085.VS邪神
とは言え、邪神を倒し、依り代となっているヴァリアブル王子様を助け出すと決めたものの、スキルが封じられている状態だとかなり厳しい状況でもある。
「せめてスキルが使えれば、もう少し楽が出来るんだけどね」
「はっ、スキルが無くたってこのメンバーだと邪神相手でも楽ショーだぜ!」
僕がスキルが使えずこの戦いに不安を感じているんだけど、パトルはそんなのは関係ないとばかりに前向きな姿勢だ。
こういう時のパトルは実に頼もしいよ。
だけど、僕たちの会話を聞いていた邪神は、強者の余裕と言うか、神の威光を示すためなのか、思いがけないことを言ってきた。
「ほぅ? スキルがあれば妾に勝てるとでも?」
「ああ、そこのキュウベエがスキルを封じてなければ、邪神だか何だか知らねぇが、てめぇなんんかイチコロだぜ」
「くくく、神の威を知らぬ愚か者の言う事は面白いのぅ。その鼻をへし折って助命を請う姿を見たくなった。良かろう、ならばスキルを思う存分に使うがよい。その上で妾がお主等を地べたに這いつくばらせてやろう」
あれ? もしかしてスキル解禁?
絶対強者ゆえの余裕なんだろうな。
そう言う奴に限って足元を掬われるんだよ。
「キュウベエとか言うたな。お主のスキル封じを解除するがよい」
「あ、いえ、しかし……」
「なんじゃ? 妾の言う事が聞けぬと申すのか?」
「いえ! ただいま直ぐにスキル封じ【千載一遇】いたします」
ちょっとイラっとした感じで邪神が睨むと、キュウベエは慌て身を震わせながら【千載一遇】を解除する。
うん、感じがいつものに戻ったのが分かる。
「これで言い訳は出来まい。さぁ、かかってくるがよい。完膚なきまで叩き潰してやろう。ああ、キュウベエ、お主は下がっておるがよい。こ奴らの相手は妾だけで行う」
邪神が手のひらを上に向けてクイクイと挑発しながら手招きをする。
キュウベエは素直に後ろに下がっていく。
「はっ、上等だ! 返り討ちにしてやるぜ!」
パトルが魔剣・炎武帝と大蛇剣・蟒蛇を両手に持ち、【大剣二刀流】のスキルで邪神へと斬りかかる。
ああもう。こういう時は連携を取ってかかった方がいいのに、パトルはいつもの通り単騎で突っ込んでいく。
まぁ、尤もエーデ師匠と『風雷姫』、ジョーカーおじさんとの連携は無きに等しいから、パトルが先制で邪神の様子見をするのは理にはかなっている。
「おらぁ! 【十字斬り】!」
【大剣二刀流】で【十字斬り】を放つパトルに対し、邪神は地面に手をついて2本の大剣を作り上げる。
そしてその大剣をパトルと同じように交差させて十字斬りを放つ。
「ちぃっ! ならばこれならどうだ! 【旋風大斬・六連】!」
2本の魔剣を広げ、回転しながら6つの斬撃を放つパトル。
だけど斬撃が邪神に届く直前、透明な板状のようなものに阻まれた。
「あれは、【無魔法】の【シールド】ですね」
「どうやら邪神の名は伊達ではないみたいです。武術・魔法供に使えると見ていいでしょう」
モコが邪神の魔法の使用を見抜き、『風雷姫』がそれを分析して邪神のスペックを大よそ判断する。
「さて、あのハーフドワーフの嬢ちゃんにばかりいい格好させるわけにもいかないな。ボクたちも行こうか」
ジョーカーおじさんは両腕に波紋を纏わせ、邪神の背後に回る。
「そうねぇ。師匠が弟子とその仲間に後れを取る訳にはいかないわねぇ」
エーデ師匠は鞭を体の周りを回らせるように回転させながら威力を高め、邪神へと放つ。
「それでは、私は援護に回りましょう。隙を見て大技を放つから巻き込まれないでくださいね」
『風雷姫』は【風魔法】で僕たちの動きをサポートし、【雷魔法】で邪神の動きを制限させて僕たちの攻撃を通りやすくする。
まさかS級冒険者が援護に回るとは。
だけどこの援護は有難いよ。
勿論、ただ援護に回っているだけじゃない。
そして隙を見ては【サンダージャベリン】や【サイクロンバースト】などの大技の魔法を放つ。
この3人の攻撃だけでも邪神は防御一辺で手一杯の様に見えた。
うん、これならいける!
僕たちも負けてられない。
モコは【ものまね師】を駆使して、如意金剛・千変万化を様々な武器に変化させながらスキルを放ち、同時に魔法スキルでの攻撃も放つ。
僕も【回転】スキルで一気に邪神の懐に入り、『ギジ・スラッシュ』を放つものの、残念ながらあと一歩のとこで【シールド】の魔法で防がれてしまう。
「おらおらどうしたどうした!? あたし達の攻撃に手も足も出ないか!? 悪いがこのまま押し切らせてもらうぜ!」
パトルは【大剣二刀流】のほかに、魔剣の能力を解放しながら邪神を攻撃する。
僕たちの波状攻撃の前に、邪神はさぞ苦悶の表情をしているかと思えば、その逆だった。
余裕で僕たちの攻撃を捌きながらも微笑んでいたのだ。
「マズいわねぇ」
「ですね。私たちのこの攻撃で押し切れないとは」
押していると思っていたのは僕たちぐらいで、エーデ師匠と『風雷姫』は状況が芳しくないと表情を曇らせていた。
「おいおい、前と随分戦い方が違うじゃねぇか。前はこんなに多彩な技を持っていなかったはずだぜ」
「ジョーカーおじさん、どういう事?」
「十年前の邪神が顕現した時は、もっと大味な攻撃しかしてこなかったんだよ。だけど今回は技や魔法に多様性がみられる。それがボクたちの攻撃を凌いでいるんだ」
……確かに言われて見れば、僕たちのこれだけの攻撃をもってしても凌がれているのはあり得ない事だ。
特に、スキルを使ってないとはいえ、エーデ師匠とジョーカーおじさんの攻撃はS級冒険者に匹敵するはず。
そして援護に回っているとは言え、S級冒険者の『風雷姫』の攻撃も凌がれているのもあり得ないと言えばあり得ない。
「ふふふ、漸く妾の凄さを理解してきたようだのぅ。そろそろ攻撃をするとしようか」
そう言えば、邪神は防御だけでまともな攻撃は未だしてない。
防御だけであれほどとなれば、攻撃はどれほどなのか。
僕たちは邪神の攻撃に備える。




