全てを知る者達
竜車は、陸上自走船の後をついていき支援施設へと向かう。
大竜も並走している。
最初にいたところはかなり遠くにありそれだけ離れた事が分かる。
通信機から、ジンバルのぼやきが聞こえた。
『戻ってからもやる事はいっぱいだなぁ。』
「そうだな、全ての支援施設に警戒体制がしかれるだろうからな。」
とんでもない化け物が来るかもとなればその対策で忙しくなるだろう。
あの巨大な生き物が何処に向かったのかも含めてだ。
そんな話をしていると、縄張りに入った大竜が自らの巣に戻っていく。
「ありがとう。」
手を振りながら、大竜を見送るアリア。
それからしばらく走ると、肉食の大竜と戦った場所に戻ってきた。
そこでは、職員が大竜を荷車に乗せていた。
『施設長、運ぶ準備が出来ました。』
運ぶ用の竜車からの通信だ。
もうすでに手配を済ませていたのだ。
ジンバルは、返事を返した。
『よし、とっとと運んでくれ。』
「動きが早いな。」
『そりゃあ、いつまた勢力図が変わるか分からんからな。他の奴が来るまでに終わらせておきたい。』
沢山の大物を運ぶと、どれだけかかるか分からない。
もたもたするほど、他の大物が現れるリスクも増える。
「あれだけ倒したのに、まだまだ続くんだな。」
『そりゃそうさ、何時でも人気だぜ。あの場所は。』
何て事も無いかのように言うジンバル。
これからも縄張り争いは続いて行くのだろう。
『荒れ地を抜けるぞ。』
「先に入る、後からついてきてくれ。」
一行は荒れ地を抜け森に入った。
念のため、竜車が先頭に立ち周りを警戒する。
森を進むと支援施設が見えてきた。
開いていた門を潜っていく。
「やっとついたか。」
陸上自走船が奥へとしまわれていく。
玄関前に竜車を止めると、片付けを押し付けたジンバルがやって来た。
通信越し出はない本人との会話になる。
「おーい。すまないが手伝ってくれないか。」
「何を手伝えばいいんだ?」
竜車を降りたグレンに話しかけた。
何の事か分からず聞き返すグレン。
「情報だよ。本部に連絡するのに情報が必要になる。」
おとぎ話の用な今回の事件。
受け入れてもらうにはそれなりの情報が必要なのだ。
「それなら私、写真を撮ってあるから提供できるわよ。」
「そうか、助かる。」
「ちゃっかり撮ってたんだな。」
当然じゃない、とカメラを見せて誇らしげにするアリア。
早速、カメラの写真の現像に向かった。
他のメンバーは、待機組と手伝い組に別れて行動に移った。
ハント組はドリンクが切れてへばって動けないから、待機組として残る事になったので他のメンバーで施設の中に入った。
「この部屋に入ってくれ。」
案内された部屋に入った。
各々が席に座るとジンバルが切り出した。
「皆、お疲れだ。無事、荒れ地の調査も出来る事になるだろう。」
頭を下げてお礼を言うジンバル。
荒れ地への移動もましになり、これからの調査も捗るだろう。
支援施設の仕事がようやく出来ると言うものだ。
しかし、とジンバルは話を続けた。
「お前達も知っての通り、まだ終わっていない。」
「本部に知らせなくてはいけないと言うことだったな。」
「そうだ、何度も言うが今回の一件は本部が動かないといけない問題だ。」
全体区域に警戒を出せるのは本部だけ。
だから、納得して貰う必要があるのだ。
「お前達が関わったクレハ村の一件から先程の戦いまでを知らせなくてはならない。」
「そこまでやらないといけないのか。」
「そこまで話さないと、なに言ってんだお前と一蹴されるだろうからな。」
実際、ヤバイ奴が降りてくると言うのは予想でしかない。
予想で動くような組織では無いのだ。
「それなら論文を書くわ。というより、もうほとんど出来てるんだけどね。」
急な声が後ろから聞こえたからと見てみれば、部屋の入り口にアリアが立っていた。
職員達と一緒に入ってきた彼女は、職員に指示してパネルに写真を貼っていく。
いきなりよく分からない事を言ってきた彼女に、ジンバルが戸惑った。
「彼女は一体?」
「学者だよ。しかも優秀な学校のな。」
「実は、ほとんどまとめてあるの。後は、証拠と結論が必要だったのよ。」
パネルに張った写真を見上げたアリア。
自分が撮った写真を見て考えている。
肉食の小竜と大熊の物から今回出会った全ての生き物の写真が撮られてある。
「こりゃあまた、ずいぶんと撮ったな。」
「そうね、まさかすぐに必要になるとは思わなかったけど。」
そう言いながら写真を選別している。
論文に使う写真を選んでいるのだ。
「後は、セシルに協力して欲しいけど。」
「自分ですか?」
「そうよ、クレハ村の住人の情報があれば説明に説得力が出るわ。」
どこぞのハンターが言っても伝わらない。
クレハ村の当事者がいる事で信憑性がますのだ。
「でも自分、ドラゴンの討伐に関わっていないから説明出来ないですよ。」
「そこは、あっしが説明を手伝うっすよ。」
偵察していたコガラキは、当時の事がよく分かるのだ。
現場の事が分かるコガラキがいれば、クレハ村の出来事はある程度説明が付く。
「ならお願いね。じゃあ、急いで論文を完成させるわ。それを元に連絡して頂戴。」
「分かった。あんたに任せよう。それで俺達は何をすればいい?」
「論文が出来るまで業務の復旧と、今回の依頼の手続きを済ませて頂戴。」
支援施設にも従来の仕事がある。
今まで出来なかった物をまとめてやらなくてはならない。
「何とかしよう。だが、回収した気球が使い物にならないと連絡を受けてな。修理をしてくれる人を呼ばないと。」
「私が直すよ。気球ぐらいなら直せるよ。」
「メカニックもいるのか、人材豊富だな。じゃあ、任せた。」
「その代わり、後でお願いを聞いて欲しいんだけど。」
「わ、分かった。」
何かをたくらんでいるようだ。
一応ながらも納得したジンバルは、カリネと共に部屋を出た。
ここで作業すると言う事はしばらく動かないと言う事だ。
他のメンバーはどうすれば良いのかと、アリアに質問したグレン。
「俺達はどうする?」
「あなた達の武器壊れちゃったんでしょ? 先にお金を貰って買いに言って頂戴。私はコガラキとセシルと一緒に後から合流するわ。」
「分かった、先に行っている。向こうについたらここに連絡をする。」
「えぇ、それでお願い。」
部屋から出たグレンはジンバルに事情を説明した。
用意された契約書にサインを済ませ、今回の依頼にかかったお金と、お肉の買い取りのお金を受け取った。
竜車に戻り仲間に事情を説明すると、ユーリアの運転の下、支援施設を出発。
商人を送った町に向けて出発。
「行ったか、俺達も急がないとな。」
竜車を見送ったジンバルは、自分の仕事を済ませる為に職員の下に向かった。
回収中した気球をカリネに任せ、回収した獣と大竜の解体に行く。
「今日は久し振りに良い肉が食えるぞ。頑張って解体しろ。」
「「「「「おおーーー。」」」」」
職員は豪華な食事のために解体を始めた。
しばらく少ない食事で我慢していたので、皆やる気に溢れている。
「それじゃあ、私達も始めましょうか。」
持ってきていた荷物から、色々取りだし論文制作を始めるアリア。
セシルとコガラキも用事が来るまで待機する。
それぞれが、自分が今出来る役割をこなすために動き出した。
これから来るであろう災害に向けて。
全てを知るからこそやらなくてはいけないのだ。
そんな一同の努力もむなしく厄災は既に動いていた。
「くそっ、撤退だっ。」
「たいちょぉぉっ! 竜車、自走船共々全て破壊されましたっ。」
「何て事だ。ちくしょうっ! 各自散り散りになって逃げろっ! 一人でも生き残ってこの事を知らせるんだっ!」
血塗られた惨劇の舞台の中心で。
口から血が混じったよだれを垂らした大きな怪物が。
次の獲物へ、死の宣告をするかのように吠えた。
二部終わりました。
相も変わらずな無茶苦茶な文章にお付き合い頂いて本当にありがとうございます。
これから頑張って編集します。




