30、ライン戦
桜真「最初に言っておくが昨日のような票絞りは大切だ。
終着点だけ先に決めておこう。
今日の投票先は霊能者のどちらかでいいな?」
星彦「いや何でだよ?」
舞雪「桜真さんと夢咲士くん、兎摘さんと星彦さん。この中に人狼が必ず1匹いる状況だよね?嘘つきが2人いるから。
ならば、この中から処刑すれば25%の確率で人狼が吊れるでしょ?」
美雨「さらに役職の優先度は占い師が上だから。生きている人間の正体を知れる方が有用だからね。だから霊能者のどちらかから吊っていく話」
星彦「……なるほど。そういうことならわかった」
改めて、今日は……
桜真、夢咲士VS兎摘、星彦となる。
夢咲士「では、今一度問おうか。
貴様らモブキャラどもは、3日目にのこのこ出て来た霊能者を真剣に信じているのか?
疑われてどうしようもなくなったから出て来たんだぞ?」
星彦「そこは説明しただろうが!
殺されたくなかったから出なかったのと、結果が同じならいいと思ったんだ」
兎摘「そうよ!このゲームじゃ、むしろ役職引いたらカミングアウトを躊躇うのが普通なんでしょ?
むしろあんたは人狼に殺される可能性を考えなかったの?」
桜真「それはお前が言えた義理ではないだろう。
この中の誰よりもカミングアウトが早かったのは兎摘だ」
兎摘「うるさいわね!ずっと言ってるでしょ!死で私は縛れないって!
もっと言うと私はね、死に近づきたいのよ」
桜真「……どういう意味だ?」
桜真は少し呆れていた。
彼女は自殺サイトを管理している身だ。
実は兎摘自身も自殺を計画している。そのことを私も本人から聞き知っている。
兎摘「変えたいのよ!全てを根本的に!
人が変わる方法は簡単じゃないわ!
死に近づくことで、ようやく人は変われるのよ!」
桜真「……すまんが、俺には難しくて理解出来ないな」
彼女の過去を知ってる私は何となく意味がわかる。
ただもし死んでもいいと思ったなら、1日目にカミングアウト出来た意味にも繋がるか。
支離滅裂だが、少しだけ兎摘の信用が上がった気がした。
桜真「すまん。そういった個性の話より、論理的に証明していいか?」
兎摘「論理的にですって?」
桜真「俺と夢咲士が本物なら、星彦は人狼確定だ。
さらにあともう1人人狼が確定している」
星彦「あ?誰だよ?」
桜真「もう忘れたか?柊閏悟だ。
昨日処刑された閏悟は、夢咲士が人狼だったと報告してくれている」
兎摘「は?だから何なのよ!」
桜真「昨日処刑対象に上げられたのは、星彦、閏悟、舞雪だ。
そう、あの中に人狼は2人いたんだよ」
何人かがはっとなる。
桜真「そこで思い出してほしい。
星彦は、閏悟に入れずに舞雪に入れた。
また閏悟はずっと投票を待ち、最終票を俺に入れてきた」
美雨「そうだったね」
桜真「こう考えてくれないか?
閏悟から見れば、処刑対象の中は人狼仲間の星彦と愛する家族の2択だった。
だからこそ最後まで投票を決め切れず、真の占い師の俺に捨てておくことにした」
これはいい意見だ。昨日の状況と繋がっている。
桜真「星彦と閏悟両方が狼だったから、お互いに入れておらず、あそこまで投票を待った。
また星彦は、雛が噛まれたことにより閏悟は怪しくないと主張し庇っていた。
これが俺達が本物だという状況証拠になる」
星彦「ふん、たまたまだろ?よくもそこまでこじつけられるな」
夢咲士「さらに言ってやろうか?
そちらの言い分だと、俺様か桜真のどちらかは人狼なのだろう?」
兎摘「そうなるわね」
夢咲士「俺様が人狼だと仮定しよう。
俺様は2日目に霊能者だとカミングアウトした。
すると本物の霊能者がどこかで潜伏しているわけだ」
兎摘「どこかで潜伏?」
夢咲士「ああ。1日目に死んだ花火と雛は決選投票で村人を宣言していたからな。
ならば2日目の噛み先が赤村満月というのはありえない!」
兎摘「な、何でありえないのよ!」
夢咲士「いいか?俺様が人狼なら、殺したいのは潜伏霊能者だ。霊能者を乗っ取れば勝てたからな。
そう、スライドした赤村満月だけは絶対に霊能者ではないんだからな!」
言いたいことはわかるが、私にはそこまで響かないな。
そもそも人狼は村人宣言した者から、殺して回っているように見え、それこそ普通に考えたら有り得ない。
それに夢咲士が人狼ではなく狂人の方なら今の理論は通じないからだ。
兎摘「うるさいわね!黙りなさい中二病のくせに!」
ななし「おいおい。
“黙れ”は人狼ゲームでタブーだよ。
相手を説得するのに怒りを使うのは所詮、恐怖政治。そんな人には票は渡さないからね」
兎摘「ぐっ……」
夢咲士「ふん、論破してしまったようだな」
ななし「あ、君も自分で論破とか恥ずかしいから止めた方がいいよ。
主張の評価をするのは常に他者ね。対話を諦められたことを論破とは言わないからさ」
初日「お前はどっちの味方やねん!」
桜真「……ふん、とはいえこちらが優勢のようだな。
偽物が寄り添ったところで矛盾や嘘が倍になるだけ。噛み合わなければ、どんどんボロが出る。
その点、俺らは真実だけ思い出せばいい。差は歴然だな」
夢咲士「その通り。まあ状況が正しいからな。
閏悟が人狼。星彦はその仲間の可能性が最も高い者なんだからな。
課金でもして出直して来い。ザコどもが」
兎摘「……きいい、この……」
星彦「……ならもう1匹は?」
冷静な問いかけと共に目線を上げる星彦。
桜真「……なんだと?」
星彦「いや、俺と閏悟が人狼という言い分は理解した。たまたまだが、疑い合った履歴がないんだ。それは仕方ねえ。
でも人狼は3匹いるんだろう?俺と閏悟と、あと1匹は誰になるのかまで言えよ」
桜真「……」
桜真が言い淀み、円卓を沈黙が覆った。
美雨「んーっと、桜真くん達から見て残りの人狼候補が……
私、舞雪ちゃん、ななしさん、初日さん、霊時くんの5人か」
初日「そこから昨日閏悟に投票したんが、ななし、美雨、舞雪やな」
星彦「そんで霊時は今日桜真が占って、人間だったんだろ?つまり……」
初日「あ……ワイだけや」
本人も気付いたようだ。
星彦「おう、そうだろ?
つまりあいつらの話の続きは、月影初日が人狼という結論になるそうだ。
桜真のことを強く信じ、最も協力してきたあんたがな。
初日……あんた人狼なのか?」
初日「い、いや、人狼やないってワイ」
星彦「なら、少しでもいい。
桜真の言い分がおかしいと思ってくれ。頼むよ」
これも説得力がある。
閏悟、星彦が人狼なら、最後の1匹がすっきりしない。
初心者にしてはいい主張と着眼点だ。
初日「んーいや、でも。
それでもワイは桜真を信じてる気持ちは変わらんなぁ!
そのへんの誰かが身内切りしてるんとちゃうん?」
舞雪、美雨、ななしを指さしながら言った。
初日は、桜真を信頼する主張ばかりだ。
もしかしたら本物の占い師にすり寄る人狼の線もなくはない。
意見を合わせておけば占われにくいからな。
星彦「桜真。なら、次は初日を占えばどうだ?
お前のストーリーだと、お前の実の兄が人狼濃厚なんだ。
明日の占い結果、何て言うのか見ものだがな」
星彦が人狼なら、初日がその仲間の可能性は高い。
だが今、その星彦が初日を売り飛ばすような発言をするだろうか?
星彦と初日が人狼仲間には見えにくいな。
そうなると閏悟に投票した身内切り人狼がいるということか?
正直、桜真、夢咲士側の言い分が揺らいだと感じる。
美雨「あ……やばいことに気づいちゃった」
同時に、ゴーン……ゴーン……と終了の鐘が鳴り始める。
美雨「桜真くん・むーくんの視点だと人狼は1匹死んでるけど、お姉ちゃん・星彦くんの視点だとまだ1匹も死んでいない。もしお姉ちゃん・星彦くんが本物で、星彦くんを吊ってしまったら、明日パワープレイだ」
確かに。
明日は円卓が7人になっているだろう。
その中の3人が人狼でさらに狂人も残っているならば、人狼側は4人。
人狼チームが過半数を超え、人狼側の勝利が確定する。
もしどっちが本物かわからないなら、安全策をとりゲームを続けた方がいい。
つまり……
夢咲士「……」
仁一郎「話し合いは終了だ。
これより一切の会話を禁止する。
日が暮れて、容疑者を処分する時間がやってきた」
3日目、昼のターン
01、月影初日
02、柊閏悟………死亡、2日目処刑
03、柊雛…………死亡、1日目襲撃
04、月影桜真
05、片桐兎摘
06、片桐美雨
07、笹川星彦
08、晩花火………死亡、1日目処刑
09、赤村満月……死亡、2日目襲撃
10、月影霊時
11、源夢咲士
12、柊舞雪
13、怪盗ななし
残り9人




