草原での異変
研究所を出たハンター達は竜車に集まった。
そこでは、竜車の改造が行われていた。
作業中のカリネに声をかけるグレン。
「カリネ、今すぐ竜車を出せるか?」
「走らせるぐらいなら大丈夫だよ。」
「充分だ。早速準備をしてくれ。」
作業を止めたカリネが、他の作業をしているメンバーに声をかける。
そして、近くで小竜の世話をしていたアメッサにアリアが声をかける。
「アメッサ、小竜達の世話をしてくれてありがとう。」
「これぐらいいいよ。それにしても、この子達って賢いよね。こっちの言葉を理解してて驚いたよ。」
「昔から、人に囲まれて過ごしていたらしいからね。私も少し教えたわよ。」
そんな会話をしながら小竜を竜車に繋いだ。
それと同時にスピナも竜車から降りた。
最後にさっと確認してカリネに道具を帰す。
「帰って来るまでに用意しておきますよ。なるはやで届けます。。」
「お願いするね。よし、皆乗って良いよ。」
竜車に乗り込んでいくハンター達。
全員が乗り込むとカリネが階段を上げる。
すると、竜車の通信機がなったのでグレンがボタンを押す。
受話器ではなく本体から声が出るモードにするボタンだ。
通信機からガーネリヤの声が聞こえた。
『あー、あー。テスト。テスト。どうだい、聞こえるね?』
「大丈夫だ、通信に問題は無い。」
『問題なし確認。今回の依頼我々がサポートする。始めに言っておくが、何かあったら必ず逃げろ。これだけは、忘れてはいけない。』
「分かっている。それじゃあ、出発する。」
ガーネリヤの了解、と言う言葉を合図に竜車は動き出す。
来た道を戻り門に向かう。
通信機から、今度はエメリナの声が聞こえた。
『この辺りの越境線は、草原だから分かりにくいです。アリアが知っているはずですから、アリアに従って越境してください。』
「分かった。越境したらそっちに伝える。」
竜車が門につくと、手続きを済ませて都市を出る。
目的地へ向けて竜車が進む。
途中までは、王都までの整地された道を進み、そこから、王都とは反対の道が無い場所に出る。
通信機からガーネリヤの声が聞こえる。
『確認しておくけど、越境先には、大ネズミ、大トカゲと言った獣達が確認されている。そいつらは、基本虫を食べるので大した問題は無いはずだね。本来ならだけど。』
『以前は、それらの獣を狙う肉食の小竜がいましたが、騎士団によって退治されているはずです。』
『だから、本来なら大丈夫なはずだけど、それなら、施設の人達は自力で帰れるはずだね。』
危険が排除された場所なら、移動する乗り物さえあれば自力で帰れる。
支援施設なら、乗り物が豊富なのだろうから困る事は無い。
改めて、ガーネリヤが忠告する。
『いいかい? 今回の目的は非戦闘で救助を行うことだよ。』
「分かっている、煙玉を沢山積んであるはずだ。だな?」
「もちろん沢山あるよ。いつでもどうぞ。」
『なら良かった。検討を祈るよ。』
煙玉を用意していつでも打てるようにしておく。
これで、いつ何かに遭遇しても逃げれると言うことだ。
何事もなく進んでいると、アリアが竜車の中へ声をかける。
「もうそろそろで越境線よ。」
「越境線? 全然分からんのよ。」
「何にも見えねぇけど。」
「同じく。」
辺り一面を見渡しても、木一本も無い。
何処を見ても一面草原だ。
何を基準に越境線と言っているのかが分からない。
そんな中、上から見渡していたコガラキが何かを発見する。
「山と海っすかね。」
「当たりよ。山の端から海まで伸ばした線を基準に越境を決めているわね。」
そう答えるアリア。
今回はコガラキと共に上にいるセシルもそれに気づく。
コガラキが見ていた方向を見ると、うっすらと海が見える。
望遠鏡を覗いていたコガラキだからこそすぐに気づけたのだ。
一同が納得したと同時に竜車が越境線を越えた。
「無事、越境線を越えた。」
『了解したよ。気を付けて進んでくれ。』
「分かっている。コガラキ、鳥を飛ばしてくれ。」
「はいっす。」
笛を吹き鳥を飛ばすコガラキ。
周りを警戒しながらも、進んでいくと地面にはえてある草が増えていく。
それと同時に、草食の小竜も増えていく。
竜車の上から見る小竜にセシルは感激している。
「小竜なのに大きいですね。」
「まぁ、これだけ餌があるっすからね。大きくもなるっすよ」
中には、竜車と同じぐらいの大きさのもいる。
親なのだろうか、小さい個体を顔で押している。
本当に何かあるのかと不安になるぐらいのどかだ。
「こんなに食べ物に囲まれて幸せそうなんよ。」
「あっちもめし。こっちもめし。羨ましいぜ。」
「でも、狙われるのは勘弁。」
「確かにな。肉食からしてもご馳走まみれだ。皮も柔らかそうだしな。」
呑気に過ごしている小竜を見て思い思いに感想を述べる一同。
確かに、表面が柔らかければ簡単に捕食出来るだろう。
グレンの言葉にアリアが付け加える。
「荒れ地の小竜は、乾燥した肌を壁にぶつける事によって固くなるわね。それに比べてこの辺りの気候や壁が少ないから皮膚は弱いままなのよ。」
「人間も取って食べるからね、かわいそうだけど。」
しかし、そんな事も構わずとばかりに横になっている小竜もいる。
危険な生き物の生息地とは思えない。
竜車は小竜の横を抜け、更に奥へと進んでいく。
草原の横に、森や崖の障壁が増えていく。
その道を進んでいくその時だった。
ぴーひょろろろ。
コガラキの鳥の鳴き声が辺り一面に響き渡った。
とっさに辺りを見渡すコガラキ。
空にはいない。
となれば、地上かと思った直後にそれは現れる。
「まずいっす。セシル、煙を巻くから手伝うっす。」
「はいっ。」
偵察組が筒についた紐を引っ張ると煙が溢れて竜車を隠す。
笛を吹き、鳥に指示を出して相手の様子を探る。
どうやら、襲っては来ていないようだ。
グレンが、コガラキに尋ねる。
「何があった?」
「大虎っす。身を隠した方が良いっす。」
「まさか、この辺りの肉食はもういないはず。分かったわ、森に入りましょう。」
竜車の進路を変えて森に入る。
身を隠せる場所まで来れていたのは幸いだ。
森にある道を進むルートで施設を目指す。
通信機からガーネリアの声が聞こえる。
『事情は聞いていたよ。大虎か。元々、肉食の小竜がいたから後から来たとしてもおかしくはないが。』
『大虎はもっと奥。草原の先にある山岳地方に住んでいるはずです。』
「あいつに襲われたのか?」
『まさか、大虎程度にやられる奴なんてこの辺りにはいないよ。』
施設から出られないのは、大虎に襲われたからなのか。
原因が分からないまま施設に近づいていく。
すると、前方に何かの物体が横たわっているが分かる。
すかさず、竜車を止めるアリア。
「一体何なんよ。」
「敵か?」
急に止まった事に竜車の中にいるメンバーが警戒をする。
そんな、メンバーにアリアが説明する。
「あれは小竜のボスの死体ね。」
「死因は分かるか?」
「刃物で切られてるわね。人の手によって狩られているわね。」
ここで戦いが起こったという事だ。
ただ死体は回収されていない。
周りを見ていたコガラキが声をかける。
「周りに子分の死体が沢山あるっす。」
「なぜ回収がされていないのか。」
「恐らく、倒した直後に何かに襲われて施設に逃げ込んだんでしょう。」
ならば、近くに元凶がいるかもしれない。
ここにいるのは危険ということになる。
状況確認もほどほどに、竜車は再び走り出す。
「急いだ方が良さそうね。」
「そうだな、急いで支援施設に向かった方が良い。」
森を進んでいくと、施設の一部らしき物が見える。
この地の支援施設は、森の奥に隠すように立てられてある。
周りを見渡す望遠鏡の部分が突き出ているのだ。
そこを目指して進むと、難なく施設の門の前についた。
しかし、荒れ地の時の様に開いてはくれない。
「誰もいないのか?」
「そう見たいね。」
「しかし、そうなるとどうやって入ったものか。」
門を開けてくれる人がいないようだ。
門は内側からしか開ける事が出来ない。
そうなると、中に入る事が出来ないのだ。
「おーーい。・・・返事はなしか。」
「用事で離れているだけじゃないん?」
「なら、代わりの奴を置いていくだろ。」
「おかしい。」
ここに来て、足を止められる事になる。
しかし、いつまでもこうしている訳にはいかない。
偵察組が見張っているが、見渡しが悪い森の中なのでいつ襲われるか分からない。
「仕方ないわ。他の入り口に向かいましょう。シルファの言う通り離れているだけかもしれないもの。」
「分かった、それで行こう。竜車を動かしてくれ。」
門から離れると施設の周りの壁沿いに竜車を走らせる。
しばらく走っていると、前に倒れている木が現れる。
進行先を塞ぐ様にあるためアリアは急いで竜車を止めた。
「これは門?」
「まさか、門が破壊されているのか。」
施設の門は見事に砕かれており、その一部が進行を塞ぐ様に倒れているのだ。
つまり、施設内が襲われてたという事だ。
急いでメンバーに指示を出すグレン。
「お前達、警戒しろ。何かいるかもしれない。」
「とんでもねぇ事になってんよ。」
「中にいる奴らは無事なんだろうな。」
「心配。」
外からでは中の様子は分からない。
コガラキが竜車から降りて様子を見に行く。
セシルも後についていく。
倒れている門の破片から中を覗きこむ。
「ぐっ。」
「っ。あまり、見ない方が良いっすよ。」
施設のあちこちに血のような物がついている。
しかし、人の死体は見えないようだが。
引っ込むセシルの代わりにコガラキが中を見ていると奥から大蛇が現れた。
「ヤバイっすね。」
グレン達なら問題ない相手。
しかし、非戦闘員には抵抗すら出来ない相手だ。
大蛇は音を立てずに、施設の周りに巡回している。
そして、建物に頭突きをした。
その音は、当たり前だがグレン達にも届く。
「すまない。約束を果たせそうにない。」
大剣を持ったグレンは、竜車から降りて背中に背負う。
他のハント組も、無いよりましだとナイフを腰に下げる。
何が起きたか察知したガーネリヤが答える。
『仕方ない。後は頼んだぞ。』
一同は、戦うために門へ向かう。
草原は辺り一面が草です。地面が見えないほどです。




