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第1課題 WORLD WIDE ANTNEST 第12問


 俺は前歯で自分の右手人差し指を第一関節から噛みちぎる。


 鈍い痛みが全身を駆けめぐる。


 ごろっと軽快な音を立て、口の中に転がり込んできた指の切れ端を、ペッと床へ吐き捨てる。


 ちょっと短くなった俺の人差し指を咥え、その先端を舌で転がし、そのほろ苦さを味わう。


 舌触りで、赤い血液と供に、無数のアリが沸き出ているのがわかる。


 ハハハ。


 どうやら俺はアリに精神のみならず、血脈までも乗っ取られたみたいだ。


 いや、俺の方から乗っ取られようとしている? 


 あれ? 


 今朝起きた時間、6時42分51秒は『虫に恋』ってこと?


 あの瞬間、俺は女王アリ様に恋する運命を定められたの?



 俺は内ポケットから常時携行している護身用サバイバルナイフを取り出し、自分の頸動脈をスパッっと切る。


 夥しい数のアリが、鮮血と供に噴水となって会議室の白いフローリングを赤黒に染めてゆく。


 右手で頸動脈を押さえると、あっという間に掌が血とアリで満たされてゆく。


 芋洗い状態、改め、アリの血洗い状態。


 掌からアリと血がこぼれないように、でも急ぎ足で、呆然と立ち尽くすクライアント達に向かう。


 そして、逃げまどう相手を一人一人捕まえては、次々と口の中に、私の掌にたまった大事な「ワケマエ」をそそぎ込む。


「そんなのアリかよ!」 


 クライアントは発狂し、断末魔の叫びを放ち続ける。


 血混じりの唾を吐きながらアリを吐き出そうとするが、無駄、無駄。


 既に我が同士のアリたちが、クライアントの内蔵を次々に切り裂き始めている。


 いいぞ。頑張れー。


 クライアントの目、鼻、耳からは美しい鮮血とワレワレの同士が溢れ出す。


 真っ白なフローリングをキャンパスに、赤く、黒く染め上げて行く。


「ああああ、きれい、きれいだ。とってもきれいだ!」


 俺は本日2回目の射精をした。



 オツカレサマ。


 モウイイヨ。 


 あれ? 


 この声、さっきもどこかで聞いた気がする。



 会場を埋め尽くす絶叫を余所に、声の在りかを求めて俺は会場を飛び出した。


 コッチニオイデ。


 25メートルぐらいある長い廊下の向こうから、声が聞こえる。


 俺は猛烈な勢いで廊下を駆け抜ける。


 俺は加速した。


 どんどん加速して、廊下の終わりにある直径1メートル四方の窓ガラスに向かって頭からダイブした。

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