目覚めて、そして
気が付くと、暗い闇の中にいた
右も左も、上も下もわからない
暗い空間に浮いているような、不思議な感覚だった
…あれ…私、何でこんなところに…
そこまで考えて、猫に手当てして事故に遭ったことを思い出した
「…あーあ。まだ親孝行してなかったのになあ」
ポツリと独り言を漏らす
まだまだ、したいこともやりたいこともあったのに…
「でもまあ、人助け…いや、猫助け?して事故ったんだから…」
…あの猫ちゃん、助かったかな
おうちに無事に帰れたかな
いろんな事が頭を過り、目頭が熱くなった
「…ごめんね、お母さん」
そう呟いた時だった
“ー…!”
「…?」
なんだろう、声がする…
“ー…ぃ、…”
…誰かを、呼んでる…?
その声を聞こうと耳を済ます
“ーーーー…おいっ!”
「えっ!?」
ハッキリと声が聞こえて、私は目を覚ました
「…あれ」
目に飛び込んできたのは、見知らぬ天井
気付けば、私はさっきの暗い空間ではなく、知らない部屋にいた
私の部屋に、どこか似ている気がするけど…
「!」
そこまで考えて、私の顔を覗き込んでいる3人の男女がいることに気付いた
「やっっ…と目が覚めたんですね…!」
瞳を潤ませて私を見つめる女の子
「はっ、やっとお目覚めかよ」
「良かったですね」
その後ろには、2人の男の子がいた
「……えっと」
「なんでしょう?」
私の呟きに反応したのは、ベッド脇に座り込んで、私の顔を覗き込んでいる女の子
綺麗な黒髪と、真ん丸な瞳が印象的だった
「わたし、は…」
「…あ!もしかして、まだ具合が悪いんですか!?」
「えっ!?」
私の呟きに、被せるようにそう言った女の子…
ふいに、部屋の隅の棚にある水晶玉が目に入った
それを目にした瞬間、私の脳に記憶が流れ込んできた
頭がくらくらとしてふらついた私を、慌てて支えてくれた女の子
「…ありがとう、フラウ」
そう、彼女を“わたし”ーアメリア=ペルシェーは知っていた
今頭に流れ込んできたのは、この世界で生を受けた“わたし”の記憶だったのだ
「いえ…」
私が名前を呼ぶと、安心したように微笑みを浮かべるフラウ
「お、おい、大丈夫かよ…」
「まだ安静にしていた方がいいのでは…」
「…いえ、大丈夫よ。アレンとレオンもありがとう」
彼らの名前も呼ぶと二人もほっとした様子で、心配をかけていたことがわかる
混乱でふらふらする頭を手で抑えて、頭の中を整理した
…とりあえず、
猫助け→事故→何かの弾みで転生?転移?→現在
…と、いうことね…
ようやく頭が落ち着いてきたので、とりあえず現状を確認しようと、フラウ達に問いかける
「ところで…私はどうしてベッドに寝ているの?」
「…もしかして、覚えて無いのですか?」
「ええ、ちょっと記憶が混乱しているようなの…」
私がそう苦笑すると、フラウも困ったような笑みを浮かべ、教えてくれた
「アメリア様は、ここのところの無理が祟って倒れたんですよ」
「…ここのところの無理?」
「はい。…アメリア様、冒険に出るからって、召喚を何度も練習してらして…」
「俺達がいくら“休め”って言っても、“もう少し”って全然休もうとしねぇから…」
「僕たち、心配していたんですよ」
そう言って眉を下げる彼ら
「そう…。…ごめんなさいね」
彼らの話で思い出した
“わたし”は、彼らと冒険に出るため、召喚術士としての腕をあげたくて、必死で練習していたのだ
…でも、それで倒れて心配をかけてしまうなんて…
「…本当に大丈夫ですか?アメリア様…」
ふう…とため息をつく私に、心配してくれるフラウ
「ええ、大丈夫よ。心配をかけてごめんなさいね」
そう言ってフラウの頭を撫でると、彼女はへにゃりと困ったように笑った
「…なあ、ところでさ、あいつら…どうすんの?」
「あいつら…って?」
アレンの言葉に疑問符を浮かべると、アレンは後ろを指差した
「ー…!」
そこには、また数人の男女がいた
しかし、アレン達と違うのは、獣の耳や尻尾があったり、不思議な光を纏っていたりするところだった
目覚めて、そして
(彼らは…?)