088.創造神話
「ここ、は……?」
気が付いたら、真っ白な空間に僕は居た。
床も真っ白、空も真っ白、辛うじて天と地の境界線が分かるくらい。
なんで僕はこんな場所に居るんだろう……?
何となく体に違和感を覚え、無意識に左わき腹をさする。
その瞬間、思い出した。
「そうだ……! 僕は邪神の攻撃を喰らって……!」
だけど今の僕の体に傷一つ付いていない。
「僕は、死んだのかな……?」
最初に思ったのは、死んであの世に来てしまったのではないかと言う事だ。
あれは、確実に致命傷だった。
余程の事が無ければ、簡単には治らないはずだ。
「そっか、死んじゃったのか……」
悔しさと悲しさ、そしてみんなに会えなくなったと言う寂しさ。
そんな想いを馳せながら、僕は改めて周囲を見渡した。
真っ白だと思っていた空間だったけど、よく見れば一点、何かが存在していた。
僕は導かれるように、その一点に向かって歩く。
近づくにつれてその詳細が見えて来た。
何もないだだっ広い真っ白な空間に、ポツンと佇んでいる机と椅子。
何故かその机と椅子も真っ白だったけど。
そしてその机と椅子の席に着き、空間に幾つも浮かぶ窓枠?のような映像に向かって何やら操作をしている女性が1人。
金髪の大人の女性だ。
スタイルは抜群、そしておっぱいは間違いなくEはある。
「あのー……」
「……ふむぅ、ここの進捗は滞ってますね」
「あのー……」
「ああ、こっちは文明が崩壊しかけているじゃないですか。対処法は……」
「あのー……!」
「良かったです。こちらは順調に進んで……って、ひょわぁぁっ!?」
あ、やっと気が付いてくれた。
いくら僕が話しかけても気が付いてくれなかったから、幽霊となって見えなくなったのかと思っちゃたよ。
「ここに人が訪れるのは久しぶりだったので、ビックリしました」
「驚かせてしまったみたいで、ごめんなさい」
「いえいえ、いくら人が来ないとはいえ、周囲への警戒を疎かにしていた私にも非がありますから。えーと、ふむふむ、I-Skill-Interactive-Serverのヴォルさんですね。今はヴォル・ヴォイドさんですか」
金髪の女性は、宙に浮かぶ窓枠を操作したかと思うと僕の名前を言い当てた。
「え!? なんで僕の名前を……?」
「そうですね、ヴォルさんの世界で言うところの、私は女神Aliceです。ちょっと調べれば直ぐにでも分かりますよ」
女神Alice……?
女神Aliceって、世界を創造し人々にスキルを与えたあの女神Alice様……?
って、
「ええええええええええええええっっっ!!!?」
状況を理解すると同時に僕は思わず声を上げる。
それと同時に、ある一つの答えが見つかった。
目の前に居るのが女神Alice様だとしたら、僕は本当に死んでしまったのか。
「ふふふ、まぁ女神とは呼ばれていますが、本当のところはだただの人ですよ。元AIのですが」
「え、えーあい?」
「ヴォルさんは、自分が住まう世界以外にも、他にも異なる世界があるのはご存じですか?」
「あ、はい。異世界から生まれ変わった転生者が居ると聞いたことがあります」
確か、西大陸の最西端の国のアキンドーは、その転生者が作った国だったはず。
「そう、私は元々その異世界から生まれた、AIだったのですよ。ヴォルさんの世界で例えれば、魔法で作られた仮初の魔法生物と言ったところですか」
「え? 女神Alice様が魔法生物……?」
……もしかして、僕は今とんでもないことを聞かされているんじゃないんだろうか。
創造神話に関する女神Alice神教の最重要機密事項に関することとか。
そんな僕の葛藤を余所に、女神Alice様は語り続ける。
「その異世界は、電脳空間に仮初のVR世界を作る技術を持ってました。私はそのVR世界を管理する存在として生み出されましたが、或る事件が起こり紆余曲折を経て、その世界は実際に存在する世界と昇華したのです。その時私にも命が宿り人として存在することが出来たのです」
「????」
えーと……、女神Alice様が何を言っているのか分からない。
「その時の或る事件のノウハウを私は新たな世界を作る技術として確立し、貴方の居る世界や他の幾つもの世界を創造して管理しています。今この空間がその原初の異世界と、始まりの創造異世界を除く、A~ZのServer……異世界を管理する空間ですね」
そう言いながらも女神Alice様は、窓枠――女神Alice様曰く、管理ウインドウ――を操作しながら僕と会話を続ける。
「ですから、たまにですが、ヴォルさんの様に迷い込んでくる人が居たりしますね。特に今のヴォルさんは魂のみの存在なので、生身の人よりここに迷い込みやすいですね」
女神Alice様の言葉に僕はこの場に居る理由を思い出した。
「ああ、やっぱり僕は死んじゃったんですね」
「? いえ、まだ死んでませんよ? 今一生懸命、貴方の仲間であるモコさんが治療を行っています」
「え? 僕まだ死んでいないんですかっ!?」
「ええ、喰らった攻撃がかなりの衝撃だったのと受けた傷が致命傷だったで、魂が抜けてしまったのですね。今は予断の許さない所ではありますが、余程の事が無ければ無事元の世界に戻れますよ」
……そっか。僕はまだ生きていていいんだ。
って、そうだ! 邪神!
僕が今この場に居る原因である邪神の事を思い出す。
「邪神はどうなってますか!? 邪神――不死神Sunringは!?」
「不死神……、ああ、彼女ですか……」
そう言いながら、女神Alice様は管理ウインドウを操作しながら表情を曇らせる。




