激闘、コングの王。
竜車を走らせてしばらく、コガラキがアリアに竜車を止めさせる。
目的地が見えたのだ。
竜車が止まると、コガラキとセシルが竜車から降りる。
森を出る際に着けた印の紐が確認しハント組を呼ぶ。
「セシル、準備は良いっすか?」
「大丈夫です。」
偵察組が確認し合ってると、降りてきたハント組も印の場所に来た。
盾を背負ったグレンは全員がいることを確認する。
「準備は良いな? よし、作戦開始だ。」
グレンから合図を受けた偵察組は森に入る。
ハント組もその後を追って森に入る。
等間隔に着けた印を辿りながら奥を目指す。
「周りには子分共はいないな。」
「警戒してるっすけど何ともないっす。」
「今頃、ぐっすりっしょ。とっとと倒して俺も寛ぎたいんよ。」
それでも周りの警戒は解かない。
もちろん、コング達以外の存在にも気を付けている。
人の手が入っていない道を掻い潜って進んでいく。
「セシルは始めての狩りだ、何が合っても戦場に出るなよ。」
「そうそう、試験だからって無茶しなくて良いんだぜ。」
「無理、禁物。」
戦うだけが貢献では無い。
勿論、セシルも認識している。
出来るだけの事をやれば良いのだ。
しかし、目的地に近づくにつれセシルの鼓動は速くなる。
先を目指していると臭いが漂ってくる。
「んぐっ、何だぁこの臭い。」
「これが例の臭いか、警戒しろ。」
この先にコングの王の巣がある。
今度はセシルも共に向かう。
臭いを我慢して更に進むと目的の場所が見えた。
木に隠れ忍び寄る。
グレンは、最も近い所に潜んでいるコガラキに様子を聞いた。
「どうだ?」
「予想通り寛いでるっすね。」
崖の中に切り抜けられた空洞に巣はある。
その中で、コングの王は仰向けに寝てお腹を掻いている。
他の子分も周りを警戒しているも、座り込んで眠そうにあくびをしている。
巣全体が完全にだらけきっている。
「予定通り始めようか。コガラキ、セシル。」
グレンの指示を受けた二人は、腰のボウガンを取り出す。
ポーチの煙と書かれたポケットから玉を取り出しボウガンに装着する。
そして、ボウガンの先を巣に向け構えた。
後は引き金を引くだけ。
しかし、セシルは鼓動の音で集中力がかき乱される。
(当てなくても良いんだ。煙を飛ばすだけ。)
コガラキとセシルは、構え続けたままグレンの指示を待つ。
背後から武器を抜く音が聞こえる。
一同は、戦闘の体勢に入った。
ついにその瞬間が来た。
「撃て。」
そのグレンの一言で二人はボウガンの引き金を引く。
ボウガンから飛び出した玉は、地面に落ち中から煙が溢れでる。
コングの王周辺を煙が埋め尽くす。
「突撃っ。」
合図に、ハント組は巣へと飛び出した。
煙の外にいる子分に素早く近づくと、首を斬りつけ確実に命を奪っていく。
煙の中から他の子分も現れるが、待ち構えていたグレンによって殴られ失神し投げ飛ばされる。
あっという間に数を減らす子分たち。
すると、煙の中から岩が飛んでくる。
ハント組は、かろうじてその岩を回避する。
「あらら、お目覚めなんよ。」
「体勢を整えろ。来るぞ。」
飛びかかるように殴り付けてくる拳を何とかかわしたシルファだが、拳が通った際に出来た風を全身で受けたシルファは冷や汗をかいた。
「やべぇなこりゃ。」
他の拳をよけたメンバーも、肝を冷やしながら攻撃をさける。
あまりの迫力に、攻撃が出来ずにいる。
一撃一撃はむしろ遅いのに、迫力だけでハント組を制しているのだ。
それでも攻めようとするも振りかぶった拳に下がってしまう。
「ちくしょうがっ。」
余裕がなくなり、悪態をつく。
それは、ハント組だけでは無かった。
「セシル行くっすよ。セシル?」
セシルは膝をつき震えている。
初手の飛んできた岩の砕けた破片が直撃した木を激しく揺らしたのだ。
その瞬間、セシルの心は折れたのだ。
「怖いんすね。始めての見た大物があれっすもんね。無理もないっす。」
この世界を舐めていた。
いや、覚悟はしてきたはずだ。
だけど、段階を踏まずにいきなりあんな化け物と相対したのだ。
プロで上級のハンターですら手こずるのだ。
ハントに馴れずに合って良い存在では無い。
「セシルの試練は充分っす。もう合格で間違いないっす。後は、自分達に任せるっす。」
(それじゃあ、駄目なんだ。)
村を助けると決意してハンターになったんだ。
足手まといは嫌なのだ。
頑張って立とうとするも、先程の岩が直撃した自分の姿、あの拳で全身が砕かれる姿が浮かび上がり力が入らない。
歯を食い縛り意識を保つのに必死なのだ。
(やらなくちゃ。)
力を込めるが動けない。
攻めに出れない状況でなお、戦い続けるハント組を見ているだけしかできない。
そのハント組も、攻めようとするも出来ずに下がることを繰り返している。
その時だった。
ぱあぁぁん。
グレンが自分の頬を叩いたのだ。
周囲に響くその音に一同はそちらを向く。
「情けない。」
グレンは、コングの王に向かって歩き出す。
そのグレンをコングの王が見る。
「俺達は上のステージに行くんだろ? なら、こんな雑魚にビビってどうする?」
おそらく、自分にも言っているのだろう。
しかし、仲間への挑発には充分だった。
メンバーの目つきが変わる。
そんなグレンにコングの王は、拳を振りかぶった。
しかしグレンは避けない、盾も構えず両手を前に構えた。
「このへたれどもがっ。」
グレンは、コングの王の拳を受け止める。
勢いを殺せず後ろへ下がるが、足を踏ん張り拳を止める。
受け止めたまま、がははと高らかに笑う。
「どうだ、お前たちはこんなのに怯えてたんだぞ。」
グレンの笑い声に合わせ、他のメンバーも強張った表情を崩す。
エリクは呆れてグレンに突っ込みを入れる。
「だから、それが出来んのはリーダーだけだっ。」
叫ぶように突っ込むと同時に、エリクはコングの王の懐に入り槍斧を胴体に叩きつけた。
駆け出したエリクを見て、動いていていたシルファは足を剣で叩きつける。
「無茶苦茶するねぇ、ほんと自分もつられちゃうんよ。」
足を払われたコングの王は、後ろに体勢を崩し足を宙に投げ出した。
その足をグレンが掴む。
「同意っ。」
コングの王の上空に飛んだユーリアは、両腕に装着した剣を胸に叩き込む。
コングの王はついに後ろに倒れこんだ。
「まだまだっなんよっ。」
立ち上がろうとついたコングの王の腕を叩っ斬る。
それでもと、もう片方の腕の拳が迫るが避ける。
その際も腕を斬りつける。
「ユーリア、来るぞっ。」
コングの王は、ユーリアに殴りかかるも避けられる。
続けて殴るも避けられる。
ユーリアは、拳を避けて避けて避けて斬る。
「見える。」
そう、落ち着いて見れば避けれない攻撃ではない。
隙をついてエリクがコングの王の胴体を槍で突く。
拳を下にかわしユーリアと入れ替わるように接近し槍斧で切り上げる。
最後にもう一度突く。
すると、ハント組に背を向け走り出す。
「逃がさねぇよ。」
ハント組は、コングの王の背中を追いかける。
すると、コングの王は立ち止まると、木を引き抜き向かってくるハント組に叩きつける。
かわすハント組。
三つの影が木から離れる。
コングの王の木を持ち上げようとするも動かない。
「力勝負だっ。」
グレンが木を脇に押さえ踏ん張っている。
しかし、さすがのグレンも本気のコングの王の力には勝てない。
でもそれで良い。
コングの王が力を込めて引っ張った瞬間、グレンは前に木を押し込む。
二つの力を得た木は、コングの王に突き刺さる。
根っこの方が刺さったのでダメージは大きいだろう。
「続けっ。」
「分かってる。」
シルファとユーリアが木に足をかけコングの王の両肩にそれぞれ乗ると首を両側から斬りつける。
首から垂れた血が毛を染める。
ぐおおおぉぉぉぉん。
戦闘を初めてようやく呻き声を出させることが出来たのだ。
コングの王は崖まで走って登り始める。
今度こそ逃げるつもりだ。
崖に手をかけ登っていく。
「させないっすよ。」
その様子をコガラキが見逃さない。
ボウガンを片手で高く構えるとコングの王の先にめがけて撃つ。
崖が煙で埋め尽くされる。
コングの王は手をかける岩場が分からず進めない。
「よくやったんよっ。」
シルファは、後を追いかけるように崖を駆け上がる。
足で突き出た岩を踏み込んだり、時に手で掴んだりして登っていく。
しかし、コングの王は何とか煙から抜け出てしまう。
そのコングにもうひとつのボウガンが向いていた。
「セシルっ。」
「自分だってハンターなんだ。」
セシルは、ハンターの戦いに見惚れてたのだ。
恐怖よりも興奮が勝ち体を動かしてくれる。
(この選択を後悔したくない。)
ボウガンの引き金を引く。
しかし、届かず崖の前に落ちる。
コングの王は、近場の岩を引き剥がしセシルに向かって投げた。
このままではセシルに直撃するコース。
しかし、セシルの前に現れたグレンがその岩を盾で防ぐ。
「すみません。」
「いや、お陰で。」
「間に合った。」「間に合ったっっ。」
シルファが、追い付きそのまま追い越したのだ。
コングの王に、飛びかかると岩にかけてある手に剣を叩き込む。
当然の如く、コングの王は地面にまっ逆さまに落ち地面に叩きつけられる。
もはやその痛みは声にもならない。
無理に立ち上がろうとするも、目の前にある煙から現れたエリクにお腹を突かれる。
「うおりゃあっ!」
そのままエリクは、足を踏ん張り突き上げるとコングの王を崖に押し付ける。
セシルが放った煙玉の煙から急に現れたエリクに対処が出来なかったのだ。
落下のダメージでエリクを払えない。
気力を振り絞り拳を振りかぶるが。
「俺一人にかまけてる場合か?」
崖から落ちてきたシルファが振りかぶった腕に剣を叩き込む。
斬られた腕は力なく落ちる。
更に、煙の中からユーリアが現れ槍を踏みつける。
「槍、借りるよ。」
「おう。」
そのまま、足を踏み切り飛び出すと、コングの王の胴体を何度か斬りつけた。
血がどんどん体を染めていく。
動く方の手で槍を掴まれようとしたが、槍を抜き避ける。
その際、槍斧で胴体を斬るのを忘れない。
「倒れるぞっ。」
「あぶねぇ。」
支えが無くなった事に寄りコングの王の体は前に傾く。
コングの王の前にグレンが現れる。
突きだしていた腕を掴むと、背負い投げで投げ飛ばした。
コングの王はまた地面に叩きつけられる。
「止めは任せたぞっ。」
グレンを除いたハント組はそれぞれ武器を刺していく。
「お前のせいで困ってる奴らがいるんよっ。」
力を込め、思い切り裂くように武器を抜く。
体から血が吹き出すと身体中どころか地面までを血で染める。
コングの王はもう動かない。
ハンターの勝利が決まったのだった。




