43、対面
月影初日の感電死体が円卓に近づく。
細かった目ははち切れんばかりに開き、ピクリとも動く様子がない。
奴の悪運もどうやらここまでだったようだな。
私はそれくらいしか感情はなかった。
仁一郎「容疑者を処刑したにも関わらず、恐ろしい夜はやってくる。
各自、夜のアクションを行ってもらう」
さあ、まだ終わらない。
人狼は生きているし、村人も同じ数にまで減らされていない。
円卓は再度、暗闇に包まれた。
仁一郎「まず占い師の者は、最も怪しいと思う人物を1人選択しろ。
その者が、人間か人狼か表示されるだろう。
あくまで2択で、役職を持っているかまではわからない」
ななし「あ!そうそう。
雛も兄貴もやっつけたことだし……
“今の”月影桜真くんに質問があるんだけど!」
桜真「……」
闇の中、ななしが桜真に。
いや正確には本物の桜真が偽物の桜真へ問いかける。
本来、夜時間に話すことは禁止。
しかし私もこの2人が話す内容が気になってしまう。
仁一郎「続いて、霊能者の者。
お前は先程処刑した人物が、人間か人狼か表示される。これも2択で、役職まではわからない」
黙認という形で、決められたセリフを読む。
ななし「いやーごめんね。
大したことじゃないから、軽く教えてほしいんだけどさ!」
機嫌良く話すななし……しかし……
仁一郎「騎士は、今夜人狼の襲撃から守りたい人物を選択しろ。
守った人物と人狼の襲撃先が被った場合、ガード成功。犠牲者なしだ」
ふっと、その声に怒りが満ちたのを感じた。
ななし「なあ……お前が、母さん殺したんだろ?
違うか?本物のノンフィクション……」
桜真「……」
いつものふざけた口調は、完全に消えた。
仁一郎「そして、人狼の3人は今夜殺したい人物1人を相談して決めなさい。
タッチパネルにタッチ式のキーボードが表示されただろう?
それで仲間といくらでも話し合せばよい」
美雨「……」
星彦「本物のノンフィクション?」
霊時「え、どういうことだ?」
他の者も暗闇の中、口々に話し出した。
ななし「いい機会だ。教えてやるよ」
舞雪「な、何を?」
ななし「ノンフィクションの正体は、月影仁一郎。
作者本人だ」
霊時「え、えええ!」
美雨「……!」
星彦「ま、まじかよ」
舞雪「え、で、でも」
ふ、ここで暴露されるとはな。
まあ、もはや何の問題もないが。
ななし「実子の俺が言うんだ。真実さ。
だから俺は家を出ようとした。知ってしまって馬鹿馬鹿しくなってたからな。
ただ、二代目がいる」
美雨「二代目?」
ななし「ああ、父さんは容疑者として疑われた際に、アリバイ作りのために“もう1人の犯人”にノンフィクションを引き継いだ!つまり“これにも”後継者を作ったんだ」
舞雪「だ、誰?誰なの?」
ななし「恐らく、そいつ。今の月影桜真だ」
桜真「……」
ななし「顔を変えてるせいでどこの誰か知らないがな。
違うか?お前以外、母さんを殺すメリットのある奴なんていないだろ!!」
桜真「……」
ななし「母さんだけは、俺を本当に愛してたんだ!!
小説狂いの父に、賭博狂いの兄貴。
母さんさえいなければ、お前は月影桜真になりかわれるんだからな!!」
桜真「……」
仁一郎「そして、それ以外の村人と狂人の者は、怪しいと思う人物を1人選択しろ。
翌朝、一番怪しいと思われている人物を公表する」
星彦「いや待て。じゃあ何でお前、ノンフィクションって名乗ったんだ?」
ななし「揺さぶりだよ」
舞雪「揺さぶり?」
ななし「ノンフィクションは、細かくも忠実に原作を再現する殺人芸術家でもあるんだ。
そんな神経質な奴は、自分の犯罪を芸術品とすら思っているだろう」
舞雪「……」
ななし「だからこそ、横取りしてやったんだ!
使用人の死体もその演出のひとつだ」
美雨「…………」
ななし「これに苛立つ奴こそ本物のノンフィクション。
反応を確認するために、ノンフィクションをずっと騙り煽っていたんだ」
星彦「な、なるほどな」
舞雪「そ、そういえば!ななしさんが最初にノンフィクションだと名乗った時に“よくも……お前……”って怒ってたね」
桜真「……」
ななし「おい、どうした?無視か?
失礼な奴だ。同じ桜真なのによ」
偽物と指摘された桜真は何も言わない。
桜真「……」
ななし「……なぁ?」
桜真「サク……」
ななし「あ?サク?」
桜真「……っぷ、あははは!あはは!」
偽物の桜真は笑い始める。
桜真「あははははははははははははは!」
手を叩き笑う。無邪気な子供のように……
桜真「あーはっはっは!」
闇の円卓。笑い声だけが反響する。
とても不気味な状況だった。
桜真「はぁ……聞いているよ。
そうだな、はじめまして月影桜真くん。
ずっと会ってみたかったから、本当に嬉しいよ」
まだくすくすと笑っている偽物の方の桜真。
ななし「は?なめてんのかお前。
質問に答えろや」
桜真「……俺が君の母親を殺した件だったな。
ああ、そうだな……」
同じ顔の者の会話。こんな奇妙な状況ほかにないだろう。
桜真「知っての通り、あの事件は複数人の悪意が繋がった事件だ。
雛と君の狂言誘拐が最初。母……いや月影夕子さんは惨殺され、初日が俺という替え玉を依頼した」
ななし「……」
桜真「もう……今更遅いんだよ。
何を言おうが、何もかも。諦めようじゃないか」
ななし「てんめえ……」
話に夢中になっているうちに操作時間が終了していた。
私は少し慌ててゲームを進める。
仁一郎「全員の操作完了を確認した。
今夜の人狼のターゲットが決まった!
その人物とは……」
暗転の円卓は回り始める。
狼の牙が口を開く。
ななし「……母さんを殺して俺の居場所を奪った。
お前だけはぶっ殺してやるからな」
桜真「……」
美雨「……いや、そんなこと言ってる場合じゃないよ」
星彦「……そ、そうだぞ。まだゲームは終わっていない」
霊時「死にたくない死にたくない」
舞雪「……」
円卓は白熱する。
残り6人。長くともあと2日だ。いよいよ終盤。
円卓の回転が止まり始めた。
一族に関わる遺恨。本当の関係性が見えてきたが、まだ早い。
ゲームはまだ終わっていないからだ。
そして、今日の人狼の襲撃先はとても重要だ。
さあ、一体誰が狙われるのか……?
「…………」
そんな中、椅子が引かれる音がした。
「ここまでか」
今日の死亡者の声。私は驚いた。
え?こいつが噛まれるのか!
そこを噛んでしまうと……
自分が人狼だと自白してるようなものだぞ?
4日目、夜のターン
01、月影初日……死亡、4日目処刑
02、柊閏悟………死亡、2日目処刑
03、柊雛…………死亡、1日目襲撃
04、月影桜真
05、片桐兎摘……死亡、3日目襲撃
06、片桐美雨
07、笹川星彦
08、晩花火………死亡、1日目処刑
09、赤村満月……死亡、2日目襲撃
10、月影霊時
11、源夢咲士……死亡、3日目処刑
12、柊舞雪
13、怪盗ななし
残り6人




