アリアの同僚
「生き物係。懐かしいわね。」
「生き物の研究ばかりしたら、いつの間にか学校でその名前が定着したのよね。」
建物の中身を見れば誰しもがそう思う事だろう。
常に獣に囲まれた生活をしていたのだから本人達も仕方無いと受け入れた次第だ。
先程、前に出た人が自己紹介を始めた。
「あんた達は誰だって空気だから名乗っておこう。私はガーネリヤ。生き物の生態系の調査専門だね。」
見るからにボーイッシュな女性が仁王立ちで腕を組んで立つ。
「次は私ですなー。トーパって言うんだよ。主に生き物の体の仕組みを調べてるんだなー。」
髪で目を隠した女性が肩まで小さく手を挙ながら言った。
「私はアメッサです。生き物が食べる物を研究しています。」
今度はうって変わって小柄な女性がお辞儀をして言った。
「どうも、スピナです。皆さんはもふもふ派ですか? つやつや派ですか? え、聞いてない? そうですか。あ、地域の環境と気候について調べてます。キリッ。」
最後に、無表情ながらも感情豊かな話し方をする女性が言った。
四人はそれぞれポーズを取っている。
彼女達もまたアリアやエメリナと同僚と言うことになる。
四人を代表してガーネリアが宣言する。
「先程の話はある程度聞いた。要するに我々が、そこにいるハンター達のバックからサポートをすればいいんだね。よし、まかせろっ。」
「で、何をすれば良いか分かっているの?」
「知らない! まぁ、何とかなるだろう。」
ガーネリアの適当な返事に頭を抱えるエメリナ。
だが、ガーネリアの顔は清々しいほど笑顔だ。
不安は一切無いのだろう。
「何か賑やかなのがきたんよ。」
「大丈夫なのか?」
「でも、アリアさんの友達っすからね。」
ぼそぼそと喋る、シルファとエリクとコガラキ。
賢そうに見えないのだから無理も無いだろう。
頭を抱えているエメリナが釈明をする。
「安心して下さいね。彼女達はこれでも優秀なんですよ。」
「見えないけどね。これでも、専門分野では私より上よ。」
アリアが追加で釈明をした。
実際、アリアと肩を並べられる実力なのだ。
散々に言われているが、気にせずガーネリアが本題に入る。
「それで、生態系が狂うかも知れないという話だが。」
「そう、丁度あなたに聞きたかったのよ。どう思う?」
「さもありなん、だ。今、ウルフの数が増えている事について調査をしていてね。何と、ボスが様々な山で巣を作っているらしい。しかも、越境線にある山でだ。」
力強く言うガーネリア。
ウルフのボスが越境線に集まっていると事になる。
アリアが原因を察知する。
「追い込まれた。」
「だね。」
「動きは?」
「今はまだね。」
置いてきぼりにされて呆気に取られているハンター達をよそにアリアとガーネリアが話を進めている。
エメリナが二人を戒めた。
「自分達の世界に入り込むのは悪い癖よ。お客様もいるんだから分かりやすく説明なさい。」
「おっと、そうだったね。ウルフのボスは、自然界でも弱い方だ。もし、生態系が変わって彼らの脅威が現れたら逃げる。そして、追い込まれた者同士で繁殖して勢力を増やし身を守っている。」
「ウルフが増えているのは、逃げ場所を探している。となればいずれ。」
「ボスが人の住みかに現れる。といった所かね。まぁ、まだ偵察をしている段階だろう。このまま、子分を狩り続ければ危険と判断して山から下りてこないだろうけどね。今は。」
最後に不穏な言葉を付け加えるガーネリア。
ここまで分かっていて安全とは断言は出来ていないらしい。
疑問に思ったグレンが質問をする。
「今は、って事はどういうことだ?」
「先程の君達の話を聞いてはっきりしたよ。いずれ山からも追い出される。山に住む肉食なんていくらでもいるからね。」
やれやれと肩をすくめるガーネリア。
大変な事態なのに焦っている様子は無い。
ハント組が感想を述べる。
「まさに、越境線の崩壊なんよ。」
「現実味を帯びてきたわけだ。」
「危険。」
妄想から現実へ。
考えてきた事が鮮明になってきた。
エメリナは、今までの話を整理を始めた。
「一帯の調査が必要ね。ガーネリア、あの辺りの縄張りにしているモンスターを調べて。」
「いいよ。でもどうする? ヤバイのがいるんだろ? アルカルンにある情報じゃ追いつけないかもね。」
生態系が変わっている事を考慮すると今ある情報は遅れているだろう。
もはや、何か起こっている前提で話を進めなくてはいけない。
「それでも、無いよりはましでしょう。」
「情報一つに無限の価値あり、か。分かった。調べてみよう。」
ガーネリアは、建物から出てどこかへ向かった。
残された一同で話を進める。
アリアがトーパに尋ねた。
「ねぇ、トーパ。あなた、鱗の加工出来るわよね?」
「道具があればいけるんだなー。」
「じゃあ、お願いしたい事があるんだけど。」
アリアに案内されて竜車へと向かうトーパ。
ギルドの竜車から移した大竜の鱗をトーパに見せた。
トーパは、髪を上げて輝く目を見せた。
「これは、荒れ地にいた子せすね。鱗がごつごつしてる。これが背中の鱗。全長は、ざっと五メートルか六メートル。あー、綺麗な鱗。私も欲しいです。」
「余ったのはあげるわよ。それで、材料は揃ってる?」
「大丈夫だよ。」
鱗に頬擦りする同僚に呆れながらに言うアリア。
そんな、トーパのあいている頬っぺたをつついた。
「全く、美人が台無しね。髪も普段から上げてればいいのに。」
「えへへ。チームの皆だけですよ? 恥ずかしいですもの。そうだ、この子の写真ってあります?」
「あるわよ。後で見せて上げるわ。」
「やったっ!」
そう言って、トーパは鱗を見ながら完成図を頭の中で作り出す。
甘えん坊な彼女に溜め息をつきながらも悪くないと思うアリアであった。
「それで、サイズはどうするの?」
「そうね、今回はエリクの装備を作って貰おうかな。確か革の装備の時のデータがあったはず。」
アリアはデータを見つけてトーパに渡した。
そういているうちに、建物から全員が出てきた。
グレンが、竜車の中にいるアリアに尋ねた。
「アリア。俺達は、エメリナの案内でこの町のギルドに行く事になった。」
「ガーネリアが帰って来るまでに、例の消息した騎士団について調べておきたいの。」
「分かったわ。留守番しておくわね。」
ハント組とエメリナは、ギルドへ歩いていく。
そして、アリアを除いた裏方組が竜車の周りに集まった。
「それじゃあ、竜車を完成させるよ。」
「はいっす。」
「頑張ります。」
張り切る裏方組。
すると、スピナが竜車を見て感嘆の声をあげた。
「自走船を乗っけるとは大胆な事をしますね。まさに、自走船の大盛り。見るだけでもお腹一杯です。ごちそうさまでした。でも、所々つぎはぎですね。」
「あれ、分かっちゃう? そうなんだよね。時間が無かったんだよね。」
相変わらずの無表情。
だけど、見るところはしっかり見ている。
更に、竜車の周りの木の柱を見た。
「それに、周りの木の柱も良くないですね。これだと、火がきたらあっという間に黒こげです。まさに走る棺桶です。アメッサ。何かいい案は無いですか?」
「乾燥した地方の木に代えて、支えを骨にしましょう。耐久性が上がるし木よりも軽いです。尻尾の骨とか良いと思います。」
「なるほど、そういう考えもありましたね。仰天です。早速手配しますか。今ならお友達料金で私の仕事場で用意します。格安です。」
そう言って、建物の通信機を勝手に取るスピナ。
仕事場であろう場所に連絡している。
カリネは、アメッサに感謝した。
「何から何までごめんね。」
「いえ、アリアの為ならこれぐらい当然ですよ。」
友達として協力してあげたいのだ。
その本人と髪を下ろしたトーパが降りてきた。
「何の話?」
「な、何でもないよ。」
恥ずかしそうに否定するアメッサ。
慣れた仲ゆえに、聞かれるのは恥ずかしいのだろう。
「連絡終わりました。用意してくれるそうですよ。お届けはこちらへ、値段はプライスレスと言う名の仕事場の長の懐で。」
「じゃあ、今度は私が使うんだなー。荷車用意して貰うよー。」
スピナと入れ替わりにトーパが通信機を使いに向かう。
カリネが竜車から道具を持ち出し配っていく。
そして、竜車の二階に上がった。
なぜかスピナもついてきたが。
「いい眺めですね。ここで暮らしたい。まさに住めば都。机とソファで寛ぎたい。」
「そうなんだよねぇ、でもこれ以上重くしたくないし。夢の乗り物も上手くはかいないんだよねぇ。」
なんだか息が合っている二人。
理想について共感することがあるのだろう。
早速、体にロープを巻き付け固定するカリネ。
竜車の二階にロープをつけた。
「せっかくなら、手伝って頂戴。直すべき所を二人に教えて。私は私のやる事があるから手が離せなくなるの。」
「その役目、承りましたよ。指揮監督ならお任せあれ。新人監督ですけど。」
こうして、竜車の新たな改造が始まった。
何も考えてない様で実は頭の回転が早いけど大体脳筋で済ますガーネリヤ
隠れ目は大体美女な法則の生き物の体フェチのトーパ
おっとりしてるが記憶力がすごい可愛がられ役のアメッサ
仲間ですら何を考えているのか分からない無表情なスピナ




