境界線を抜けて
セシルが目を覚ますとそこには見知らぬ天井があった。
やはりまだ慣れない。
ベッドから起きると、一緒の部屋にいたグレンとコガラキはもういない。
着替えて部屋を出た。
「おいっす。セシル。」
「おはようさん。一緒に食べん?」
いなくなった二人を探していたら。
宿屋の食堂に、エリクとシルファが食事を取っていた。
セシルは、同じ机の空いている椅子に座った。
「リーダーとコガラキさんを見ませんでしたか?」
「リーダーは、この町のギルドハウスに顔を出しにいったんよ。」
「コガラキは竜車に残した鳥の世話だな。」
まだ朝早くなのにもう動いているのだ。
セシルも何かしておきたい物だが何をすればいいか見当たらない。
「俺達はこうして出発の準備を済ましておくしか出来ないんよ。」
「そうだな、セシルも準備は済ませておけよ。」
お言葉に甘えて、食事を注文して食べた。
運動が出来る所は見当たらない。
そして、食堂を出て宛もなく立ちつくす。
(そういえば、ユーリアは小竜の世話をしてるかもしれない。)
昨日、小竜を泊めさせた借り倉庫を目指した。
案の定、籠とタンクを持ったユーリアが小屋を目指す所に遭遇した。
「手伝いますよ。」
「じゃあ、お願い。」
水が入っているタンクを持ったセシル。
その瞬間、かなりの重さが腕にかかる。
タンクを落とさないよう踏ん張って耐えた。
「お、重い。」
「そう?」
そういえば、ユーリアはこのタンクを片手で持っていた。
もう片方で籠を抱えいるので仕方ないがすごいと素直に思った。
華奢に見えて立派なプロのハンターなのだと改めたのだった。
「持てそう?」
「何とかいけます。」
意地でタンクを持ち小屋に向かった。
中に入ると二匹の小竜がぶもーと二人を迎え入れた。
早速、フルーツと水を与えた。
「そういえば、このフルーツと水、買ってきたですか?」
「そう、商人から聞いた。」
商人は、昨日宿屋まで案内してくれた。
この町の事を知り尽くしているのだろう。
小竜の世話をしているとグレンとアリアが入ってきた。
「お疲れさまだ。世話がすんだら早速だが準備に入ってくれ。」
「用事は済んだんですか?」
「あぁ、ルートの確認してきた。移動の途中、獣の生息地との境界線に近づく場所があるからな。」
「守りながらの移動だから、対策を取らないと駄目なのよ。」
アリアは小竜の体調を確認し始めた。
馬車を守りながらの移動中に襲われては対処が難しい。
見つから無いようにするに越したことは無いのだ。
「場合によっては、小竜達に頑張って貰う。まあ、この小竜達なら問題は無いがな。」
「この子達は強いから。」
ユーリアは、小竜達を撫でながら自慢をする。
小竜達は、任せろとばかにりぶもーと返した。
世話が終わり、小竜を小屋から連れ出す。
「じゃあ、チェックアウトしてくるわね。」
アリアは、一人離れ宿屋へと戻っていく。
残された三人で、小竜を竜車まで連れていき繋いだ。
竜車の中で作業をしていたカリネが竜車をチェックし始める。
「もしかしたら衝撃がかかる事が増えるかもだからね。」
常に安全な道を走れるとは限らない。
壊れないようにメンテも必要になるのだ。
すると、隣にいた準備をしている商人達が挨拶に来た。
「今日も、よろしくお願いしますね。」
「あぁ、今日は荒れるかもしれない。準備をしておいてくれ。」
「承知しておりますよ。慣れてますからね。」
商人達はは笑いながら馬車の準備に戻っていく。
竜車の準備は無事終わった。
そして、ハンターチームが全員合流する。
小竜達に挨拶をかわし竜車に乗りこんでいく。
「準備が出来たか? 次の町には寄らない。向こうにつき次第出撃する。」
「準備ならとっくに出来てるんよ。」
自分達の町から出たときに覚悟は決めてある。
今更な事なのだ。
準備を終えた商人達が知らせに来た。
「準備が終りました。我々は何時でも行けますよ。」
「よし、門が混むまでに行くぞ。」
階段を引き上げ、竜車が動き出す。
馬車がその後をついてくる。
門につき手続きを済ませ町を出た。
一行が揃うと、早速出発した。
「今回は常に警戒態勢だ。何時でも戦える準備をしておけ。」
ハンター達は、防具を着込みアイテムポーチと武器も装備した。
セシルも防具を着ていると、カリネがボウガンを手渡して来た。
「これ、セシルのボウガンね。全体にコーティング。弦とバネを強力なのに変えて置いたよ。あと、ポーチを見てみて。」
セシルは、手渡されたポーチから矢を取り出した。
講習で使ったボウガンの矢より長くて重い。
グレンがボウガンを覗きこんだ。
「玉ではないんだな。」
「うん。教えた時苦手そうにそうにしてたからね。上級者向けでもあるし。いづれは両方扱える物を作りたいんだけど。」
カリネは、真剣にボウガンを見ている。
まだ改造が足りないのだろうか。
セシルは、ボウガンの弦を引っ張る。
「堅くないですか。これ?」
「それぐらいしないと飛ばないんだよ。あと、撃った後の反動にも気を付けて。」
威力が上がれば反動も上がるのは仕方がない。
弦を引っ張り矢を設置する練習をする。
本物は危険なので使わない。
それからしばらく立ち、アリアが竜車の後ろに中に声をかけた。
「そろそろね、リーダー。準備を始めて。」
「分かった。コガラキ。」
「はいっす。」
竜車の上に上がったコガラキは、笛を吹いて鳥を飛ばす。
双眼鏡で境界線を覗く。
「異常なし。見える所にはいないっすね。」
「何もいない事はないん?」
「楽観的。すぎる。」
「だな、何も無いなら問題視されていないだろう。引き続き頼んだ。」
コガラキは、境界線の監視を続ける。
セシルも、竜車の中から境界線を見続ける。
「いつ来るか分からない。気を引き締めろよ。」
監視を続けながら境界線を走っていく。
何も起きずに通過出来るかと思ったその時だった。
ぴーひょろろろろ。
森の方からコガラキの鳥の鳴き声が聞こえた。
敵発見の合図だ。
しかし、敵は見当たらない。
「敵は近くにいるらしいっす。でも、見えないっすね。」
「動くか?」
「いや、まだだ。やり過ごせればいいんだが。」
コガラキの報告に、セシルは目を凝らすが何もいない。
幸いにも森の奥の方にいるらしい。
「とりあえず、煙を炊いておくっす。」
「そうした方が良いな。アリア。」
分かっているわと、アリアは小竜に指示を出した。
道をそれ、馬車の列の横につける。
商人達に伝えながらも、コガラキは筒を取り出した。
「煙を焚くっす。気をつけてっす。」
「急いだ方がいいか?」
「そうっすね。お願いするっす。」
竜車と馬車は、速度を上げた。
コガラキは筒から出た紐を引っ張り煙を出す。
筒から出た煙は、境界線からこちらを遮るように流れていく。
しかし、それによりこちら側の視界も遮られてしまう。
コガラキが笛を吹いて指示を変更した。
「後は、あっしの鳥に任せるっすよ。」
鳥からの鳴き声はあれから無い。
そのまま一行は、境界線から無事離れた。
筒から出る煙も使い終え消えていく。
何とかばれずに抜けれたようだ。
念のため、馬車の横を竜車を走らせ続ける。
「離れたか。」
「何とか一安心だな。」
「何も無いのが一番なんよ。」
とはいえ、境界線沿いを走り続けているのだ。
警戒を続けるのに越したことは無い。
このまま走り続けていると目的の町が見えた。
「見えたわよ。」
馬車は町に入る準備を始めた。
グレンは、商人に声をかけた。
「我々は町には入りません。ここで別れましょう。」
「おぉ、そうかい。ここまでありがとうな。」
「いえ、それでは。」
小竜は速度を落とし、馬車が門に入っていくのを見届ける。
無事、門の中に入ったので、竜車の進む方向を変えた。
向かう先は境界線の奥。
獣やモンスターが蔓延る魔境。
「待ったなしだ。突っ切るぞ。」
「準備ならとっくに出来てるんよ。」
セシルを除いたハンター達の顔つきが変わる。
セシルは、竜車内の空気が変わったのを感じて気を引き締めた。
境界線は獣やモンスターが観測された森や山の沿いと基準で決められている。
竜車は、境界線となっている森に近づいていく。
そのまま森の中に入った。
「境界線越えたわ。」
「コガラキ周囲を確認してくれ。」
グレンの指示を受けたコガラキは、笛を吹いて鳥の指示を変えると、周囲を双眼鏡で見渡した。
森の中の整地された道を進んでいく。
目的地に向かう前に寄る場所がある。
グレンは、一同に説明をする。
「まずは、支援施設に向かう。そこで作戦会議を行う。」
「問題はそこまで無事に行けるか。だな。」
「安全第一。」
生息地の状況を確認し、集めた情報を近くの町に送る為の施設。
勿論、討伐した獣やモンスターも回収してくれる。
なので、人が行き来する為の道が作られているのだ。
つまり、その道を進めば支援施設につくのだ。
「周囲、敵はいないっす。」
「よし、そのまま速度を上げろ。」
今は無事でもいつ来るか分からない。
見つかる前に向かうのが良いと判断したのだ。
しばらく進んでいると、目の前に大きな木の杭が並んで立ってあるのが見えた。
「支援施設だ。急ごう。」
段々と近づいていく内に木の杭も段々と大きくなっていく。
良く見ると、砲台の砲身や、外に向けて突き出ている鉄の大きな槍が所々に設置されてある。
獣やモンスターを引き付けないよう整備されているのだ。
支援施設なのだが、まさに要塞と言えるだろう。
鳥の鳴き声がないか確認しつつ支援施設へと向かうのだった。
ボウガンの矢は基本が中ぐらいのペットボトルの長さ。
セシルのボウガンの矢は大きなペットボトルの長さという設定です。
細さは両方鉛筆ぐらい




