38、護衛先
星彦「まじかよ」
星彦は、初日と桜真へ驚嘆の目を向けている。
舞雪「え?……何?本気で騎士って言ってんの?」
舞雪も驚いていた。
まさか対抗が現れるとは思っていなかったという表情。この驚き自体は本物っぽく見える。
美雨「いや、でも、よくカミングアウト出来たね。
私達からすれば情報が増えて助かるけど、騎士なんか人狼に狙われる筆頭だから、誰かわからないままゲームが終わると思ってたからさ」
桜真「その通りだ。
兄貴……本当に感謝している」
初日「……ええねん。
誘拐事件のこと後悔してたから、ちょうどええわ」
桜真「人質交換のことか?」
初日「そう。あの時、ワイは怖くて拒否してもうた。けど、もしあの時勇気さえあればって後悔する日もあったんよ。弟の傷だらけの顔見た時は、特にな。
やからあの時の謝罪もこめて、今度こそ桜真を助けたい。その気持ちもあんねん」
いつもヘラヘラしてる初日は珍しく真剣な表情をしていた。
桜真「……兄貴、ありがとう!
本当に」
桜真が頭を下げる。
心の底から、言っているように聞こえる。
初日「おいおい、なんやそのお礼。
頭上げぇや、どんな状況であろうと大事な弟やんか」
ななし「……」
美雨「あ、あの……空気読めなくて申し訳ないんだけどさ」
初日「はいはい」
美雨「2人とも、これまでの護衛先を教えて」
そう、その追求は大切。
偽物はここでボロを出す可能性があるからだ。
今は4日目の昼。
1日目の夜、2日目の夜、3日目の夜……と3回護衛したはずだからな。
美雨「あ、でも3日目の夜……つまり昨日の護衛先だけは言わなくていいよ。
理由はわかるよね?」
舞雪「連続ガード禁止だからだよね?」
そう、同じ人物を2日続けては守れないという厄介な縛りがある。
初日「つまり昨日の護衛先は、人狼から見た時に今晩絶対殺せる人物となる。
やから昨日の、3日目の夜だけは伏せろってことやな。了解」
その通り。1日目の夜と2日目の夜だけ教えてくれればいい。
舞雪「じゃあ私から言うね。
1日目は、月影桜真。2日目は、月影霊時」
私は思い出す。
1日目の夜に死んだのは柊雛。
2日目の夜に死んだのが赤村満月だった。
美雨「理由も貰えるかな?」
舞雪「うん。私は人狼の気持ちになって、どこを襲いたいか推測して護衛成功を狙ってたの」
美雨「うんうん。いいと思う」
舞雪「1日目、まだ占い師と言う前だった桜真は、既に場をコントロールする場面が多かった。
人狼からすれば、議論の中心にいる桜真は怖いのかなって思い守ってみた」
美雨「確かに私も人狼だったら桜真くん殺すかなって思ってた。でも外れたわけね」
舞雪「2日目、この時点で役職カミングアウトが3人だった。
兎摘さん、夢咲士くん、桜真の3人。星彦さんはまだカミングアウトしてなかった日ね。
これに対して、カミングアウトの数が少ないなと私は思ったの」
美雨「あ、確かにそんなこと言ってたね」
満月の作戦に反対したくだりか。
舞雪「うん、もしかしたらまだどこかに本物の役職が隠れてるのかもと考えた。
そうなると、役職を見ていなかった霊時くんは可能性高いなと思った。だから守った。
けど赤村満月さんが殺された」
霊時「た、確かに俺が役職を見たのは3日目だった」
美雨「そうか、まあまあいい守りかも。
人狼も、役職カミングアウトの数の少なさに疑問を持ったなら、霊時くんは狙われる筆頭だからね」
舞雪「でも結果的には外した……けど、見えてる役職を機械的に守ることはせず、次襲われそうな人を予測して守りにいったの」
言うならば、攻めの護りか。
当時の状況とも一致するし、もちろん連続ガードをしているなどの矛盾もない。舞雪の騎士はまあまあ信憑性が高いのではないか。私はそう評価した。
桜真「ふふ、俺を守ったとはな。
咄嗟の嘘にしてはよく出来ている。いざという時のために考えていたのだな」
初日「それに“人狼の気持ち”っておもろいやん。
人狼の舞雪ちゃんには、それはそれは容易かったやろうに」
舞雪「は?うるさい!
別にあんたらに信じてくれなんて言ってないもん」
美雨「うん、まあわかりました。
じゃあ初日くんは?」
初日「はいよ。
1日目が片桐兎摘で、2日目が源夢咲士や」
そしてこっちは役職護衛ばかりなわけか。
初日「まあだいたいわかるやろ?
1日目は兎摘しか役職おらんかったから守っといた。
ほんで2日目は、その時点で1人しかおらへんかった霊能者の夢咲士を守っといた。
理由は占い結果や、処刑した閏悟の霊能結果をちゃんと教えてもらうこと。
ワイは至ってシンプルやで」
こちらも矛盾なし。
シンプルでわかりやすいが、逆にこんなのは誰でも言えそうな印象だ。
ななし「……」
美雨「んー、なるほど。
どっちも現実味あるなぁ。
正直これじゃあ本物か偽物かの決定打にはならないね」
初日「まあ、せやねんけど……」
桜真「大丈夫だ、兄貴。
兄貴がカミングアウトしてくれた時点で、俺らの勝ちだ」
霊時「え?何で?」
桜真「よく聞いてくれ……今から舞雪を破綻させる」
桜真は姿勢をなおす。静かに詰め落とすように。
舞雪「は?何が?
私が本物だもん!やれるもんならやってみなよ!」
桜真「ならお前の口から聞こう。
舞雪よ。お前から見て兄貴、月影初日は何なんだ?」
舞雪「私の……騎士の偽物に決まってんじゃん」
桜真「はっきり役職で言え」
舞雪「じ、人狼でしょ!」
舞雪が本物なら、騎士を潰そうとした人狼の1人。
間違いではないだろう。
桜真「ならもうひとつ答えろ。
本物の占い師は誰だ?」
舞雪「そ、そんなの兎摘さんに決まってんじゃん!」
桜真から人狼と言われた舞雪は必然そうなる。
桜真「なら、彼女の占い結果は?
お前から見て、確実な占い結果だろ?みんなとおさらいするべきだ」
舞雪「言われなくてもやるよ!」
舞雪は思い出すそぶりもなく、答え始める。
舞雪「兎摘さんの占い結果……
1日目に教えてくれたことは、配役時に人間だと知ってのは柊雛、お姉ちゃんだということ。
2日目に言ってた占い結果が怪盗ななしさんが人間。
そして3日目に貰った占い結果が……」
そこで止まった。
私も気付く。違和感が晴れるように。
桜真「まさか瞬間記憶能力者が忘れたわけじゃないだろう?言えよ、自分の口で」
舞雪「…………」
舞雪の額には汗が。
これは論破されたと言っても過言ではないかもしれない。
桜真「言いたくないなら、代わりに言ってやろう。
片桐兎摘の3日目の占い結果は月影初日、うちの兄貴だ!
結果は人間。みんなも覚えているだろう?」
周りがはっとなる。
そして恐る恐ると、舞雪を見る。
初日「そういうことやで!
ワイは、兎摘の占い結果で人間って言われとるわけや。
舞雪ちゃんが本物の騎士なら、ワイは何になるん?もしくは本物の占い師は誰になるん?是非教えてくれへんか?」
舞雪「……」
舞雪の額の汗がゆっくり落ちる。
何も言えずただ黙っている。
蓄積された情報の重なり、それによる矛盾。
舞雪の騎士という主張は破綻したも同然だった。
4日目、昼のターン
01、月影初日
02、柊閏悟………死亡、2日目処刑
03、柊雛…………死亡、1日目襲撃
04、月影桜真
05、片桐兎摘……死亡、3日目襲撃
06、片桐美雨
07、笹川星彦
08、晩花火………死亡、1日目処刑
09、赤村満月……死亡、2日目襲撃
10、月影霊時
11、源夢咲士……死亡、3日目処刑
12、柊舞雪
13、怪盗ななし
残り7人




