同僚との親睦会
グレンとセシルは、部屋の中央あるソファに座るよう案内される。
一同が席に座ったのを確認すると、グレンが話を切り出した。
「それで、何があったんだ?」
「お前ら、コングの王を無事倒したんだろ? こっちと商人のギルドに連絡が行ってな。この町で停滞してた商人がハンターに護衛を求めている所だ。」
思ったよりも早くに話が広まっているようだ。
それで、一斉に動いた結果があれなのだ。
グレンはそれに疑問を持つ。
「この数の人数を? そんなにハンターがいるのか?」
「無理だ。だからひとまず行き先毎に別れてもらっている。本当ならお前達にも手伝って欲しいんだがな。」
「そうしたいんだが、今は忙しいんだ。」
あおう、グレン達は次の目的地への情報を集める必要がある。
準備も必要な為、今は町を離れる訳にはいかないのだ。
「お前達の事情は分かっている。だから、目的地が同じグループを連れてって欲しいんだ。」
「と、言われてもな。そういう事はアリアが目的地を絞り出すまで俺達は動けない。」
そうか、とギルドマスターは項垂れる。
時間が無いのはギルドも同じなのである。
「目的地が分かったら教えてくれ。」
グレンは、分かったと首を縦に振った。
そして、話しはクエストの内容に移る。
「とりあえず、クエストの報告だ。先程、死体を確認したと報告を受けた。お疲れさん。クエストの達成を認可する。」
ギルドマスターは、手に持っていた書類をグレンの前に出す。
クエストの書類だ、ギルドの判子が押してある。
「クエストのクリアの認可により、お前達の星が四に上がる。とうとうこの町にも三より上のチームが生まれたと言うわけだ。おめでとう。」
「ありがとう。だけど俺達はここからが始まりだ。」
グレン達は決して自惚れたりはしない。
コングの王との戦いで、心の奥にしっかりと叩き込んだのだ。
ギルドマスターは、その言葉を全く疑ってはいない。
「そうだな、お前達が行く場所はあのドラゴンが当たり前の様に生息している場所だ。しかも、あんなのが追い出されたとなれば、それ以上がいるも覚悟しておけよ。」
頷くグレン。
勿論、それも分かった上で向かうのだ。
ギルドマスターは、手を叩き場の空気を入れかえセシルを見る。
「さて、小難しいことは一旦やめてセシルの試験の結果を聞こうか。」
「は、はい。」
先程から黙って話しを聞いていたセシルは、急に振られて緊張する。
ハンターになれるかがこの場で決まるのだ。
ギルドマスターは、グレンに話しを聞く。
「セシルの成果を教えてくれないか?」
グレンは作戦に置いての活躍を延べていく。
商人の救助から、偵察、案内、コングの王に放った煙が役にたったこと。
一から最後までやり遂げた事を順番に語っていく。
それを聞いたギルドマスターは、顔に手を当て大笑いする。
「あっはっはっはっ。あのな? 普通のプロでもコングの王のパンチを見たら漏らしながら失神する奴もいるんだぞ。」
「漏らしてはないですが、体の中の物を全てぶちまけそうでした。」
「それでも立ち向かったんだろ? 充分おかしい事してんぞお前。」
随分な言いようである。
しかし、これでも本気でセシルを褒めているのだ。
それだけの相手だったと言う事だ。
「でも、グレンさん達はちゃんと戦ってましたよ。」
「こいつらは、立派に狂い始めてるから気にしなくていいんだ。」
「酷いな。」
もの申すグレン。
だがギルドマスターは悪びれもなく反論する。
「普通のハンターはドラゴンに会ったら真っ先に逃げる。倒して連れてくるのは馬鹿だけだ。」
そう説明をしても、納得がいっていないようだ。
グレンからすれば、あれは村を守るためにやったなので、ありえない事をしたという認識はない。
それはともかくとセシルの試験に話を戻す。
「ここまでやってのけた奴を合格にしない訳にはいかないな。講習の卒業と共に、セシルに試験の合格を言い渡す。」
セシルは、緊張がとけほっと一息つく。
グレンが、セシルの肩を叩きがははと笑った。
ギルドマスターはセシルにも書類を渡す。
「セシルは後でこの書類とギルドカードを受け付けに届けてくれ。」
ハンターの許可証。
セシルをハンターとして認める旨の事が書かれている。
これでセシルも念願のハンターになれるのだ。
ふと、セシルは他の生徒達の事が気になったので質問してみる。
「他の生徒達はどうしたんですか?」
「全員合格したよ。そもそも、ハンターになる試験は薬草摘んだり、あまり攻撃してこないな獣を狩って動きを見る程度の内容だから失敗はまず無いからな。」
セシルは皆が無事合格出来ていた事に安堵する。
少しとはいえ、共にいた皆に愛着があるのだ。
すると、ギルドマスターは立ち上がる。
「そろそろ仕事に戻る。グレン達の手続きは、今度まとめてするから用意しておけよ。」
グレンは、分かったと頷く。
返事を聞いたギルドマスターは、部屋から出た。
残された二人も、立ち上がる。
「セシル、すまないが俺はする事がある。ここで解散するから一人で帰ってくれ。」
「分かりました。」
グレンも書類を持って部屋を出る。
セシルも少し遅れて部屋を出た。
廊下を渡り受け付けに向かうが商人が沢山並んでいる。
「今立て込んでいるので少々お待ちください。」
と、番号札を渡されたので広場の椅子に座って待つ。
商人達は、慌ただしく話しをしているようだ。
しばらくじっと、順番を待っていると急に背後から声をかけられる。
「あんた、講習の時にいた奴だろ?」
「ほんとだ、確かプロのクエストに参加してたんだっけ。」
「そうそう、びっくりしたよな。」
声がした方を見れば、講習の時に声かけてきた仲の良い四人組がそこにいた。
セシルを見て驚いているようだ。
混んでるしもういないだろうとの認識でいたセシルは、四人の登場に驚く。
「クエストって、そこらの肉食でも狩ったんだろ?」
「まぁ、そんなところかな。」
もっとヤバイのを狩ったんだが、周りの目もあるしわざわざ言うことではないだろう。
都合良く解釈してくれたので乗っておく事にする。
「良いなぁ、俺も早く強そうなのを狩りたいなぁ。」
「また言ってるよ。ずっと言ってるだよ。」
「仕方ないだろ。うずうずするんだからよ。」
相変わらず仲の良いやり取りをしている。
始めたばかりのハンター活動に胸が踊るのだろう。
他の仲間も、そういいつつも待ちきれないのか否定はせずに笑っている。
「そうだ、これから食事に行くんだが一緒に行こうぜ。」
「いいね。新人同士の親睦会だね。」
食事と聞いたセシルは、昼を食べてない事に気づく。
しかし、楽しそうに言っているが、セシルにはまだやることがある。
セシルは、手元の書類を見せ手続きがあることを伝えた。
「まだ、ハンターカードの申請があるから。」
「じゃあ、待ってるぜ。特に急いでないからゆっくりでいいからな。」
こうして、四人組との食事が決まった。
色々聞きたいことがあったので丁度良いと、セシルは誘いを受け入れた。
「お待ちどう様でした。次のかた。」
「自分の番だ。行ってくるね。」
セシルは自分の番号札が呼び上げられたのを確認する。
受け付けに向かい書類とカードと借りていた防具を渡す。
受け取った受け付けの人は、防具を他の職員に渡し書類を確認する。
「セシルさんですね、ハンター試験合格おめでとうございます。では、カードをお預かりします。」
受け付けの人は、カードを持つと判子の形をした鉄を押し当て機械で挟んでプレスする。
機械からカードを抜くと熱を帯びているのでしばらく冷やす。
そして、カードを確認するとセシルに手渡した。
「まだ熱を持っているので気を付けてくだいね。」
受け付けの人の言う通り、カードはまだほんのり温かい。
セシルがカード見ていると、受け付けの人はもう一枚のカードを渡す。
「こちらは、武器屋や防具屋で使える引換券となってます。」
グレンが言っていたものだろう。
武器や防具を無料で作ってくれると言うものだ。
引換券を受け取り、カードと一緒に仕舞う。
「手続きは以上となります。良いハンター活動をお祈りしています。」
こうしてセシルは、公式のハンターになることが出来たのだ。
受け付けから離れたセシルは、約束を果たすべく食堂に向かう。
四人組はあっさりと見つかった。
セシルは、食堂の入り口で待っている四人組に終わった事を伝えた。
「待たせてごめん。」
「おっ、済んだか。これであんたもハンターになれたわけだな。」
「じゃあ、行こうか。」
一同は食堂の空いた席を見つけ座る。
店員を呼びそれぞれが自由に注文していく。
セシルは、何時もと同じパンを注文する。
待ってる間に、一同は自己紹介をすることになった。
「そういえば、自己紹介がまだだったよな。俺はナイル。このチームのリーダーだ。」
「俺は、ペータ。リーダーが、暴走したときのつっこみ役だ。」
「その説明で良いの? ちなみに僕は、ラックだよ。ボウガン訓練で一緒だったよね。」
「最後に俺は、シェルだ。」
ムードメーカーのナイルに、兄さん肌のペータに、頭脳派のラックに、冷静さのシェル。
この四人で一つのチーム。
名前を名乗った四人組に、セシルも自己紹介をする。
「自分の名前はセシルです。」
「おう、同じ新人同士よろしくな。」
軽く会釈をする。
お互いがあいさつを済ませた所で食事が届く。
食べながらも話しは続けられる。
内容は、講習の試験の事だ。
「ハンターの試験って意外と簡単だったよな。」
「確かに、もう少し危ない事をすると思った。」
ナイルとペータは、試験の感想を述べる。
確かに、危険な世界であるならばそういった面も経験させるべきだろう。
しかし、事情を知っているズイが否定する。
「ハンターの試験は、ランクを上げるクエストが主ですからね。」
「詳しいんですね。」
「そりゃあ、言い出しっぺのリーダーが何も知らなかったからですよ。だから自分が調べておいたんです。」
セシルの疑問に呆れながら答えるラック。
当の本人は気にする事なく食事を堪能している。
「代わりにやってくれるって信じてたからな。これからも頼んだぞ!」
溜め息をつくラックだが嫌では無さそうだ。
話しは戻る。
「そういえば、他の連中上手い奴ばっかだったよな。」
「そうそう、特にあの姉妹。ぴったりな動きで獲物を翻弄してたよな。」
「別のチームもすごかった。前衛、後衛の役目をしっかり果たしていた。」
「そうだね、僕たちはまだどう戦うかすらまだだもんね。」
自分達のチームが遅れている事は、周知の上なのだ。
だからだろうか、やる気に満ち溢れているのだ。
(自分も負けてられないな。)
意気込む四人組に触発されるセシルであった。
食事も終わり食堂から出る。
食堂出口でお互い解散することになった。
「じゃあな、お互い頑張ろうぜ。」
「はい、頑張りましょう。」
手を振りながらお互い別の道を歩き出す。
寄る場所もなかったのでそのまま拠点へと向かう。
拠点につくと、小竜の世話をしているユーリアと作業部屋にこもっているカリネ以外誰もいない。
(訓練所にでるか。)
体の疲れはあるが、動きたい気分だったので運動を始める。
大物と遭遇した時の恐怖と、ハンターになった事の喜びが混ざり混乱しているので気持ちの整理をつけたいのだ。
(自分は何も出来なかった。)
セシルは、今回のクエストで恐怖と言うものを叩き込まれた。
足が動かなかった自分を情けなく思っている。
それでも今は、ハンターになって嬉しいと思っている、
間違いなく四人組にあったからだろう。
(負けたくないな。)
心からそう思う。
誰にも負けたくないという気持ちが沸いてくる。
その為には強くなる必要がある。
今日見た大物と勇敢に戦うハンター達に並べる様に。
セシルは、日が暮れるまで体を動かし続けた。
ギルドカードの判子は薬品と熱でつける焼印見たいな感じです。




