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僕はヴォル! スキルは【回転】!  作者: 一狼
第6章 示せ! 貴き血脈の誇りを!
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060.双子の王子

「ようやく会えましたですわ! ヴォル兄様!」


 そう言って、10歳くらいの貴族のお嬢様が僕に抱き付いてくる。


「え? え? え? ええぇぇぇぇっ!?」


 何これ!? 何これ!? 何これ!? 何これ!?


 ニコライの一連の事件の説明が終わりひと段落し、後は帰るだけとなった僕たちに、新たなトラブルが舞い込んできた。


「ヴィスクドール嬢、ロクウェル嬢、まだ彼らには事情を説明していない。もう少し待てなかったのか?」


「モノクローム様、会談中お邪魔して申し訳ございません。ヴィヴィがヴォル様が訪れていると分かるとどうしてもと聞かなくて」


 領主様――モノクローム様が突然現れた2人の貴族のお嬢様の乱入に、どこか納得したような表情を見せる。


 パトルも、流石に貴族のお嬢様にはいつもの粗暴さを見せることは出来ずに、どこか焦ったような表情を見せながら推移を見守っていた。


 と言うか、現在進行形で小さな方の貴族のお嬢様が僕に抱き付いているんですが!?


「ほら、ヴィヴィ。いつまでも抱き付いてヴォル様が困ってますよ。そろそろ放してあげないと」


「もう少し、もう少しだけですわ! 初めてのヴォル兄様ですもの! 存分に感触を確かめたいのですわ!」


 さっきからこのお嬢様は僕の事をヴォル兄様って呼んでいるけど、僕に妹は居ないし、そもそも僕は貴族様じゃないんだけど。


 どうすればいいのか困り果てた僕はモノクローム様を見るけど、モノクローム様は苦笑いをしながらも止める気配はない。


 だけど事情は話してくれそうだ。


「済まぬな。ヴィスクドール嬢はずっと行方不明になっていた兄を探していた故に、その反動が表れているのだ。うむ、まずは紹介が先だったな。今、ヴォルに抱き付いているのは、竜王国ヴェルザンディの第一王女のヴィスクドール・ヴィン・ヴェルザンディ嬢だ。そしてそちらが竜王国のシクスセクス伯爵家のロクウェル・シクスセクス嬢だ」


「ご紹介に預かりになりましたロクウェル・シクスセクスです。初めまして、ヴォル様」


「は、初めまして。ヴォルです。と言うか、ヴォル様って何ですか? 僕は平民ですけど。様を付けられるようなことは無いはずですけど……」


「ヴォル兄様は私の兄様なのですわ! だからヴォル兄様は平民ではなくて貴族なのですわ! 私はヴォル兄様の妹のヴィスクドール・ヴィン・ヴェルザンディですわ。ヴィヴィって呼んでくださいですわ」


 いや、だから何で僕が貴族――よりにもよって王族なの!?


 ようやく離れてくれたお嬢様――ヴィスクドール王女様はニコニコしながら僕に話しかけてくる。


「この後2人と会談の予定だったが、ヴォルも関わることとなれば一緒の方がよかろう。済まぬがもう少し止まってもらえるか? なに、話を聞けば納得してもらえるだろう」


 ……何か、聞いたら後戻りできない悪い予感がするけど、ここで帰ると言う選択肢は選べないよね。


 僕たちは渋々再び席に着く。


 僕とパトル、ヨンタナがソファーに座り、その対面にヴィスクドール様、ロクウェル様、モノクローム様が座る。


 モコ、アリエス、サンタナ、ミッツは僕たちの後ろで立って推移を見守る。


「そうだな。まず何から話すべきか……。ヴォルは竜王国ヴェルザンディを知っているか?」


「……ハーフハート大陸の国の1つだとは聞いています」


 あくまで聞いた事がある、という程度だけど。


「確か太陽王国の南に位置し、ドラゴンが住まう静脈山脈――別名ドラゴン山脈と呼ばれる山脈と海に挟まれた小さな王国だったかと。だけどその地域性からドラゴンをも退けるほどの武力を持つ屈強の王国ですよね」


 さり気にヨンタナがフォローしてくれる。


「ふむ、その通りだ。付け加えるのなら、ドラゴンを従え騎乗するドラゴンライダーを擁する王国でもあるし、その地形から唯一単独で魔王軍を退けていた王国でもあるな」


「ふんむっ! お父様の竜王国はそこら辺の魔族には負けませんですわ!」


 ヨンタナとモノクローム様の説明に気を良くしたヴィスクドール王女様は得意げにふんぞり返っていた。


 そんなヴィスクドール王女様を苦笑しながらモノクローム様は続きを話す。


「現在、竜王国ヴェルザンディの国王ヴェーダには3人の王子と1人の王女が居る。王女は先ほど紹介したヴィスクドール嬢なのは言うまでもないが、3人の王子はヴァルムンク王太子とヴァリアブルとヴォルテクスの双子の王子なわけだが……」


 そう言いながらモノクローム様は僕をちらりと見る。


 そこまで言われて何となく言いたいことが分かった。


 その双子の王子様の1人、ヴォルテクス王子が僕の事なんだろう。


「そこから先は私がお話ししますですわ。私が生まれる前、ヴァリア兄様とヴォル兄様が生まれて1年たったある日の事ですわ。突如としてヴォル兄様が消え去ってしまったのですわ」


「消え去ったって、誘拐でもされたの、ですか?」


 あまり言いなれていない言葉遣いに言い直しつつ、僕はヴィスクドール王女様に質問する。


「それが、分からないのですわ。誘拐された形跡もなければ、身代金の要求もないのですわ。ハイハイでヴォル兄様自ら移動したとしても、誰にも見つからずと言うのも考えられないのですわ。本当に突然跡形もなく消えてしまったのですわ」


「当然捜索は竜王国全土に及び、周辺国まで捜索の協力要請が来たわけだが……、14年経ったが、今まで手掛かりすら見つかっていなかったわけだ」


 周辺国にまで協力要請って、それって国として弱みを見せていることにならないのかな?


 それともそれほど竜王国が強くて周囲を黙らせるだけの武力があったのか、逆に周辺国との友好関係は良好だったのかどちらかかな。


 と言うか今更だけど、太陽王国サンフェルズの貴族であるモノクローム様にここまで内部事情が知られているのっていいの……?


「そうです。今まで手掛かりすら見つかっていませんでした。ですが今年になってある情報が入ってきたのです。魔女を師に持ち、モノクローム様も手を焼いていた大盗賊団を壊滅させた新人冒険者。そう、ヴォル様、貴方の事です」


 ロクウェル様が、ウットリさせながら恋人を見るような目で僕を見て言う。












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