立ちはだかる弊害。そして援軍。
森から抜ける五人を見送った一行。
大竜へと駆け出すその姿を見送っていた。
「マジで行きやがった。」
大竜に恐れる事もなく勇敢に立ち向かっている。
その内の一人がボウガンを撃ち大竜に存在を気づかせた。
大蛇ですら勝てずに逃げ回っていたハンター達からすれば、その姿に頼もしさを感じた。
そして、そのまま大竜を引き付けながら横に逃げた。
目の前には、もう何もいない。
「彼らの努力を無駄にするな。前進!」
森から出た自走船と竜車は、大竜がいた場所を抜けた。
そして、警戒をしながら進んで行くと森も崖も無い草原に出た。
相も変わらずのんびりした草食の小竜がいると思ったが何もいない。
「何が起こっている?」
ハンターの男はぼそりと呟いた。
普段ならここにいて、餌の草を食べているはずだ。
影ひとつすらな無い。
「もう遅いし寝床に帰ったんじゃ。」
そばにいた一人の職員がそう答えた。
確かに、もう日が落ち駆けている。
都市に帰る頃には日が山に隠れ始める頃だろう。
寝床に帰ってもおかしくはない。
「しかし、ここまで何もいないなんて事は無いはずだ。帰る途中の奴がいるはずだ。」
全員が一斉に帰るわけでは無い。
後発組の姿は残っている筈なのだ。
ハンターの男が周りを見回していると。
ぴーひょろろろ。
先程の鳥の鳴き声が聞こえた。
確か、あの声で鳥竜の存在を察知していた。
という事はつまりだ。
通信機から男性の声が聞こえる。
『どもっす。グレンリーダーの代理っす。近くに、ウルフの群れが見えるっす。』
「何だとっ、下りてきたのか!?」
『うちの大先生によると、鳥竜の匂いにつられたとか。このままだと群れに入るっす。』
またもや鳥竜の仕業。
しかも、よりにもってこのタイミング。
考える時間はわずかだ。
「小竜がいないのはそういう事か。ボスはいるか?」
『今の所は確認出来ないっすね。まだ分からないっす。』
もしかしたら、群れの中にいるかもしれない。
しかし、それを知るには近づかないといけない。
ボスがいるかいないかで戦いは変わるというのにだ。
「うちは、あなたに一任するつもりっす。どうするっすか。」
向こうのハンター達はいない。
戦えるのは、各自走船を守っている僅かなハンター達。
それと、自走船の装置。
それならばとハンターの男は答えた。
「進路を変えて群れを迂回。その際、自走船で攻撃する。」
『了解っす。準備するっすね。』
代理の男はしれっと当たり前のように答えた。
ハンターだけあって予想をしていたのだろう。
ハンターの男は、全ての自走船と竜車に指示を出した。
「戦闘体勢に入る。その為に進路を変更するついてこい。」
まず、運転手に指示を出すと自走船は横に進路がずれていく。
その後を後続が続く。
ハンターの男は、もう一度指示を出す。
「自走船についてある装置を扱えるものはいるか。」
通信機からはしばしの沈黙。
確認しているのだろう。
まず、ハンターの男が乗っている自走船の中から手を上げる者が現れる。
「俺使えるぞ。」
「私もよ。」
数人が手を上げた。
通信機からも、返事が返ってくる。
『こちら問題ないです。いつでも戦闘に入れます。』
『こっちも大丈夫っすよ。後ろは任せるっす。』
何とも頼もしい返事だ。
準備は各自に任せても良いだろう。
必要最低限の指示を各自走船に出した。
「装置を動かせる者は装置についてくれ。ハンターはその護衛。それ以外は内部の倉庫から矢を運んでくれ。」
準備をしている間に、ウルフの群れが見えてきた。
群れの端に沿うように接近。
うおぉーーーん。
群れもこっちに気づいた。
「準備はいいな? 撃てっ。」
ウルフの群れに接触する瞬間、各船から一斉に矢が飛び出た。
船から飛び出た矢は、数匹をまとめて貫いた。
竜車の船は、群れの奥を狙っていく。
時々、群れの中央のウルフが吹き飛んだ。
砲弾の玉が直撃したのだ。
「いいぞ。このまま続けろ。」
次々と発射される矢と玉がウルフの数を減らしていく。
しかし、ウルフ側も黙っていない。
攻撃を掻い潜ったウルフが船に迫った。
「させねぇよ。」
ハンターの男を含んだハンター達がウルフを斬って船から落とす。
ここまでは順調だ。
しかし、数がいっこうに減らない。
「どうなってやがる。」
減らせど減らせど襲ってくるウルフは現れる。
対処が追い付かない。
そこに、新たな不幸が現れる。
職員の一人が叫んだ。
「ボスだ。ボスがいるぞ。」
群れの真ん中から大きな個体が現れた。
ウルフのボスは、真っ直ぐこっちに来る。
迫るウルフのボスに身構える一行だが。
急にボスの顔が爆発した。
コガラキが、爆発するボウガンの玉を当てたのだ。
一瞬怯んだが、また追いかけてくる。
通信機から代理の男の声が聞こえる。
『ボスは任せるっす。』
そう言った直後、竜車からボスに向けての一斉射撃。
竜車を目的に捕らえるボスが竜車に迫る。
ボスを列から引き放すように竜車は自走船から離れる。
その後を追いかけるボス。
「大丈夫っすからね。奥でいて欲しいっす。」
非戦闘員の職員を竜車の奥に集め、それを庇うようにコガラキとカリネが前に出た。
ボスに向け爆発する玉を撃つコガラキ。
それを避けるように横に出ようとするボス。
「皆さーん。お願いしまーす。」
抜けた声を出したカリネに答えるよう竜車の上から矢が飛び出る。
ボスへの牽制だ。
それにより、ボスは横に出れない。
そのまま、後ろにつかせるとカリネがアリアに指示を出した。
「竜車を止めて。」
「分かったわ。」
小竜に指示を出すアリア。
竜車が止まる。
当然の事だがボスが竜車に衝突する。
その瞬間、カリネが竜車内の壁にあるボタンを押した。
「スイッチポン。」
すると、竜車の下に収納してあった槍が飛び出た。
回転しながら飛び出た槍が皮膚を貫く。
ついでに、先端に幾重についてある刃が皮膚をえぐっていく。
たまらず仰け反るボス。
そのボスに向かってコガラキが飛び乗った。
「暴れないでっすよ。」
ロープを手に持ってるコガラキは、そのままボスの奥に飛ぶ。
そして、下を潜って戻って来た。
ロープの先端の輪っかにロープを通す。
「かけたっすよ。」
「了解。アリア、全速前進。」
カリネの合図で、小竜に指示を出すアリア。
竜車が走り出すと、ボスがロープに引かれて地面に倒れた。
そのままボスは引きずられる。
コガラキはそんなボスの上に飛び乗っている。
「エンジン全開!」
段々スピードが上がっていくと、ボスは出来る余裕も無くなる。
地面に擦れる度に何度も悲鳴を上げるボス。
槍でついた傷から血が流れていく。
しばらく引きずると動かなくなった。
「もういいよ。」
竜車の速度が遅くなる。
コガラキが輪っかからロープを外し竜車まで走って跳び乗った。
ボスは全く動かない。
「上手くいったね。」
「一か八かだったっすけどね。」
ロープを回収するカリネ。
コガラキも、ハンドルを回して槍を戻した。
ハンドルはとても重いのか苦労している。
「結構固いんすけど、どうにかならないっすか?」
「突貫工事で作った奴だから原始的なのはご愛嬌。上手くいっただけでもいいでしょ?」
突貫のわりに、ウルフのボスぐらいなら致命傷を与えれる攻撃。
これで、前の様に竜車が襲われても自衛出来るのだ。
そうしているうちにも、ターンして草原を斜めに進んでいる自走船に合流した。
先頭の自走船にいるハンターの男の声が通信機から聞こえる。
『ウルフのボスをこうもあっさりやっつけれるとはな。』
「たまたまっすよ。次もこうはいかないっす。」
先程の攻撃は、相手を後ろにつかせる前提の話。
しかも、距離を取られると意味は無い。
いくつもの条件を満たしてようやく使えるのだ。
しかし、ボスを退けたのは事実。
通信機からハンターの男の指示が来た。
『後は子分だけ、全員一直線で逃げるぞ。』
群れを抜けた一行は、斜めに進むのを止めて越境線へと真っ直ぐに進路を変えた。
竜車を挟んで三列に並んだ。
これで、後ろから迫るウルフをバラけさせて追い払う。
順調に進んでいたと思った瞬間だった。
二匹のウルフのボスが現れた。
『どういう事だっ。』
「大先生によると、こんな数の群れを一匹で操るのは無理だから、どうせいくつかの群れが合流してるんでしょ。とも言ってたっすね。」
そんな大事な事をあっさりと言ったコガラキ。
いくつかの群れがいたからこそあの数だったのだ。
しかし、ハンターの男は不服そうだ。
『そんな大事な事をもっと早く行ってくれ。』
「大丈夫よ。対処するのは一部で良かったから。それに、もうすぐ来るでしょうから。」
今度はアリアが直接解説する。
疑問を浮かべるハンターの男。
要領を得ない解答を聞き出そうとした瞬間、その答えが判明した。
というより現れたのだ。
「あんなにどんぱちして気づかないわけ無いもの。」
その答えが目の前から大きな音を立てながら迫ってくる。
ギルドと騎士団の自走船だ。
隊列を組んだ十台の自走船が向かってくる。
そのギルドと騎士団の自走船は、横に並んだ脱出する自走船の間を潜り抜け通過した。
その際、騎士団と思われる者達が敬礼をしながら脱出する者達を迎え入れた。
通信機から新たな信号が来たので切り替える。
『ここは、我々に任せろ。早く越境線を越えるんだ。』
エメリナと通信機が切れる前に言っていた事をアリアは覚えていたのだ。
ハンターギルドが、越境線に護衛を送る。
そう、越境線まで近くまで来ていたのだ。
「まさか、騎士団まで来るとは思わなかったわね。」
来るのはギルドだけだと思っていただけに予想ができなかった。
その十台の自走船は、ウルフのボスとその群れに突っ込んだ。
船から現れた騎士や、ハンターがたくさん出て戦闘が始まる。
こうして、無事越境線を越える事が出来たのであった。
引きずりとかえぐいと思いつつも採用。




