095.終結
「……あり得ません。まさか不死神Sunring様が敗れるなんて」
おっと、そう言えばキュウベエが居たっけ。
と言うか、よく邪神が消されるまで黙って見ていたね。
本当に邪神を消滅させられるとは思わなかったって事かな?
「うん、見ての通り邪神はもういないよ。復活も出来ないね。完全に消滅させたから」
「……そんなことはありません。不死神Sunring様はまた必ず蘇ります。いえ、私が蘇らせます」
目の前で消滅させたのに、それを否定するキュウベエ。
「ま、キュウベエがどう思おうが自由だけど、これ以上キュウベエの自由にはさせないよ。大人しく捕まってくれるのなら痛い目合わないで済むよ?」
「それこそあり得ませんね。大人しく捕まるなどと。忘れたのですか? 私にはスキルを無効化する【千載一遇】があることを」
そう言いながらキュウベエは【千載一遇】を使う。
あー……うん、確かにさっきまでは効果的だったよ、そのスキル。
「取り敢えず貴方方を排除して、その後は不死神Sunring様を蘇らせる方法を探すことにしますよ」
どうやらキュウベエだけじゃなく、残っていた邪教騎士や邪教信者も僅かな希望を期待して僕たちの排除に掛かろうとしていた。
けど……
「な、何故だ。私の【千載一遇】が効いていないのか!?」
キュウベエの攻撃は僕に届く前に❝回転❞に阻まれ届かない。
「❝回転❞を使う前の【千載一遇】なら効いたかもね。だけど❝回転❞を展開している僕には【千載一遇】は効かないよ」
「馬鹿な。【千載一遇】はスキルを使えなくするだけではなく、効果を発揮しているスキルすら打ち消すスキルです。貴方の言う、【回転】も効果が無くなるはずです」
「まぁ、普通だったらそうだけどね。けど邪神にも言ったように、僕の今の❝回転❞は現象、事象、概念すらも❝回転❞させられるんだ。【千載一遇】の効果が届く前に❝回転❞で阻まれるよ」
「意味が分からないんですけどっ!?」
はい、キュウベエからも「意味が分からないんですけど」が出ました。
「それに忘れていないかな? この場に居るのは僕だけじゃなく、スキルを使わなくても強い人たちが揃っていることに」
そう、スキルが無くても滅茶苦茶強いエーデ師匠たちが。
「お前の手下どもは既に捕縛済みだぜ」
「残るは貴方だけねぇ」
「大人しく捕まった方が身のためです」
だね。邪教騎士と邪教信者が動いた瞬間にエーデ師匠たちも動いたからね。
あっという間だったよ。
勿論、パトルやモコ、アリエスとマックスもスキルが使えないなりにそれに協力している。
「わ、私は諦めません! 諦めなければ夢は叶います! 私が正義なのですから!」
うーん……、拗らせているなぁ。
確かキュウベエは不老不死よりも女神Alice様の理を破り自分の世界を作り上げこの世界の頂点に立とうとしていたんだっけ。
だから自分が正義でこの世界の中心だと思い込んでいる訳だ。
「はいはい、大人しくしましょうねぇ」
エーデ師匠があっという間にキュウベエを鞭で縛り上げる。
思ったよりもキュウベエは抵抗が無くあっさりと捕まった。
なんだかんだ言って、キュウベエも邪神が消されて動揺していたって事だろう。
「よっしゃ! これで邪教事件は解決だな!」
「まだだよ。まだ元邪教村を狙っているジュウザが残っているよ。ジル師匠たちが頑張ってくれているだろうけど、僕たちも参戦しないと」
パトルが事件は終わったと喜んでいたけど、まだ終わてってない。
僕たちを分断させるために策を弄したジュウザが残っている。
現在進行形で元邪教村は魔物に襲われているはずだ。
「もしかして、ジル師匠ってジルベールの事かしらぁ?」
「あれ? もしかしてエーデ師匠はジル師匠の事を知っているのですか?」
「やっぱりぃ。まぁ、知り合いではあるわねぇ。何せ元は魔王軍と勇者パーティーとで戦いあった仲だからぁ」
ああ、そう言えばそうだっけ。
ジル師匠は元魔王軍で、ジル師匠は勇者パーティーの一員。
よく考えれば顔見知りなのは必然だ。
「ああ、ジルの嬢ちゃんも今回の件に加わっているのか。と言うかジュウザの奴、まだくたばってなかったのか。いいぜ、今度こそ引導を渡してやる」
そう言えば、ジョーカーおじさんは10年前の邪神大戦に関わっていたっけ。
その時からの因縁なんだろうなぁ。
「よし、さっさとこの場をまとめてジルの嬢ちゃん達の応援に行くぞ。マックス、行けるな?」
『うん、大丈夫だよ』
ジョーカーおじさんとマックスは時空波紋を生み出し、元邪教村への道を開く。
「あ、僕も元邪教村へ連れていくことが出来るよ。えっと、神理界天・回転穿孔」
僕が回転を使って時空間に穴をあけ、元邪教村へと続く道を作る。
それを見てジョーカーおじさんやパトルたちはポカンとしていた。
「坊主……、お前最早何でもありだな。なんかジルの嬢ちゃんみたいになってきたな。ここは流石ジルの嬢ちゃんの弟子だって言うべきか?」
それ誉め言葉だよ、ジョーカーおじさん。
僕たちは縛り上げたキュウベエたちをマックスの背に乗せ、時空波紋と回転穿孔を使って元邪教村へと急行した。
まぁ、結論から言えば元邪教村での事件はすでに解決していたけど。
S級パーティーとジュウザ&魔物軍団は当然S級パーティーの勝利で終わった。
人的被害も最小限に、大量の魔物を倒すと言う結果で。
ただ、ジュウザは取り逃がしてしまったらしい。
伊達に10年以上も邪教の教祖をしている訳じゃないみたい。
何はともあれ、これで邪神に係わる事件は終わった。
エーデ師匠とジル師匠は久々の再会を果たし、邪教事件でかかわった一同は元邪教村で戦勝を祝い、宴を開いた。
今はとりあえず邪教を倒したことを喜ぼうと言う事で。
事件の細かい後始末は後で考えようとばかりに大いに宴は賑わった。
そして邪教事件から数日後―――
「この度の事件、命を救ってもらい礼を言う」
そう言って頭を下げるヴァリアブル王子様。
ヴァリアブル王子様の左右にはヴィスクドール王女様とロクウェル様が座っている。
「いえ、当然のことをしたまでです」
「いや、ヴォルは我が国の貴族でもなければ騎士でもない。ましてや民ですらない。命を懸ける理由はなかった。だがヴォルは危険を顧みず邪教信者どころか邪神とまで戦った。ヴォルの協力が無ければ今頃俺は……。改めて礼を言う、ありがとう」
ここまで畏まって礼を言われるとどう反応していいか困るよ。
「それで、今回の申し出だが……、いいのか?」
「はい、もう決めたことですから。まぁ、ヴァリアブル王子様にはスキルを無駄にしてしまったり、ロクウェル様には申し訳ないのですが」
僕は隣に座るパトルに目線で頷いて、ヴァリアブル王子様に答える。
「……分かった。ヴォルには命を助けてもらった恩がある。受け入れよう。ロクウェルもいいな?」
隣に座っているロクウェル様は少し俯いた後、顔を上げてはっきりと答える。
「その申し出受け入れます。ですが、私は諦めたわけではありませんから」
「はっ! 大人しく引き下がっておいた方が身のためだと思うぞ? 無駄に時間を使うよりはな」
パトル、煽るんじゃありません。
と言うか、素直に受け入れてもらえて良かったよ。
貴族様――引いては王族相手にとんでもないことを言ったんだから、場合によっては罰せられても文句は言えないんだよね。
まぁこれで僕たちはやっと通常の冒険者活動に精を出すことが出来る。




