奮闘防戦。
大虎との戦いに行く仲間達と別れ、ランプで照らされた道を行くグレンとコガラキ。
月の光によりうっすらと見えるものの、その先に見えるのはずっと樹木ばかりだ。
かわせどかわせどその景色は変わらない。
それでも、真っ直ぐ進めるのはコガラキの鳥につけられた棒の光があるからだ。
あの先にドラゴンがいるのだろうが知るのは鳥だけだ。
「本当に、こっちであってるのかすら分からんな。」
「大丈夫っす。あっしの鳥に任せるっす。」
「だな、今はコガラキの鳥に任せるとしよう。」
すると遠くから獣の雄叫びのような鳴き声が聞こえた。もう片方のチームと戦っている獣の声だろう。
「どうやら向こうは敵と戦闘に入ったようだな。」
「そうらしいっすね。」
「ドラゴンは・・・、どうやら動き出してはいないようだ。」
この声にドラゴンが反応すかもしれないが今はただ前に進むだけだ。
ドラゴンが行動に移す前に接触したいため、出来るだけ速く行きたい。
しかし、速度を上げすぎると周りがざわつくのだ。
グレンが歩いていると、ざざっという音が聞こえる。
「っ! またか。」
先程からこの森に住んでいる草食の獣が、グレン達を見つける度に威嚇するのだ。
こちらに近づくと蹴り飛ばすぞと言わんばかりに前足を上げ軽くばたつかせる。
先程からこれが続くのだ。
「荒れてるっすね。」
「あぁ、こいつらもこの森の変化にストレスを感じてるのだろう。」
「もう少し警戒していくっすよ。」
グレンは頷いて了承すると、もう少し樹木が密になっている場所を歩きだす。
森が荒れるとドラゴンもそれを察する。
あまり刺激を与えるような事をするわけにはいかない。
「もうそろそろっすよ。」
二人が見ていた鳥は、八の字に旋回しだす。
グレンは居場所を示す合図を確認すると、十字の線を引きその上にランプを地面におく。
それを見たコガラキは、笛を吹き鳥を呼び寄せる。
「ようやくだな。」
「言っておくっすけど、今回の目的は足止めっすからね。」
「あぁ、もちろん。自分で言いだした事だからな。ちゃんと守る。」
グレンは、盾を背負い直し歩きだす。
ここからは危険地帯、先程よりもゆっくりとした歩きで進んでいく。
それからしばらくの事だ。
森の中にある巨大な空間、そしてそこに横たわる物体。
体を丸めてピクリともしない。
「寝てるのか、丁度良い。このまま奴を見張ろう。」
目的はあくまで、向こうのチームが大虎を倒しこちらと合流するまでの時間稼ぎ。
無理に戦う必要はないのだ。
と、そう甘く考えながら監視をしていた時だった。
広場を囲う樹木の中から何匹かの大型の草食の獣が現れる。
「まずい。一体何が起こったんだ。」
「恐らく向こうのチームとの戦いから逃れる様に来たんじゃないっすかね。」
向こうの戦いは草食の獣にとって恐怖を抱いてもおかしくはないだろう。
その獣達は何か急いでいるかのように慌ただしく走っている。
その内の二匹がぶつかり合って激しく転倒してしまった。
片方が起き上がったとたん、何をするんじゃと言わんばかりに突進する。
その突進を食らった方も、お前の方こそと仕返しをしてそのまま戦いが始まる。
「やばいっすよ。どうするっすか?」
「言われてもな。はぁ、面倒な事になった。」
他の獣は二人をおいて逃げていく。
もちろん二匹はドラゴンの存在に気づくことはないだろう。
目の前の相手をどうにかするのに必死だ。
「あーあー。止めた方が良くないっすか?」
「そうしたいが、もう遅いだろうな。」
グレン達は、その戦いを冷や汗をかきながら見ている。
どうか起きないようにと必死に祈るが現実は非常である。
片方の突進が見事にクリーンヒットに決まり相手を吹き飛ばす。
受けた相手は後ろにある壁に叩きつける。
「やっちまったっす。」
「あぁ。やっぱりか。」
両手で頭を抱え大慌てのコガラキと、空を仰ぐグレン。
それもそのはず、吹き飛ばされた方がぶつかった壁はもちろんドラゴンだ。
目を覚ましたドラゴンはゆっくりと起き上がる。
吹き飛ばした方は、ドラゴンの存在に気づくと大慌てで逃げ出す。
もちろん吹き飛ばされた方は、ここまでされて逃がすわけもなく追いかけようとするが。
「っ!」 「っ!」
二人はその光景に驚愕する。
ドラゴンが獣を頭突きで吹き飛ばす。
草食の獣は決して小さくないはずだが、ものすごい高さまで到達する。
「すごいパワーだな。」
「リーダー、あれくらってたっすよね。」
「飛ばされてる本人は、どれぐらい飛んだかは分からないものさ。」
二人はその光景を傍観している。
しかし、ずっとそうしているわけにはいかない。
地面に叩きつけられた獣にドラゴンが噛みつき仕留めた時だった。
森がざわめく。あちこちで何かしらの事が起こったのだろう。
その音に、ドラゴンは首を高く上げて周りを見渡す。
「これ以上はほっとけないな。」
「行くんすか?」
「あぁ、サポートを頼む。」
そう言って、グレンは広場に飛び出す。
ドラゴンまで一直線に駆け出すとドラゴンに蹴りを入れる。
体になかなかの一撃を加えたがびくともしない。それどころか相手に見つかる。
しかし、今はそれで良い。
目的は引き付ける事だ。
「おらぁ、かかってこいや。」
グレンは大きな声で叫び自分の存在をアピールする。
当然ドラゴンは反応し、噛みついてくる。
後ろに飛び込みそれをかわす。
「よし、引き付けた。こっからは何処にも行かせんぞ。」
そう言って背中の盾を右腕に装着する。
拳を何回か叩いて気合いを入れると、腕を前にし構えを取る。
ドラゴンは追撃として何度か噛みついてくる。
それに対してグレンは盾で弾きかわしていく。
「ぐぅっ、押される。」
何度か弾くことが出来たが、耐えきれず後ろに体制を崩す。
その隙を見て噛みつかれようとするも何とか横に飛び退いてかわせる事が出来た。
起き上がったグレンはドラゴンが頭を引く姿が目にはいる。
頭突きをする体勢だ。
グレンは頭が迫るのを理解すると、よけるのではなく盾を構えタックルで迎え撃つ。
激しい衝突が響く。頭突きの勢いは殺す事ができるも激しく後退させられる。
とはいえ、先程の獣のように吹き飛ぶのを阻止出来た。
「リーダー、準備出来たっすよ。」
「頼む。」
気づけば広場の周囲は煙で包まれていた。
グレンがドラゴンの意識を引き付けている隙に煙を広場で充満させたのだ。
その煙の中からコガラキがボウガンで狙いを定める。
「まずは一発。」
ボウガンから飛び出た玉がドラゴンの体に命中すると、粘っこい物が広がり付着する。
ドラゴンは、粘っこい物が付着した部分を動かしずらそうにしている。
「カリネによると特性のトリモチ弾、らしいっす。熱を加える必要があるから発動に時間がかかるっすけど。」
「だが、効いているな。」
カリネ特性のトリモチ弾をさらにもう一発打ち込む。
ひとしきり暴れたドラゴンは、弾が飛んできた方に小さな火球を射つ。
しかし、もうそこには誰もいない。
「こっちを無視されると困るなっ!」
グレンはドラゴンの頭を思い切り殴る。
その勢いでドラゴンの頭を仰け反らしてしまう。
負けじと尻尾ではたき飛ばそうと反撃するも、グレンはとっさに前に飛びかわす。
そして、そのまま後ろ足を抱え上げ勢いままに押し倒す。
「さすがっすね。負けてられないっす。」
煙の中を走りながら、倒れたドラゴンにトリモチ弾を射っては構えるを繰り返す。
しだいに、ドラゴンの体がトリモチだらけになる。
その場でもがくも全く動かせない。
「やったか!」
「これで止まれば苦労はしないんすけどねぇ。」
しかし、トリモチ弾には一つ欠点がある。
ドラゴンの口から炎が漏れた。
「危ないっす!」
グレンはとっさにその場から離れドラゴンから遠ざかる。
その直後、放射状に炎を撒き散らすドラゴン。
グレンがいた所も含めた広範囲に炎が広がる。
「解放されやがったか。」
「まぁ、そうなるっすよね。」
ドラゴンが動くと体のトリモチも剥がれだす。
トリモチは熱に弱く、高温にさらせれるたびにどんどん溶けてしまうのだ。
気温の変化に弱いため長くは持たない。
解放された喜びからか勢いよく立ち上がり、グレンに向けて小さい火球を飛ばす。
グレンはその火球を盾で受け止める。
(火球を射つペースが上がっているな。その代わりに弱い。)
盾を構えた所にドラゴンが突っ込んでくる。
それを走ってかわすグレン。
その後ろを捉えたドラゴンは小さい火球を飛ばす。
背後からの明かりに火球だと判断したグレンは振り向き様に火球を盾で叩きつけ防ぐ。
「いてぇなぁ。」
じんじんと痛みが広がる腕をさするグレンに、追加の何度か火球が飛んでくる。
体で盾を支え火球を受け止める。
一発ごと受け止める度に後ろに押されるも耐えきる。
「これ以上は腕が持たないか。」
次の攻撃に対処するためにドラゴンに向き合うグレンだが。
ふと気付けば空が明るいではないか。
すると、空間一杯に空から赤く光る沢山の粒が降ってくる。
「まずい、山の上でみんなを追い込んだ爆発を引き起こしたやつっす。」
あの時はど真ん中で明るい場所にいたため気付きにくかった。
しかし、それを遠くから見ていたコガラキには分かっていたのだ。
ドラゴンは、まさにあのときのように口から炎をほとばしらせる。
「気をつけるっすよ!」
「了解だ!」
それに対してのグレンの動きは迅速だった。
まずポーチから瓶を取りだしその中の物を飲むと、盾を構えドラゴンに突っ込む。
それに対しドラゴンは炎を放つ。
その瞬間、周囲の粉に引火し爆発。
その爆発でさらに引火し、連鎖がおきる事により広場を埋め尽くす爆発が起こる。
「うおぉぉぉっ!」
もちろんグレンも爆発に飲み込まれてしまう。
しかし、グレンは止まらない。
爆発に後退させられるも、無理に進んでドラゴンの顔前に出る。
そのまま、膝で顎を蹴り上げると口が閉じる。
その隙を待っていたグレンは、閉じた口を腋で抱え込み、首に足をかけ引っ張る。
「コガラキィ!」
「はいっす!」
コガラキは、すでに準備を済ませていた。
グレンの一連の動きによって、目の前にさらされたドラゴンの横顔に向かってトリモチ弾を撃ち込む。 すると、顔を覆うようにトリモチがつく。
グレンは、顔を蹴ってトリモチから手を取り出すとドラゴンから距離を離す。
「決まったな。」
顔を塞がれ息が出来ず暴れるドラゴン。
鼻から炎の熱をだす事により鼻からの呼吸を取り戻したが、まだ口についた餅は落とせていない。
だがそれで充分だ。
「これで火球は封じた。」
口が塞がれた事により火を使った攻撃は出来ないであろう。
しかし、新たな問題が出た。
急に口で払う攻撃を仕掛けてきた事により、とっさに盾で防ぐしか無かった。
そのせいで、その瞬間とりもちが盾にくっついてしまう。
「しまった!」
そのまま、振り回される事になるもグレンはとっさに盾から腕を放し助かる事が出来た。
だが盾を失った。
そこにドラゴンは尻尾を叩きつける。
ダメージを覚悟し目を閉じ腕をクロスさせて身を守る。
しかし、なかなか攻撃が来ない。
「待たせたなリーダー。」
目を開けるとエリクが槍で受け止めていた。
潰そうとする尻尾を押し返す。
「生きてるかぁっ!」
「間に合った。」
シルファとユーリアがエリクの横に並び立つ。
援護に駆けつけてくれたのだ。




