09、進行
雛「わ、私が?……何で?」
つい聞いてしまう。
私、何かしてしまったのか?
夢咲士「俺様だと?ふん、愚かな」
初日「あと舞雪ちゃんと雛ちゃんね。
まあ女は嘘が上手いって言うからなー」
初日の偏見にトランプで遊んでいたななしが鼻で笑い、ボソッと言う。
ななし「女性でも嘘の下手な子もいれば、男でも上手い奴いるでしょ」
初日「あ?」
ななし「性別でひとくくりにしか出来ないのは、見極める知能が足りないから?」
初日「な、なんやとお前!」
花火「ちょっと!喧嘩しないで。
……桜真、理由を聞いてもいい?」
桜真「ああ、雛は配役後に震えていた。また舞雪は、配役画面を覗く時間が長かった。端的に言えばこれが理由。そして……」
雛「……」
桜真「2人とも人狼なら、雛が“見なさい!役職を!”と舞雪に促した発言にも合点がいく。感覚に近いが、そう感じた」
言葉が出ない。確かにみんなの目線に身震いしてしまったが、実際は違う。
そう、違う……私は人狼ではない。
言葉には出来るが、人狼も同じことを言うだろう。
なんて……なんて反論すればわかってもらえるだろうか。
桜真「あと、夢咲士は……」
閏悟「雛は人狼ではないですよ。
そうでしょう雛?」
兄から、急に反論をいただけた。
桜真「ほう……まだ怒ってるのかと思って心配していたが、第一声がそれとはな」
初日「てか何で妹にまで敬語やねん!」
初日が茶化す。
閏悟「謙虚さを忘れないためです。謙虚さを失えば、人の話など素直に入ってきませんので」
花火「なるほど、大事だよね。
でも何で雛ちゃんは人狼ではないと思ったの?」
夢咲士「まさか貴様が占い師で、人間と知ってるからとでも言うのか?」
美雨「人狼同士の庇い合いも、なくはないよね?」
閏悟「……どちらも違います」
とだけ言い、その先を言わない。
兄は都合の悪いことは聞かない・答えない傾向が人より強い。普段から。
花火「なるほど、感覚に近い理由があるんだね。家族だし。
でもウチらにはわからないから、少しでもポイントを教えてもらえると嬉しいな」
この言い方ならきっと口を開くと察する。
花火を少し見直す。
シスターとして聞き込む能力は本物か。
閏悟「……確かに雛はあまり話していませんが、傾聴の姿勢から人間側だとわかります」
舞雪「は?傾聴?
話なら私も聞いてたけど?みんなの話、一言一句繰り返してあげようか?」
花火「傾聴の姿勢ね。例えばどういったところにそう感じたの?」
閏悟「傾聴とは、ただ聞くこととは違います。
話を遮らず、相手の感情に共感することです」
花火「うんうん」
閏悟「雛は、カミングアウトのタイミングに注意しろという意見に細かく頷いていました。
また、他の人の意見に対して身を乗り出して聴き、それを自分の頭で判断しようと口に手を添える仕草」
雛「……」
閏悟「こういった誰も見ていないかもしれない仕草こそ、取り繕える言葉より真実に近い。
私はそう感じます」
思いのほか強力な意見だった。
みんなからは家族を庇う姿というより、カウンセラーとしての専門意見にすら聞こえたはずだ。
夢咲士「……なるほど、ひとまずいいだろう。
なら舞雪はどうだ?」
兄の細い目が、夢咲士へ向く。
夢咲士「雛のことはわかった。
家族を心配し、庇える情報を探していたのも納得出来る。
だが、舞雪に関して語らなかったのは何故だ?」
微動だにしない兄。
夢咲士「悪いな、俺様は悪魔の代弁者だ。
閏悟……貴様は雛は人間と気付けたが、舞雪はわからなかった。もしくは怪しいと感じた。違うか?」
兄は何も言わない。
今度は、私の方が気づく。
この態度は、図星の時の兄だと。
確信する。
閏悟は、舞雪に何かあると思っている……
まずいな。
理想は閏悟も舞雪も連れて生き残り、金を得ること。
しかし、閏悟の予想が当たっていた場合、舞雪は人狼だ。
そうなれば私は村人なので柊家全員生還はない。
また予想が外れていた場合も、閏悟と舞雪は敵対して票を入れ合うかもしれない。
もともと険悪だし、ありえる話だ。
これはいい展開ではない。
桜真「舞雪……何か言いたいことはあるか?」
舞雪は閏悟を睨む。
舞雪「そういうとこホントむかつく。
私のこと避けて何も言わないとこ」
閏悟「……」
舞雪は唇を震わせ怒る。
こんな場面で兄妹喧嘩はやめてくれ。
その震える唇が開いた時、とんでもないことを言い出した。
舞雪「お姉ちゃん、透視してよ」
雛「……え?」
舞雪「お姉ちゃんが人狼なら嘘の結果言ってくると心配してたんだけど……そうじゃなさそうなんでしょ?
なら、それで終わりじゃん。
視えてるんでしょ?
なら、教えてよ。誰が人狼なの?」
兎摘「透視って、例の?」
花火「あ!そういえば!
ならこんなことしなくていいじゃん!
ウチもやられたけど、あれチートだもんね!
何かしらのヒントにはなるし、是非やってもらおうよ!」
花火はパンと手を合わせ、瞳は期待に満ちている。
まずい展開になった。
雛「み、みんな落ち着いて!透視には時間がかかるの。すぐには出来ないの」
花火「え?さっきは次々してたじゃん!
……あー全員なら、時間かかるのかな?
今からなら何人くらい出来るの?」
花火が時計を見比べ、喜々している。
ど、どうする?わ、私は……
ななし「ぷっ、あははは!!」
何故か、ななしが笑い始めた。
初日「お前、何わろてんねん?」
ななし「いやー失礼。気を悪くしないで。
月影家の人間ってアホばっかだなーって見下しただけなんだ」
初日「十分、気ぃ悪いわ!なめてんのか!」
花火「ねえ、雛ちゃんの透視は本物だよ?
信じられないのはわかるけどさ。ウチなんてさっき……」
ななし「あーごめん。いいよ。透視でも何でも。
僕が言いたいのはね……」
座り直す怪盗。
ななし「何でみんな真面目に、命懸けの人狼ゲームなんてアホなこと進めてんのかなーって」
また人を逆撫でするような発言。
何回意見を変えれば気がすむのか。
星彦「めんどくせぇなお前」
兎摘「あんた!自分からこのゲームに参加しといて何言ってんのよ!」
ななし「いやいや。自分から参加した事実と、命懸けの人狼ゲームをやらない話は、何も矛盾はしないよ?」
けらけらと笑っている。
夢咲士「おい、謎かけはやめろ。恥ずかしい虚言を控え、わかりやすく言え」
初日「お前が言うんかい!」
ななし「じゃあそろそろ教えてあげよっかなー」
ななしが腕を上げ、伸びをした時……
ななし「ねえ?説明の時に気付かなかった?
このゲームって、13人全員が生還出来る方法があることに」
時計は残り15分をさしていた。
1日目、昼のターン
01、月影初日
02、柊閏悟
03、柊雛
04、月影桜真
05、片桐兎摘
06、片桐美雨
07、笹川星彦
08、晩花火
09、赤村満月
10、月影霊時
11、源夢咲士
12、柊舞雪
13、怪盗ななし
全員生存。残り13人




