052.仲間の絆
パトルが大蛇剣・蟒蛇を振るい、蛇の様に伸びた刀身が僕とサンドラを襲う。
僕はサンドラをお姫様抱っこしたまま必死になってそれを躱す。
「って、ちょっ!? 僕ごと!? やっぱり僕の事を覚えていない!?」
「きゃぁぁっ! 蛇、いやぁぁぁぁ!」
「ああっ!? ヴォル、避けるんじゃねぇ! その女を倒せないだろ!」
「あれ!? やっぱり僕の事を覚えている!?」
「あ? 何を言っているんだよ、ヴォル。た、大切な仲間の事を忘れるわけねぇだろ」
と言いながら大蛇剣・蟒蛇を振り回すパトル。
だけど、その目は殺気が込められている。
僕の事を覚えているのに殺す気満々!?
「どうなっているの!? ニコライのスキル【存在の証明】で僕の事忘れているんじゃなかったの!?」
「来ないでぇぇ! 蛇! 蛇! 蛇! きゃ、きゃぁぁぁぁっ!」
あ、ダメだ。
今のサンドラは使い物にならない。
「ヨンタナ!」
「いやいや、間違いなくニコライの【存在の証明】は効いているぞ。ただ、言ったように物事には例外が存在する。もしかしてヴォルの仲間も何かしたんじゃないのか?」
む? そう言われれば、そうかも。
良くも悪くも僕の仲間は普通じゃないから。
と言うか、いい加減パトルを何とかしないと。
「パトル! まず蟒蛇を引っ込めてよ! じゃないと話が出来ないよ!」
「ああっ!? だったらその前にその女にお姫様抱っこをするのを辞めろよ!」
「いやいや!? サンドラを降ろしたら攻撃するだろ!?」
「サ、サンドラだと……!? 名前を呼び合う仲かよ!?」
ダメだ。話が通じない。
「よし、そこだ、行け、やれ!」
パトルの後ろではゴールが喜悦を浮かべながらこちらの様子を見ている。
む、パトルがこのゴールの言いなり(?)になっているのはなんか面白くないな。
すると、今度はモコとアリエスは現れた。
モコはパトルが暴れているのを見ると、深いため息をつきながらパトルの頭を思いっきりどつく。
「落ち着くのです、パトルさん。ヴォルさんが生きていたのが嬉しいのは分かりますが、照れ隠しにしてはやりすぎです」
「ばっ!? 照れ隠しじゃねぇよ!? あ、あいつ、ヴォルにお姫様抱っこされてたんだぜ!? 許せるかよ!」
「お姫様抱っこが羨ましいのなら、パトルさんもしてもらえばいいじゃないですか」
「あ、あたしがヴォルにお姫様抱っこっ!?」
あれ? モコがパトルをどついてから急に大人しくなったよ。
パトルは顔を真っ赤にさせて両手で頬を抑えてしゃがみ込んでしまった。
「くくくっ、何とも仲間パトルらしいよの。汝ヴォルよ、無事だったようだな」
アリエスはそんなパトルを見て苦笑している。
えーっと、どうやらモコもアリエスも僕の事を覚えているみたい。
やっと状況が落ち着いたので、サンドラを降ろしパトルたちの方を窺う。
サンドラは本当に蛇(本当の蛇じゃないけど)が嫌いなのか、パトルが大蛇剣・蟒蛇を引っ込めてもびくびくしながらヨンタナの後ろへ隠れる様に走っていった。
「せ、先生!? あいつらをあいつ等を捕まえてくださいよ! あいつらは私の屋敷に忍び込んだ侵入者ですよ!」
「あ”? あたしにヴォルを捕まえろって言うのか? 殺されてぇのか、てめぇ」
「ひぃぃ!?」
パトルに睨まれ腰を抜かすゴール。
あの、パトルさん? 貴女、ゴールに雇われた用心棒ですよね?
さっきも「旦那の屋敷に忍び込んだ大馬鹿はどいつだ」って吠えてたよね?
「そういや、何でヴォルはここに居るんだ? ここ、こいつの屋敷だぜ」
「はぁ、説明を聞いてなかったです? ヴォルさんならここに忍び込む可能性があるからこの人に雇われて待つって言ったのです」
「おお! そう言えばそう言ってたな」
どうやらモコは僕の行動を予想して、ゴールの屋敷に入るために用心棒として雇われて潜入していたらしい。
でも、それって僕の事を覚えているから出来る事だよね。
なんでパトルたちは僕の事を覚えていることが出来たんだろう。
「無事に合流出来て良かったです。ヴォルさんの事だから大人しく捕まっているとは思えなかったです」
「ああ、うん。と言うか、なんでモコたちは僕の事を覚えているの?」
本当は大人しく捕まっていたんだけど。
モコの期待を変に裏切るのもあれなので、話を合わせて僕の疑問を聞く。
「私のスキルをお忘れです? 最初にニコライに会った時に既に物真似をしていたんです」
あ、そうか!
モコの【ものまね師】なら、ニコライの【存在の証明】を物真似して、僕の事を覚えていることが出来る。
パトルにもアリエスにも僕の【存在の証明】を植え付けて忘れ去れることを防げる。
【存在の証明】の存在消去法は、同じ【存在の証明】を持つ者が近くに居れば効かないんだ。
「はぁ~~~~、良かった……。パトル達が僕を忘れてしまったんだって凹んでいたんだ。うん、本当に良かったよ」
「ば、バカ……、ヴォルの事忘れるわけねぇだろ……」
パトルは顔を赤らめながら、横を向きながらぶっきらぼうに呟く。
「本当は私がスキルを使うまで忘れていたですよ?」
「あ、バラすなよ!?」
そんなパトルをモコは揶揄って微笑んでいる。
「ふっ、吾輩は忘れなかったがな。あのスキルは吾輩のような至高な思考者には効かぬみたいだ」
アリエス、それって自分は変人だって言っているようなものだよね?
確かに例外は存在するね。
必ずしも【存在の証明】の存在消去法が効くとは限らないみたいだ。
そもそも存在消去法は【存在の証明】の効果の逆を行っている訳だし。
「ともあれ、ここからあたし達の逆襲だな。ヴォルを嵌めたニコライの野郎をぶちのめそうぜ!」
だね。パトルの言う通り、仲間に忘れられなかったからと言って、このままで済ますわけないよ。
僕たちを敵に回したことを後悔させてやるよ。




