054.邪教祭壇
「むさ苦しい男との密着は頂けないなっ!」
「それはこちらのセリフだ。吾輩とて麗しき女性との相乗りを希望する」
「文句を言わないでよ! 僕だって背中にはパトルやモコを乗せたかったんだから!」
僕の運転するバイクにはアリエスとヨンタナを乗せて、無理や入り3人乗りで魔女の森の奥地を目指して突っ走っている。
勿論、平坦な道じゃないから上下運動や左右の振りでバランスを取るのが難しいやらで、かなり気を使って運転している。
それなのに、後ろからは文句が飛んでくるんだよ。
前にエーデ師匠のところに向かう時は、それなりに背中で感触を楽しむことが出来たんだけど、今回は何故か男と女のチームに分かれての移動になってしまった。
僕の隣では、モコが運転するバイクに、パトルとサンドラが乗っている。
「ちょっ!? これっ! かなりっ! 怖いんですけどっ!?」
「耳元で煩いぞっ! 暫くはこの調子だから黙ってろ!」
「むぅ……、いきなり3人乗りはちょっと厳しいです。まぁ、今更弱音を吐いても仕方ないですが」
初めてバイクに乗るサンドラはあまりの速度と揺れに悲鳴を上げている。
パトルも今回ばかりは3人乗りの為、楽しむ余裕がなくかなり不満のようだ。
背後ではサンドラの悲鳴が聞こえてくるわけだしね。
モコは僕のバイクの運転技術も【ものまね師】で模倣しているけど、流石に初めてで3人乗りは厳しかったか。
まぁ、だけど普通に移動するよりはかなり早く奥地へと辿り着くからモコには頑張ってもらうしかないけどね。
ニコライ達の移動手段は徒歩のはずだから、奥地に着くのにそれなりに時間がかかっていると思われる。
多分だけど、邪神復活の儀式までに間に合うはずだ。
それからバイクで移動すること十数時間。
「待て! 近いぞ、速度を落とせ!」
エーデ師匠の家よりも(方向は若干ずれているけど)更に奥地だったため、疲労が見え始めた頃に、唐突にヨンタナが叫んだ。
僕はヨンタナの忠告を聞き、速度を落としてゆっくりとバイクを止める。
モコも合わせてバイクを止めた。
「おい、なんで近いって分かるんだ? それらしい気配はないぞ?」
「俺のスキルだよ。近くにニコライの仲間が居る。これ以上近づくと気が付かれるぜ」
【気配探知】のスキルはないけど、それなりに鍛えているパトルは周囲の気配には敏感だ。
パトルほどじゃないけど、僕も気配を探ることは出来る。
エーデ師匠に散々やらされたからね。
だからこそ、パトルは自分の『気配探知』でも感じられなかったのに、ヨンタナがニコライ達を見つけたのに悔しさを滲ませながら見る。
「職業系のスキルか?」
「いや、特化系スキルだよ。言っておくが【気配探知】とかのスキルじゃないからな」
「ん? それでどうやって近くに奴らが居るって分かるんだよ」
特化系スキルは1つしか使えないからね。
【気配探知】とかのスキルじゃなきゃ不思議に思うか。
「パトル、ヨンタナのスキルは僕が保証するよ」
「ヴォルがそう言うなら……」
何故か大人しく引き下がるパトル。
うん? いつものパトルならもう少し食い下がるような気がしたんだけど。
「そうですね。ヨンタナさんのスキルでちゃんと人が居るのが確認できるです」
モコもヨンタナのスキルの有用性を認めてくれる。
って、モコの奴、ヨンタナのスキルを物真似したな。
「よし、ここからは隠密優先で近づくよ。ヨンタナ、先導を頼む」
「ああ」
他人の視界を共有できるスキル【ユニゾンアイ】があれば、ニコライ達に見つからずに近くに行くことが出来るから先に立ってもらう。
暫く互いに無言で足音を立てずに森を進む。
……今更だけど、僕たちの装備に音が鳴る金属装備が無くてよかった。
ヨンタナの先導で森の奥地へ進むと、拓けた場所が現れた。
「森の奥地にこんな場所があっただなんて……」
僕は思わずポツリと呟いてしまう。
エーデ師匠に連れられて魔女の森の奥地を巡ったこともあったけど、こんな場所は知らなかった。
広さはかなり広い。
神殿やお城が建つくらいの広さだ。
その真ん中に、ゴールのお屋敷の地下で見たような祭壇よりも、更に立派な祭壇があった。
その祭壇にはニコライ、そしてその部下の4人の邪教信者――この場合は邪教神官と言った方がいいのかな?――が、何やら儀式の準備を行っていた。
よし! どうやら間に合ったみたいだ。
祭壇の中心となるテーブルには邪神像が設置されており、真っ白なワンピースを着た一人の少女が横たわっている。
どうやら薬か魔法かで眠らされているみたいだ。
彼女はこの儀式の犠牲者か、それとも邪教信者による志願者か。
何にせよ、彼女も儀式の重要ファクターだろう。
邪神像か少女を奪えば、儀式を邪魔できるかな……?
僕がそう考えていると、隣で動きがあった。
サンドラが我を忘れて飛び出そうとしていたのだ。
それを慌ててヨンタナが捕まえ、パトルが追従して無理やり引き戻す。
「お前何を考えているっ!? 折角の奇襲を無駄にする気かよ!」
「ご、ごめんなさい。で、でも……」
大きな声じゃなかったけど、パトルの怒鳴り声にサンドラは申し訳なさそうに謝りながら目を逸らす。
そんなサンドラを庇うように、ヨンタナがその理由を答えてくれた。
「すまん、こいつを許してやってくれ。あそこに居るのはようやく見つけたサンドラの妹なんだ」




