ドラゴン再び
案内されたのは、学校の建物の横にある居住用の建物。
生徒達が住むために建てられたものだ。
そこの横にある小屋に、生徒達が相方の生き物達をいれていく。
しかし、ウルフの子の場所がない。
「あの。ウルフはどうすれば。」
「おっと、そうだった。君はトーパ先生が相手をするから待っててくれと、伝言を預かっているんだった。そういうわけで、君はここで待ってなさい。」
「そうなんですか?」
存在が存在なだけに、学校に任せる訳にはいかないのだろう。
トーパがそう言うならそうするまでだ。
セシルが待っている間、生徒達は小屋の使い方を教わっている。
「よーし、相方を入れた者から出てこい。」
相方に一時の別れを告げる生徒達。
それを済ませた者から、小屋から出てくる。
生徒達が、職員の前に集まってくる。
「建物の中は、二つの通路に分かれてて、そこに部屋がある。左を男子、右を女子が使え。ちなみに部屋は共同部屋だ。」
職員につれられ、生徒達が建物の中に入る。
一人残されるセシル。
すると、なぜかアメッサがやって来た。
「セシル君、待たせてごめんね。」
「あれ、トーパさんが来るんじゃ。」
「トーパは急用です。だから、私が代わりに来ました。」
「何かあったんですか?」
「色々とね。さぁ、行きましょう。」
そう言って歩きだすアメッサ。
どんどん建物から離れていく。
その後ろを、セシルとウルフの子がついていく。
「あの。どこに行くんです?」
「君専用の場所だよ。ウルフちゃんを建物の中には入れれないからね。」
向かう先は、建物の隣の敷地。
そこには、大きなテントが沢山張ってあった。
その中の一つの前に止まる。
つまり、そういうことだ。
「もしかして、ここに泊まるんですか?」
「そうですよ。セシル君には、とにかくウルフの子と一緒にいてもらう。って、トーパが言っていました。なので、一緒にいられる場所を用意しました。」
「なるほど。それで、ご飯とかはどこで?」
「それなら大丈夫ですよ。ここはテント型の相方可の宿泊施設なので、生活に必要な物は大抵揃ってますよ。それと、はい。」
アメッサが、懐から封筒を出した。
それを、セシルに渡す。
中の物を出すと、一枚のカードが出てきた。
「何ですか? これ。」
「これがあると、ハンターギルドのカードでお買い物が出来る様になるんですよ。」
「なるほど、逆に言うとこれがないと出来ないんですね。」
「そうですよ。ここのお金は、農業ギルドの管轄ですから。」
ギルド同士で、お金は共有してはいない。
なので、違うギルドのカードで買い物は出来ないのだ。
どうしても必要な場合は、手続きが必要になる。
「それでお金を借りて、後でカードが発行されたギルドに請求みたいな流れです。なので、必要な物は、ここの施設で買ってください。では、私はこれで。」
とにかく、宿みたいな場所で物が買えるという事だ。
言うだけ言ったアメッサが、学校へと戻って行く。
再び取り残される、セシルとウルフの子。
「取り合えず、入ろうか。」
ウルフの子に話しかけると、ワンと返事が返ってきた。
テントの入り口を開けると、布とランプがあった。
ランプは、自由に取り外せるようだ。
「設備は、普通の宿泊施設と同じなのか。」
唯一の違いは、周りが壁じゃない事ぐらい。
ただ寝泊まりするだけの場所。
確認を終えると、ウルフの子と共に再び外へ出る。
「次は、施設の確認に行こうか。」
テントから出て、この場所にある唯一の建物へ向かう。
中に入ると、すぐ目の前に受付がある。
そこから左右に通路が延びている。
周りを見渡すと、受付の職員が話しかけてきた。
「おや、お客さま。例の予約の宿泊客様ですかな? 無事、たどり着けたようで何よりです。」
「ありがとうございます。それでこの場所は?」
「ここはテント宿泊施設の生活をサポートする場所となっております。しかし、食事を作る場所や、シャワー室、といった設備から、雑貨や食事を買う場所もあります。ここを契約した者なら使い放題ですので、ごゆっくりどうぞ。」
「はい。分かりました。えーと、食事に行きたいのですが。」
「それなら左手に行くと良いですよ。」
はいと返事し、左の通路へ。
通路を渡って右にある出口から庭に出る。
そこには、肉を焼く台が並べられている。
それと、受付。
「あの、食事を買いたいのですが。」
「はーい。お一人様と相方様一匹ですね。用意しますのでお待ちを。」
食事を買って、晩ご飯を済ませる事にする。
港があるだけに、魚が豊富だ。
しかも、種類が豊富だ。
ウルフの子用に魚を切る。
「ほれ。」
骨を切り剥がして焼いてから、ウルフの子に食べさせる。
ウルフの子は、美味しそうに食べている。
「じゃあ、自分もっと。」
自分用にも切って焼く。
焼けた頃を見計らってパクリとかぶりつく。
「上手いな。」
ワン。
ウルフの子と共に、至福の時間を過ごした。
そして、そのまま外へ。
何事もなく、テントへ向かう。
「じゃあ、今日はもう寝ようか。」
正直、お腹が膨れて眠いのだ。
ウルフの子も同じなのかあくびをしている。
布を敷いて、ウルフの子と横になる。
「また、明日な。」
ワフッ。
返事が返ってきた、意味は分からなくとも話しかけたと伝わったようだ。
そのまますぐに眠りに入る。
そして、そのまま夜がふける。
一方、トーパは通信機で誰かと話している。
通信先は、グレンチームの竜車。
竜車は、森の中を進む。
「見付からず、か。この辺りにはいないって事だね。」
『えぇ、でももう少し探してみるわ。』
「うーん。いるはずなんだけどねぇ。」
『私も同じ意見よ。報告通り、竜車の中が静電気だらけ。もう少し、粘って見るわね。』
「よろしくね。時間が無いんだよ。」
分かってるわと、返事を返して通信を切るアリア。
もう一度、竜車で森の中を走らせる。
アリアがコガラキに聞く。
「鳥の反応は無い?」
「無いっすね。」
「そもそも本当にいるん?」
「いるわ。絶対に。」
シルファの質問に答えるアリア。
グレンチームは、農業の町の近くの森を走っていた。
既に、一通り見て回ったけど進展はなし。
「時間帯が違うのかしら。」
「夜型って事か。なら、見つからないのも仕方ないが。」
「なら、今は寝てるって事なんよ。」
夜に動き出すなら、今は巣に引きこもっているはずだ。
闇雲に探しても見つかる訳がない。
探すなら、もっと隠れてそうな場所。
しかし、そのような場所を調べてないわけがない。
「巣になりそうな場所は全部探した。なら、逆に巣にならなさそうな場所とか。」
「あの山の事?」
ユーリアが指した方角を見たアリア。
そこには、樹が無い野晒しの山が一つ。
隠れてそうな場所はない。
「まさか。でも、エリアの外の生き物なら外敵が少ないからそうかも。」
「もしそれなら、安心なんよ。」
「それならっすけどね。」
もしそうなら、シルファのいう通り対した生き物はいない。
でも、グレン達が派遣されたということは、そうじゃない可能性もあるからだ。
すると、ポツリと水がシルファのおでこに落ちた。
「雨なんよ。」
「最近多いらしいってトーパが言っていたわ。これ以上の探索は無理ね。」
「これからだって言うのに。仕方無い戻ろう。」
森の中を引き返して外に向かう。
雨が本格的に降ってきた。
すると、空が光った。
次の瞬間。
ズドーン。
と、激しい音が鳴り響いた。
その音は、森一体に響き渡る。
気づいたアリアが竜車を止めた。
「雷。いきなり近くに? いえ、そんな訳無いっ。」
「どうしたんよ。」
「いたわ。」
一同がアリアを見る。
そんなアリアは、先程の山を見た。
先ほどの雷が放たれた場所。
一同がアリアと同じ場所を見た瞬間だった。
びしっびしっびしっ、ズドーン。
と、もう一発。
その雷が放たれた場所に先程はいなかった存在がいた。
大きな翼を広げて、雷を放っている。
「なるほど、そもそもこの辺りにはいなかった訳ね。」
「まさか、こんな所に。いや。」
「いるはずは無い。ってか? まぁ、無理もねぇけどな。」
エリクが、グレンの気持ちを代弁する。
そこにいたのは、生き物の頂点に立つ存在。
モンスターの象徴と呼ばれる代表格。
「ドラゴン。」
翼を羽ばたかせたドラゴンが、大きく鳴いた。
そして、放った三度目の雷が森を照らす。
テントは要するにグランピングです。
記念すべき百話にドラゴンを出すつもりだったので、無事間に合って良かったです。




