからどう見ても異常だ。
三人が驚くのも無理はない。
更に、ページを捲ると栞が落ちて来たので、とっさにシルファが拾った。
『文字を書いていたら何とか落ち着いた。これからここに来た物の為に記しておく。漆黒の化け物に気を付けろ。隊長が一発でやられた。一瞬で潰されて喰われた。他の騎士も、喰われた。もう終わりだ。自走船すらも歯が立たない。逃げるしかない。でも、先程から逃げる騎士も一瞬で追い付かれ食われてしまった。私ももう駄目かもしれない。この手帳を見ている誰か、もし漆黒の化け物と合ったら見つかる前に逃げろ。あいつはこの世界にいてはいけない存在だ。もし逃げれるなら、この手帳にある栞を私の家族に届けてくれ。』
何とか意識を取り戻し、伝言を記したのだろう。
自分が大変な時に、他の誰かの事を思うのはまさに騎士の鑑だ。
最後まで読んだ三人は栞を見る。
「こいつにもこいつの人生があったんだな。」
「まぁ、自業自得なんよ。でも、報われて欲しいんよ。」
「はい、届けましょう。絶対に。」
覚悟を決める三人。
栞を戻し本を畳むシルファ。
しかし、大事な問題が残っている。
「まず、合流しないとな。」
「無事だと知らせたいんよ。」
まず、合流しないと話にならない。
とは言うものの、山の反対に落ちたのだ。
合流するのは至難の業なのだ。
そう思っていた矢先の事。
空から鳥の羽ばたきの声が聞こえる。
上を見上げると、よく知る鳥が飛んでいた。
「コガラキの鳥か、おーい。」
「こっちなんよー。」
「おーい。気付いてぇ。」
見やすい位置に移動する三人。
鳥に向かって手を振る。
すると、声のする方に鳥が飛んできた。
こちらに手を振る三人を見つけたコガラキの鳥。
ぴーひょろろろ。
鳴き声を出して発見を知らせる。
すると、ある方向へと飛んでいく。
顔を合わせ頷いた三人は、鳥を追いかけ始めた。
「こっちに何かあるのか。」
「分からないです。」
「とりあえず行ってみるんよ。」
鳥は一直線に飛んでいく。
すると、三人は広い道へと出た。
辺りを見渡し確認する。
「そういえばそうだ。自走船が奥に行ったということは、その道だってあるって事だよな。」
「そうなるんよ。」
「気づきませんでした。」
その時、三人の下に何かが迫る音が聞こえてきた。
足音と、車輪の音。
「お、来たな。」
その音の方を見ると、竜車が迫ってくる。
三人の前まで来ると、その前で止まった。
竜車の後ろに周った三人は、お帰りーと、手を振るカリネに振り返し中に乗り込む。
「おいーす。お疲れさーん。」
「待ってたんよ。」
「苦労かけてしまってすみません。」
乗り込む度に言葉をかけていく。
消息不明になったさ三人とは思えないほど軽い言葉だ。
そんな三人を、呆れつつも受け入れるグレン。
「心配かけさせたくせに、気楽なもんだな。」
「火山にでも放り込まない限り死なないんよ。」
手帳を振りながら、ジョークで返すシルファ。
床にどかっと座り込んだ。
シルファが持っている手帳にグレンが気づいた。
「なにを持っているんだ?」
「セシルが見つけた手帳なんよ。今回の真相がご丁寧に記されているんよ。」
「真相が? この森で起こったのか?」
「いいえ、この先の森を抜けた所です。そこで、化け物から隠れた竜車で手帳を見つけました。」
道の先へと指をさしたセシル。
この先に、事件が起きた場所があるのだ。
そして、事件の元凶もそこにいる。
「この先に俺達が追っている奴がいるんだな?」
「間違いないです。大きな口で自走船を投げ飛ばしたり、大羽鳥をくわえていました。」
「そうか。この先に。」
作戦を考えるグレン。
もしかしたら、この先で戦う事になる。
それを聞いたユーリアが呟いた。
「…大竜。」
「ん? そうか。苦手だったな。」
かすかに震えるユーリアに気づいたグレンが声をかける。
どうやら、大竜という言葉に怯えているようだ。
そんなユーリアに、セシルが尋ねる。
「何かあったんですか?」
「あぁ、ユーリアは家族を肉食の大竜に殺されていてな。」
「っ! そんな事が。」
家族が肉食の大竜の餌食に殺された過去を持つユーリア。
そうなると、怯えてしまうのも無理はない。
しかし、ユーリアは首を横に振る。
「ううん、大丈夫。」
「そうか? しかし。」
「今は犠牲者を無くすのが大事。」
確かに、こうしている間にも犠牲者は出ているかもしれない。
いつまでも、こうしている訳にはいかないのだ。
すると、シルファが手帳を軽く叩きながら言った。
「これの持ち主によると。見つかる前に逃げろ、とか言うぐらいヤバイ奴らしいんよ。」
「はい、とても強そうでした。」
相当手強い相手のようだ。
しかし、このまま考え続ける訳には行かない。
決断するグレン。
「リーダー、どうする? このまま戦うのか?」
「出来るだけ竜車で近づいて、そこから一気に襲おう。アリア、頼んだ。」
「近づいていいのね? じゃあ進めるわ。」
目的の場所に向けて竜車が走り出した。
コガラキも、鳥への指示を変える。
コガラキの鳥は、先へと飛んだ。
そのまま、道を進む竜車。
すると、すぐに森の出口まで来た。
「よし、ここで鳥を待とう。」
コガラキの鳥は、先を飛び回っている。
その場で待って、敵の発見を待つ。
しかし、一向にコガラキの鳥は鳴かない。
「どういう事だ?」
「いないって事っすかねぇ。」
「そんなっ。」
確かに、ここにいたはずなのだ。
コガラキが望遠鏡で覗きこんだ。
少ししか見えないが、間違いなく残骸が散らばっている。
「セシルの言う通り、竜車や自走船があるっすね。」
「とりあえず進んでみよう。」
事件の場に竜車が入った。
あまりの残酷さに一同が言葉を失う。
しばらく進むと、何かが転がっている。
「あれを見るっす。」
大羽鳥の死体の一部分だ。
確かに、ここで何かがいた形跡だ。
竜車から降りるグレン。
「セシルが言っていた奴か。」
死体に近づきそれを見る。
どうやら、頭のようだ。
アリアが推測する。
「噛み砕いた時に落ちたのね。でも噛み砕いた本人はどこかしら。」
「さあな。どこかに移動したのか?」
死体から離れたグレンは、周りを見渡した。
何もいない。
コガラキの鳥も鳴かない。
その場を静寂が包み込む
初めての長文、上手く書けてるでしょうか。
次回、とうとう戦います。




