079.最果ての地
僕とパトルはバイクに乗って、モコとアリエスはマックスの背中に乗って東の祭壇へと向かう。
道案内兼戦力を兼ねて、ジル師匠はマックスを付けてくれた。
僕としては、万を超える兵が襲ってくる元邪教の村には、広範囲攻撃が得意なアリエスを置いていきたかったけど、断られてしまった。
『心配してくれるのは嬉しいけど、問題ないわよー。ヴォル少年―、私のスキルはなにー?』
『えっと、【ストーンコレクター】ですけど』
『そしてこのきゅーちゃんのスキルはー?』
そう言いながら胸のペンダントに嵌った銀の聖石を見せる。
『……あ』
そうだった。
ジル師匠のペンダントのきゅーちゃんさんは、【森羅万象】と言うすべてのスキルを使えるスキルだった。
つまり、アリエスの【極大魔力】も使える上、他の魔法スキルも使い放題なのだ。
僕が心配するのはおせっかいだったと言う訳だ。
寧ろ、僕たちの方が心配だと、神狼フェンリルのマックスを付けてくれたと。
『あとは間に合うか分からないけど、助っ人も用意しているから大丈夫だと思うよー』
おまけに誰か他の助っ人も頼んでくれているみたい。
余程僕たちが信頼していないのか、それともジュウザの策を侮らないためなのか。
……あるいはその両方か。
ともあれ、そうして東へ進む事半日ほどの場所に、目的地である祭壇が見えた。
『あそこに祭壇があるよ。ただ、見ての通り結界が敷いてあって、入られない状態だね』
「マックスの力なら結界もぶっ壊して祭壇を片付けられたんじゃねぇのか?」
確かに。
神狼フェンリルの力なら、偵察なんかしなくても簡単に制圧できそうなものだけど。
『ダメだね。ここは魔脈が通っていて、あの結界内は魔力で溢れているから、正規の手続きを踏まないで下手に壊せばこの大陸の1/3は吹っ飛ぶよ?』
マックスの言葉に僕たちはギョッとする。
「と言う事は、キュウベエの到着待ちか」
仕方なしに状況が待ちに入ったところで、パトルから提案が出た。
「その前に、戦力を減らすこと出来ねぇか?」
『これ以上はやめた方がいいよ』
マックス曰く、もう既にちょっかいを掛けていて人数をかなり減らしていると。
結界を張られた祭壇を観察したところ、結界の維持に3人、儀式の準備に出入りしている人が3人と計6人の邪教信者が動いていた。
マックスがちょっかいを掛ける前は20人も居たみたいだけど、今は最低限の人数で祭壇と結界を維持しているっぽい。
「待っているだけってのも、落ち着かねぇな」
「僕たちはジル師匠の【テレポート】やバイクとマックスの移動でかなり時間を短縮しているから、キュウベエたちが来るのは暫くかかるかもね」
そう考えると、元邪教の村に残ってジル師匠たちと一緒にジュウザの侵攻を防いでも良かったかも。
だけど、そんな僕の浅はかな考えを笑うかのように、翌日キュウベエたちが現れたのだ。
「どうやら吾輩らの予測は覆らされたみたいだな。邪教徒キュウベエが現れたぞ」
見張りをしていたアリエスからの報告に、僕たちは慌ててそちらの方を見る。
軍馬2匹に引かれた馬車に、それを守る様に前後左右に騎馬が寄り添う。
結界前に馬車は止まり、中からキュウベエと信者が1人、最後にヴァリアブル王子様が出て来た。
「おいおい、予想よりもだいぶ早いじゃねぇか。どうなってんだ?」
「空間移動の魔道具なんて普通は無いし、考えられるとしたら時空波紋? だけどあれはコントロール出来るはずがないし」
パトルの言う通り本当にどうなっているんだろう。
考えられるのは幾つかあるけどどれも現実的じゃない。
後はあの軍馬や馬車が移動速度を上げる魔道具かなんかなのかな?
……普通の軍馬と馬車に見えるね。
『くんくん、時空系の魔力と魔脈の匂いを感じるね。多分だけど、魔脈を使った瞬間移動を使ったんじゃないのかな?』
マックスの言葉に僕はそんな移動方法もあるのかと納得してしまった。
「それよりも、連れてこられたのはヴァリアブル殿下だけで、ナナ様は居ないみたいです」
モコの言う通り、キュウベエに連れられてきたのはヴァリアブル王子様だけで、ナナ様の姿は見えない。
まだ馬車の中に居る可能性もあるけど、おそらく居ないだろう。
馬車の中には人の気配はなく、信者1人と護衛と思しき4人の邪教騎士はキュウベエとヴァリアブル王子様を囲っていた。
目の前で人質を主張するよりも、見えない所で人質を使って脅す。
確かにこれなら人質が奪われて逆らわれることはない。
ちくしょう、よく考えている。
「ヴォル、どうする?」
「……向こうも僕たちがここに居るとは思っていないだろうから、やっぱり奇襲だね。儀式をする直前でヴァリアブル王子様を助け出してキュウベエを討つ」
キュウベエもマックスが邪魔をしているのはここの邪教信者たちから聞いて知るだろうけど、僕たちまで来ているとは思うまい。
その隙を突けばいける、はず。
「貴族ナナ嬢はどうする?」
そうなんだよね。
アリエスの疑問に僕は頭を悩ませる。
この作戦のネックは、居ない所で人質になっているナナ様だ。
『ねぇ、そのナナって子が人質に取られているから手を出せないんでしょ? だったら僕が助けに行くよ』
そう悩んでいる僕に、マックスは何でもないように提案をしてきた。




