水の都、アルカルン
「身分を証明する物と、入場許可証を出して下さい。」
「分かったわ。」
門番に言われた通りの物を出すアリア。
いつもはグレンがやる事だが場所が場所だけにアリアが対応しているのだ。
門番は出された物を確認しアリアに返した。
「確認しました。どうぞ、アルカルンにようこそ。」
竜車は門を抜け都市に入る。
やはり、都市と言うだけあっておしゃれな建物が並んでいる。
そして、大きな荷物をを乗せた荷車を引っ張っている商人が多い。
「それで何処に行くつもりだ?」
「こういう時は教授に頼るのが一番ね。」
「教授? 町にいる教授以外にも知り合いがいるのか?」
「えぇ、待たしているから急ぎましょう。」
おしゃれな町並みを抜け、都市の真ん中にある大きな建物へ向かう。
一つ一つが芸術のようで人を楽しませる。
まるで来客を歓迎するかの様に綺麗な町並みだ。
大きな建物を囲うようにある、施設の様な建物の前で竜車が止まった。
竜車から降りたアリアは扉の前にあるボタンを押した。
「はーい、行きまーす。」
待っている間に他のメンバーも竜車から降りる。
扉の中から声が聞こえてからしばらくして扉が開く。
白衣を来た女性が片方の髪をかきあげながら扉の奥から現れた。
「アリアっ! 久しぶりね。」
「そうね。久しぶりね、エメリナ。」
エメリアと呼ばれた人物はアリアを見るや抱きついた。
しばらく抱擁した後、アリアから離れる。
そんな二人にグレンが代表して近づいた。
「アリア、この人が?」
「そうよ、教授のエメリナよ。」
紹介されたエメリナは頭を下げてお辞儀した。
グレンも合わせてお辞儀をして自己紹介する。
「俺は、ハンターチームのリーダーをしているグレンだ。よろしく。」
「話は聞いてます。よろしくお願いしますね。」
エメリナはグレンに向けてにこっと笑った。
何とも、柔らかい雰囲気を感じる。
グレンは、そんなエメリナに一つ疑問を持った。
「失礼だが。本当に教授なのか? それにしても・・・。」
「若すぎるでしょ? そうよ、エメリナは私と同期だもの。」
エメリナの代わりにアリアが答える。
つまり、同じ年齢ということだ。
それなら、若いのも当然だと、グレンは納得した。
「元々、学生時代に同じチームで研究をしてたんです。」
「そうね、色々と調べたわね。そういえば、他の皆は?」
「声はかけたんけど、遅れるらしいって。」
エメリナは見るからに落ち込んでいる。
すると、気を取り直したのか、ぱんと軽く手を叩いた。
「落ち込んでても仕方ないわね。まずは、お客様を歓迎しなくちゃ。さ、中に入って頂戴。」
中に入るよう促された一同は、言われるがままに建物の中に入った。
建物の中は、壁が本棚や植物で覆いつくされている。
そして、何よりも。
「獣がいるんよ。」
「何か運んでるな。」
「かわいい。」
建物の中を二足歩行の獣があちこちを行ったり来たりしている。
本を運んだり壁の植物に水をあげたりしている。
近くを通った獣が軽く会釈をして去った。
「倒しちゃ駄目よ? 大事な仲間なんだから。」
扉を閉めたエメリナがそうジョークを言った。
そして、建物の奥に引っ込む。
その際、アリア達に声をかけて引っ込んだ。
「そこにあるソファに座ってね。」
入り口すぐ横にあるソファに、各自自由に座った。
獣の一匹がソファの机を拭いた。
じっとその様子を見ていたグレンが疑問を口にする。
「それにしても、この獣達は何なんだ。」
「私達のチームが最後に書いた論文に関する事よ。確か、知能がある生き物についての研究と人間との共存だったわね。」
グレンの疑問にアリアが答えた。
ここにいる獣達は手助け、つまり共存をしているわけだ。
しかし、何故ここにいるのか。
「私達は基本、この都市から出ない。だけど、一回だけ外に行った事があるのよ。そこでこの子達に会ったのよ。それでついてきて貰ったの。」
そう言って、近くの獣を撫でた。
撫でられた獣は気持ち良さそうにしている。
「元々、馬や小竜に何かを引かせるのはあった事。だけど、それ以上の事は無理だったのよ。指示が増える分覚える事も増えるもの。」
「だから、言葉をどれだけ教えれるか。その言葉でどれぐらいの指示が出せるのか。色々試してたんですよ。」
奥から現れたエメリナは、沢山の飲み物が入った瓶を机に置きながら説明をする。。
隣にいる獣も掲げたトレーの上の飲み物をエメリナに渡している。
「それで、そのまま助手になって貰ったんです。」
「それでの意味が分からないけどそんな所よ。私は既に自然に返したと思っていたけど。」
「人よりも気楽だもの。それに、言われた事はちゃんとやってくれるし。もふもふが気持ちいいし。」
手伝いをしているところを見るに、獣側も納得しているのだろう。
まさに、研究の成果を思う存分発揮しているわけだ。
ソファに座ったエメリナは話を本題に移した。
「それで、アリアから聞いたけど世界が大変ってどうことかしら。珍しく説明が大雑把過ぎてよく分からなかったわ。」
「忙しくてアポをとる時間しかなかったのよ。それに、世界が大変ってまだ決まった事でもないし。」
「はっきり言ってアリアじゃ無かったら会わなかった。わざわざ、会いに来るぐらいだから何かあるって思ったから許可を出したのよ。」
教授として忙しいはずなのに、わざわざ時間を作ったのはアリアのためだ。
わざわざこの都市から離れたアリアが戻ってくるのは何もなければそんな事はしない。
「それで何があったか話してもらえるかしら。」
「そうね、まずはこの論文を見てほしいんだけど。」
アリアは自身が作った論文をエメリナに見せた。
その論文を元に、今まで起きたことを説明をしていった。
「異常事態。なるほどね。」
「どう思うかしら。」
「あなたたちが遭遇したものが至るところで起きる。そういう事ね。」
説明を聞いて勝手に納得をするエメリナ。
何か事情を知っているらしい。
「何か見に覚えがあるの?」
「私じゃ無いわ。ただ、最近調査が出た騎士団が行方不明になる事件が起きてるの。」
グレンが前の町で商人から聞いたことだ。
その事を知っているグレンが話しに割り込んだ。
「迷子になったって聞いたが関係あるのか?」
「そう、そういう話になってるのね。」
「違うのか?」
「分からない。」
グレンに敬語で返すエメリナ。
そう言ったエメリナにグレンは困惑した。
分からないならどういう話だと言うのだろうか。
「何が起こっているか分からないんです。音信不通の上、場所も分からない。何が起こったか闇のまま。」
「騎士団なら大層な兵器を持ってるはずだが。」
「もちろん、そうでしょう。越境を越えるときは必ず自走船に乗ってるはずですからね。ですが、何も見つかっていない。」
グレン達の見ず知らずの所で大変な事が起こっていたらしい。
それも大規模な事件。
アリアがエメリナに質問をする。
「それで、エメリナは、その事件にこの話が関わっていると思った訳ね。」
「そうね。ランクをまたいで降りてきたモンスターに襲われた可能性があると思うの。だけど、もしそうなら残骸すらないのがおかしいのよね。」
「残骸が無ければ行方不明止まり。騎士団もハンターギルド本部も気づけないわね。」
アリアはそう決断づけた。
今ごろ、騎士団もハンターギルドも困惑している頃だろう。
エメリナはもう一度アリアの論文を見た。
「つまりこれを見せて、何が起こっているのかを伝えたいということよね。」
「そうよ、だから教授になったあなたにこれを発表して欲しいのよ。」
「私が? あなたじゃないの?」
「私はもうただの一ハンターだもの。あなたにお願いするわ。」
エメリナは納得していないようだ。
何せ、人の成果を自分の成果にしろと言うのだ。
だけど、大事な友達のお願いを断りたくない。
「分かったわ。」
「ありがとう。」
府に落ちていないが受け入れるエメリナ。
これで、話を進められる。
これからの事に話は移る。
「それで、これに書いてある巨大な生き物は今どこに?」
「気球で追ってるわ。見つけしだい連絡をくれるらしいわ。」
カリネが直した気球が、早速役にたっているのだ。
そっちの問題は何とかなりそうだ。
だけど、まだ終わりじゃない。
「問題はモンスターの監視をしないといけないのよね。」
「環境が変わらないようにしないといけないのよ。そうならないように巨大な生き物がいた方角のエリアを調査する必要があるわ。」
環境を守るのが今後の課題。
その為にも排除しないといけない問題がある。
「つまり、騎士団を襲った奴を倒さないといけないね。」
「なら俺達の出番と言うわけだな。」
「そう・・・なるかしらね。」
歯切れが悪いエメリナ。
エメリナの変な様子を見たアリアは心配する。
「何かあったの?」
「正直言うと、アリアにそんな所に行って欲しくない。最初、この話を聞いた時手が震えてた。騎士団でも勝てない相手と戦いに行くなんて心臓が潰れしまいそうな位なのよ。」
良く見ると、エメリナの手は震えている。
ずっと押さえてたのだろう。
その手を、アリアはそっと包み込んだ。
「これは私が選んだ道よ。その時の事ぐらいは覚悟してる。でも大丈夫。私には頼りになる仲間がいるもの」
「当然だ。俺達が必ず守るさ。誰一人、死なせやしない。」
エメリナは、覚悟を決めたのかアリアの目を見て頷いた。
エメリナに微笑み返すアリア。
その場に良い雰囲気が流れ始めた瞬間だった。
「いい話ですなー。」
「エメリナの泣きそうな顔久しぶりに見たね。」
「というか重いんですけど。」
「だって、私も見たいのに。」
入り口の方から騒がしい声が聞こえてくる。
そちらを見ると白衣を着た人達が扉を少し開けこちらの様子を見ている。
「静かにした方が。ばれちゃう。」
もうばれているのである。
近くの獣が扉を開けると覗いていた人達がなだれ込んできた。
ついでに、下敷きにされる獣。
「あなたたちっ。」
恥ずかしい場面を見られたエメリナが顔を赤くして立ち上がって叫んだ。
なだれ込んできた人達も白衣をはたいて立ち上がる。
ついでに一人がのびている獣を抱えた。
前に出た一人がアリアに挨拶をする。
「久しぶりだね。アリア。チーム生き物係。再集合だ。」
そう言うと、目の前の一同に向かってにかっと笑った。
アリアが組んでいたチームは六人。
最後に出たので全員です。




