ドラゴンの襲撃
『雷、まさかドラゴンが?』
「ドラゴンの確認無し。おかしいわね。」
『本当にそこに巣があるんです?』
「分からないわ。でも、他に隠れれそうな場所が無いのよ。」
周りを見尽くしての決断だ。
それに、音もなく現れたのだ。
この辺りと見るのが普通なのだが。
「やっぱりドラゴンの姿は無いわね。咆哮すらない。」
『でも、雷が鳴った。ならどこかには必ずいるはず・・・。』
いるのは確かなのは間違いない。
でもどこにも見当たらない。
一度の雷から、全く反応がない。
『どこにも見当たらない。』
「隠れれる場所は無し。」
『地上にはどこにもいない、それなら。』
「上。」『上。』
二人して、上を見る。
上空は、雲で覆われている。
ここから分かることは一つ。
「もしかして、この雲の上にドラゴンが?」
『それしか無いですが。』
雲に覆われた空ならこれらの条件を満たす事が出来る。
雲の上なら地上からは見えない。
アリア達が見つけられないのも当然だ。
「なら、この嵐はドラゴンが作ったって事かしら。」
『どうしてこんな物を?』
「ドラゴンがする事。まさか、巣作り?」
『じゃあ、この嵐は。』
「そう、この嵐そのものが巣・・・。まずいっ!」
急にアリアが叫んだ。
受話器の向こうが騒がしくなる。
アリアが受話器から離れたようだ。
しばらくして、アリアが戻ってくる。
『通信機発信に切り替えるわ。』
「もしかして港が?」
『そうよ急ぐわね。』
そう言って、ボタンを押すアリア。
そして、すぐに前座に移動する。
受話器が向こうの声を拾う。
『ドラゴンが出たのか?』
「まだよ。でも、すぐに戦闘準備して。」
『急に起こしたと思ったら何なん?』
「いいから早くっ!」
どうやら受話器から離れたのは、仲間を起こすためらしい。
とにかくアリアは急いでいる。
竜車が動き出す音が聞こえる。
グレンがアリアに聞く。
「アリア、何があった?」
「これから起こるのよっ。」
竜車の向きを変えて港に向かう。
全力で竜車を走らせる。
すると、目の前で雷が落ちる。
「遅かったっ。」
『アリア急いでっ。』
「急いでるわっ。」
港の方で雷が走る。
さらに何度も走る。
相当、暴れているようだ。
グレンがアリアに聞く。
「一体どうなっている。」
「私達は勘違いをしていたわ。」
「勘違い?」
「雨だからドラゴンが来たんじゃない。ドラゴンが雨を起こしていたのよ。全ては、巣を作るために。」
「巣を作る為?」
疑問を持つグレン。
元々、巣を見張っていたはずなのに、巣を作ると言うのだ。
なので、不思議に思うのも仕方ない。
アリアが説明する。
「あいつの巣はこの嵐そのものよ。いつもはただの雲で、時々雨を降らせるだけ。だけど今回は事情が違う。」
『姫様だよね?』
「そうよ。自分の巣に多数の騎士の船と竜車が迫ってくる。この嵐はそれに対する警告でしょうね。」
自分の住みかに不信な物が集まって来るのだ。
それに警戒して、こっちに来るなと知らせているようだ。
しかし、人間にそんな知らせは通じない。
「じゃあ、港に降りたのは。」
「巣を襲いに来たと判断したんでしょう。」
巣を守るために降りたのだろう。
そして、襲いに来た相手と戦っているのだ。
そうこうしている内に、竜車が森を抜ける。
「見えた。戦闘準備っ。」
「分かっている。だが・・・。」
『どうしたの?』
「音がしない。」
港の壁が見えるほど近付いている。
だけど、先ほどの雷の音や戦いの音が聞こえない。
港は静まりかえっている。
『そんなっ、もしかしてっ!』
「まだ分からないわ。騎士が倒したのかも。」
倒したので音が止んだ可能性もある。
しかし、非情にもドラゴンが空に飛び上がる。
それを、コガラキが発見する。
「ドラゴンっす。前見た奴っすよっ。」
「くっ、急ぐわよ。小竜達、お願いね。」
小竜に呼び掛けると、ぶもーと返事をする。
そして、竜車の速度が上がっていく。
そのまま進むと、港の前に着く。
「やっぱり、音がしないな。」
「・・・とにかく入るわね。」
竜車が港の中に入る。
港のほとんどが崩壊しており、崩れた建物だけが残る。
竜車を止めたアリアが港を見渡す。
「酷いわね。」
「あぁ、何一つ残っていない。」
グレンの言う通り、建物は一つとして無事な物がない。
向こうが見えない程度に壁が残っているぐらいだ。
廃墟になった港を、嵐が吹き荒らしている。
ぞれを見て悔しがるアリア。
「もう少し早く気づいていたら。」
「間に合ったかもな。」
もっと早くに動けていたら助けれていたかもしれない。
そうしたら、状況も変わっていただろう。
シルファが、アリアを励ます。
「そんな事言っても何にもならんよ。」
「シルファの言う通りだ。今は、姫様を探そう。」
「・・・。船を停める場所に行きましょう。」
再び竜車が動き出す。
嵐に飛ばされ、魚が散乱している。
竜車の中からエリクが言う。
「沢山散らばってんな。」
「かわいそう。」
「にしても数が多すぎん?」
嵐で飛んだ魚は、道にも溢れている。
その一部を、竜車の車輪が踏んでいく。
シルファの疑問に答えるトーパ。
『大陸中に渡る魚があるからね。多いのは当然だよ。』
「その魚が散らばった訳か。こりゃあ、損害は大きいんよ。」
「そもそも、港として機能が果たせねぇだろ。」
港の惨状を見たエリクが答える。
港の活動施設も壊されているだろう。
この場を港として使うのは、もはや無理だ。
コガラキが、話に割り込む。
「船がある方に竜車みたいなのがあるっす。」
「みたい? 分からないほど壊れているって事なの?」
「そうっすね。見るも無残っすね。」
『アリア、急いでね。』
「分かっているわ。」
崩れた倉庫の横を抜けて進んでいく。
その度に、何か焦げた臭いがしてくる。
グレンがその臭いに気づく。
「なんだ。この臭い。」
「何かが焦げた臭いね。まずいわ。」
倉庫を抜けると、海沿いに進む。
その先に、何かの塊が見える。
その横に焦げた塊が転がっている。
その近くで竜車が止めたアリアが指示する。。
「コガラキは、鳥を飛ばして。ハント組は降りて警戒。」
返事をした一同が取りかかる。
竜車から降りたグレンとアリアがその塊に近づく。
塊の正体に二人が気づく。
「コガラキが言っていた奴か。」
「そうね。間違いないわ。」
それは、壊れた複数の竜車と騎士だ。
竜車も跡形もなく崩れており、周りの兵士も倒れて動かない。
その中の一人をグレンが抱えて揺する。
「大丈夫かっ!」
「うっ・・・うぁ、あ。」
騎士から返事が返ってくる。
死んではいないようだ。
しかし、意識は無い。
さらに揺すって呼び起こす。
「おい、何が合ったっ。」
「ドラ・・・が、姫様・・・逃げ。」
「襲われたのか?」
返事が無い。
その代わりに、力なく頷いた。
もう喋るのも辛いようだ。
騎士がグレンの袖に触れる。
「姫さ・・・、助け。」
「あぁ、分かっている。」
グレンとアリアが目を合わせる。
頷き合うと、騎士から手を離す。
竜車に戻ると、トーパに伝える。
「トーパ。救護を呼んで。」
『分かったよ。』
「お願いね。皆、早く戻って。コガラキの鳥はそのままで。」
一同が急いで竜車に戻る。
直ぐに方向転換して港を出る。
それと同時に雷が放たれる。
「あっちね。無事でいて。」
雷が出た方向は、逆にある森だ。
そこまで、車輪の跡が延びている。
間違いなく、この先に逃げたようだ。
「それで、俺達はどうすれば良い?」
「あなた達は、ドラゴンを引き付けて。私達で、お姫様を助けるわ。」
「いんや。それならリーダーは、救助に行ってくれ。」
割り込んだのはエリクだ。
既に武器を持っている。
グレンが聞く。
「エリク? 良いのか?」
「あぁ、ドラゴンを誘うぐらい俺達で出来るぜ。」
「おうよ。」
「頑張る。」
「そういうこと。だから、リーダーは、姫さんのとこ行くんよ。」
他のメンバーも賛同する。
救護班にも警護が必要だと思ったのだろう。
いつでも行けるよう準備は出来ているようだ。
アリアが頷く。
「なら、任せましょう。リーダーは私達の警護に当たって。」
「任せろ。」
竜車が雷の鳴る場所へ向かう。
樹を抜けた先に、ドラゴンと一人の男性がいるようだ。
どうやら戦っているらしい。
「おっしゃあ、先に行くんよ。」
竜車からシルファが飛び出した。
続いて、エリクとユーリアも続く。
最後にコガラキが、新しい武器を構えて降りる。
「おらよっ。」
ドラゴンに向かって横切り。
次に縦に回って、体を越えるように縦斬り。
そして、翼に跳んで斬りつける。
「なんだ。お前達は。」
「助っ人なんよ。」
着地したシルファが答える。
そして、ドラゴンがそっちを見る。
シルファが下がりながらドラゴンを牽制する。
「おらっ、こっちなんよっ。」
背中を向けて走り出すシルファ。
ドラゴンが咆哮してそれを追う。
その後ろを、エリクとユーリアが追う。
それを援護出来るように、コガラキが隠れて追う。
「何なんだ。一体。」
ドラゴンが遠ざかっていく。
一人残された男性が呟いた。
いきなりの乱入で男性はただ見ている事しか出来ない。
港はほとんど倉庫です。
それ以外は、職員が働く場所と魚を凍らせる場所だけです。
ちなみに全部崩れました。




