047.超越者
あー、うん。
勢いに身を任せたとはいえ、ちょっと人前で不用意すぎたかな。
僕のスキルから鍵開けを連想させることはまずないから、下手をしたら悪人とかに目を付けられるかも。
「ゴメン、ちょっと驚いたよね? 僕のスキルの応用で今のようなことが出来るけど、出来れば見なかったことにしてもらえるかな?」
僕は未だ驚いて呆けているヨンタナとサンドラに向かってそう言う。
だけど2人が驚いていたのはその事じゃなかった。
「あ……、いや、確かに今の鍵開けも驚いたけど、俺たちが驚いているのはそれじゃない」
「貴方は今、牢の中でスキルを使ったでしょ」
「……え? あっ!?」
そうだった!
牢の中ではスキルは使えないようになっていたんだ。
せっかく捕まえて牢屋の中に閉じ込めたとしても、スキルが使えるのならまったく意味をなさないからだ。
スキルで牢屋の中から攻撃魔法や技で牢を破壊など出来ないように、スキル封じの紋様が施されているらしい。
らしいと言うのは、どこにどう施されているか知られないようにしているから。
まぁ、知っていたら対策されちゃうしね。
そんなスキル封じをされている牢の中で、僕は平然と【回転】を使い、牢の扉を開けて見せた。
そりゃあ、驚くよね。
と言うか、僕、その前からスキルを使って練習をしていたんだけど。
「もしかして、この牢にはスキル封じが無かったとか?」
領主様のお城の牢屋に限ってそんなことは無いと思うけど、万が一の可能性もあるしね。
と思っていたけど、やっぱりそうじゃないみたい。
「いや、間違いなくスキル封じが施されている。現に俺たちも今はスキルは使えないからな」
「えー……、じゃあ何で僕だけ」
「ちょっと待って、今思い出したけど例外が存在したはずよ。確かレベルが99以上の超越者の場合は、スキル封じが効かないって話よ」
あ、それ僕も聞いたことがある。
スキル封じはあくまでレベル99までの一般人向けであって、それ以上の超越者にはその力を抑えられないと。
…………と言うか、え? 僕が超越者?
確か【回転】のレベルは99だったけど、いつの間にか限界を超えていた?
僕は【回転】のスキルを頭の中に思い浮かべる。
【回転】Lv113
……本当にLv99を超えていたよ。
「……うん、今レベルを確認したらLv113になってた」
「マジか」
「凄いわね」
まぁ、超越者と言っても、まだ駆け出しだけどね。
本当に凄い人はLv199の限界までスキルを伸ばしたりしてるって聞くしね。
噂じゃ、Lv999なんて言う化け物もいるとか。
「っと、今は驚いている場合じゃないな。出られるならそれに越したことはない。早くここを出るぞ」
僕は頷きヨンタナとサンドラに付いていく。
地価の牢獄を抜け、領主様のお城の廊下に出る。
そこにはボロボロになった景色が広がっていた。
「何これ……」
「ヴォルが閉じ込められて2日後、つまり昨日だな。領主の城に襲撃があったんだ」
「えっ!? 領主様のお城に襲撃!?」
襲った人は何考えているの!?
「今はその襲撃者の行方を追っていて、城の兵士たちが少ないのよ。だからこうして忍び込むことが出来たし、見つからずに出る事も出来るわ」
サンドラはそう言いながら、どこかここではない別の場所を見ているように見える。
地下の牢獄を抜けたからスキルが使用できるようになったんだろう。
おそらくそれで未来視で僕たちの脱出するルートを確認していると思う。
「因みに、襲撃者はお前を捕まえたニコライだ」
「ええっ!?」
ちょっ!? なんで僕を捕まえた人が領主様のお城を襲うのっ!?
意味が分からない。
「そこまで知っているのなら事情を説明してもらえるんだよね?」
「ああ、元よりそのつもりだよ。だが、今はここを脱出するのが先だな。サンドラ、どうだ?」
「うん、こっちのルートで大丈夫よ。そっちも確認は出来ているんでしょ?」
「余程動揺しているのか、見張りも居ないし人の配置もばらばらだな。まず見つかることはないな」
ヨンタナのスキルは【気配察知】とかかな?
随分と的確に人の位置が把握できているみたい。
その後は、本当に人に出会わずにお城を脱出することが出来た。
お城を脱出した後も、出来るだけ人に見られないように通りを抜け、領主様のお城があるウエストザースディーンの裏通りの一軒家に身を寄せた。
「よし、ここまで来れば取り敢えずは一安心だ」
「あー、疲れた。捕まらないと分かっているけど、やっぱり領主の城に忍び込むのは気疲れするわ」
気が抜けたのか、さっきまでの緊張が抜けてリラックスする2人。
……今更だけど、脱獄して良かったんだよね。
「それで、事情を説明してほしんだけど」
「まぁ待て。お前3日もメシを食ってないだろ? まずは腹に何か入れて体調を戻せ」
ぐーーぅ
ヨンタナに言われて、そう言えばと意識したとたんにお腹が鳴った。
「はいはーい、軽く何か作っちゃうねー」
サンドラが台所があると思われる場所に向かって行く。
10分ほどしてサンドイッチやらスープやら軽食が出され、僕は余程お腹が空いていたのか、あっという間に出されたものを食べつくした。
お腹が膨れた所為か、このままひと眠りしたい気分に捕らわれそうになるけど、それはまだ。
僕はヨンタナに視線を向けて、事情を説明してもらうように促す。
「さて、腹も膨れたことだし今後の事も含めて話そうか。まず今回の事件の発端となった邪教信者だが」
「僕は邪教信者じゃないよ」
「ああ、本当の邪教信者はヴォルじゃなく、ニコライの方だからな」




