巨大な生き物の進路を変えろ。
「くそっ、ついてくるぞ。」
「速度を落として視界から外れるぞっ。」
なおもついてくる大竜。
速度を落として大竜の後ろについた。
そのまま煙が無くなるも、上手く視線から外せたようだ。
そちらの相手に気を取られていた時だった。
「下がりすぎたわっ。尻尾が。」
竜車に向けて尻尾が迫ってくる。
ただ歩くために動いているだけなのに物凄い勢いだ。
直撃する瞬間、小竜がぶもーーーと叫んだ。
その直後、大竜が尻尾に突っ込んだ。
たったそれだけで、尻尾の勢いは止まった。
「すげー。」
「あれを止めるなんてさすが大竜なんよ。」
あまりの迫力に見とれる一同。
そして、竜車と並走する大竜。
小竜は大竜にぶもーと鳴いた。
ぐるぉーーーと、それよりも大きい鳴き声で大竜が返事をした。
「もしかして、手伝ってくれるの?」
返事はない。
ただ大竜は、アリアの事をじっと見つめる。
どうやら、敵ではないと伝わった様だ。
竜車の前に出た大竜。
そして、巨大な生き物の前足にタックルをした。
離れてもう一度タックル。
「頼もしい味方が出来たわね。」
「あぁ、そうだな。」
グレンもまたその迫力に見とれていた。
そして、気持ちを切り替え仲間に指示を出す。
「俺達も見ているだけでは駄目だ。やるぞっ。」
「でも何をするんよ。」
シルファが聞いた。
先ほど、無理だと悩んでいた所のはずだ。
「カリネ、ドラゴンを引きずりおろしたあれはあるか?」
「あるけど。」
「それを首に引っ掻けて引っ張る。何もしないよりましだろう。」
例の道具を取り出したカリネ。
専用のボウガンを取り出しコガラキに渡した。
「よし、いけるな。アリア、首の横までいってくれ。」
「分かったわ。」
竜車は速度を上げると首の横まで進む。
コガラキがボウガンを撃つとロープが巨大な生き物の首にかかった。
「わっかに向かうっす。」
「任せて。」
竜車を首の下を横切りながら、ロープの先を回収する。
先のわっかをロープにつけるとそのまま首の下を抜けた。
わっかがロープをつたい上がっていくと、そのまま首を締め上げた。
かかった事を確認すると全力で機械をさせた。
しかし、びくともしない。
「これ、意味あるのかよ。」
「分からん。だが、やるんだ。」
なおも首を引っ張る竜車。
大竜も、続けて前足に突っ込んでいる。
それでも、巨大な生き物は進路を変えない。
「くそぅ。無理なのか。」
一同に諦めの雰囲気が漂ってきた。
その直後だった。
『待たせたなっ。』
ジンバルの声が通信機から聞こえてきた。
一同は通信機に注目を集めた。
『こっちだこっち。』
まるでこっちを見ろと言わんばかりの言葉に、一同は竜車の外を見た。
コガラキが見渡すとそれがあった。
「あっちっす。」
先程まで走ってた側の奥からそれは現れた。
巨大な生き物の横を並走するかのように、六つの乗り物が一列で迫ってきた。
その乗り物の上は、設置型の大きなボウガンや大砲が並んでいる。
その兵器一つ一つにギルドの職員がついている。
『どうだ。兵器搭載型の陸上自走船だ。囲まれると使えなかったが、今なら問題なく使えるぞ。』
「そんな物があったのか。」
『一応用意しておいたが、使い道が無くてな。適当にしまっておいたんだ。まさか使う日が来ようとはな。』
陸上自走船は完全に巨大な生き物の横につけた。
一つ一つが一定の距離を開けて進んでいる。
先頭の陸上自走船に乗っているジンバルが指示を出した。
『よく分からんがその大竜は味方だな? じゃあ、そいつに当たらないように胴体に標準を合わせろっ。』
職員たちは、兵器の向きを精一杯に上げた。
その全てが、巨大な生き物に向かれていく。
『用意できましたっ。』
身内の通信機から職員の声が聞こえた。
準備を終えたと確認したジンバルは、巨大な生き物を指差して通信機に叫んだ。
『撃てぇーーー。』
兵器から放たれた物は全て巨大な生き物の胴体に着弾。
そうすると、巨大な生き物は始めて怯んだ。
その瞬間、竜車はロープを強く引っ張り、大竜も前足に力強くタックルをした。
「来るかっ。」
「避けるわっ。」
巨大な生き物は、足で地面を払った。
竜車に迫る足に大竜がタックルして足をずらした。
足は、竜車の前を過ぎていく。
更に尻尾が陸上自走船へと迫る。
『退避ーーーっ。』
隊列を、横三、縦二に変えて詰めた。
そして、速度を上げる事でかわす事が出来た。
もう一度一列に戻る。
ロープの先を見ているグレンがアリアに尋ねた。
「どうだっ。」
「少しずれたわっ。」
竜車の中へとアリアが叫んだ。
少し町から進路がずれた、とはいえそれでも全然駄目だ。
しかも、攻撃を受けた胴体はびくともしていない。
巨大な生き物はまた歩き出した。
『いよおしっ、もう一発。大竜に合わせるぞ。』
大竜は、上げた足が地面から離れるを待っている。
着地する場所へ先回り。
巨大な生き物が浮かせた足が地面につく直前。
『撃てぇーーーっ。』
もう一度、兵器から攻撃が放たれた。
着弾し怯んだ瞬間、竜車と大竜も攻撃を加えた。
『くそぉ、鱗が固すぎる。』
「倒すのは無理そうね。このまま逸らすことに専念しましょう。」
『ちくしょう、ここまでやっても無理なのか。』
悔しがるジンバル。
周りの影響を考えるとここで倒した方が良いのだが。
それでも、我関せずと傷一つかないまま進んでいく巨大な生き物。
竜車の中のメンバーもロープを引っ張り始めた。
「俺達もやるぞぉ。」
グレンの掛け声に合わせ、一同も引っ張り始めた。
もう一度同じ行程がおこなわれる。
結構、道はそれたはずだ。
しかし、まだ険しい顔をしているアリア。
「まだ、もう少しなのよ。もっと続けましょう。」
『仕方ねぇ、任せなっ。』
もう一度同じ行程を繰り返す。
更にもう一度。
もっともっと、何度も繰り返す。
その度、巨大な生き物の進路を変えていく。
「良いわよ。完全に逸れたわ。」
『ここまでか。よし、止まれっ。』
目的は達成した。
深追いしてせっかく変えたルートが戻ったりしたら大変だ。
陸上自走船は、速度を落とし停止した。
「俺達も離脱の準備をするぞ。」
ロープを装置から外した。
そして、速度を落としていく。
首から垂れたままのロープは引きずられていく。
「大竜にもう良いって伝えて頂戴。」
小竜が鳴くと、大竜は攻撃を止めた。
尻尾に巻き込まれない様に離れた一同は巨大な生き物を見送った。
無事、巨大な生き物が町から離れた道を進んでいくのを確認する。
「問題なし。これで大丈夫ね。あの先に町はなかった筈だわ。」
『倒せなかった事が心残りだな。』
「仕方ないわ。今出来る事はちゃんと出来た。それで良いじゃない。」
実際、町が襲われてしまう事よりは全然いいだろう。
離れて行く巨大な生き物を見送る一同。
「それじゃあ、帰りましょう。」
方向を変えた一同は来た道を引き返していく。
草食の大竜も肉食の大竜と同じぐらいです。
でも、パワーは草食の方が上です。




