044.捕縛
僕は今、牢屋の中に居る。
いきなり何を言っているか分からないと思うけど、僕にも何が何だか分からない。
ううん、牢屋に入れられた理由は分かるんだけど、その原因が意味不明なのだ。
あれは、パトルの故郷のフォードティン村からザースディーンの町へ戻ってきてから数日が経ち、冒険者ギルドの依頼を終えて併設された酒場で食事をとっている時の事だった、
「くそっ。親父の奴、いい加減なこと言いやがって」
そう言いながらパトルは大蛇剣・蟒蛇を手に悪態をついていた。
パトルのお父さん曰く、大蛇剣・蟒蛇はただ大酒呑みになるだけの戦闘には使えない魔剣だと。
だけど、実際のところは全く戦闘に仕えないどころか、バリバリの戦闘向けの魔剣だったのだ。
大蛇剣・蟒蛇は、その名を示す通り蛇腹剣の魔剣だった。
蛇腹剣は、刀身が分割して鞭のように振るうことの出来るギミックが付いた剣で、普通は3~10mくらいの長さに変化するけど、この大蛇剣・蟒蛇はなんと魔剣だけあって50mも伸びるのだ。
おまけに半自動というか、半ば意思を持ったように蛇のように這って獲物を喰らう。
まぁ、50mもの長さを振るうのは至難の業だから、当然と言える機能でもあるけど。
「でも使いこなすのに時間が掛かりそうです」
「ああ、こいつは結構なじゃじゃ馬だよ。だが屈服のさせ甲斐がある魔剣だよ」
モコの言葉にパトルはニヤリと笑いながら大蛇剣・蟒蛇を魔剣・炎武帝と一緒にテーブルの横に立て掛ける。
蛇なのに馬とはこれ如何に。
まぁ、結果的ではあるけどパトルのパワーアップは有難いね。
「それで、これからどうする?」
「どうするって?」
「目標だよ、目標。あたしたちパーティーの目指す目的。また盗賊団でも狙うか? 名声を上げるならそれもありだぜ。 それともS級でも目指すか? 或いはドラゴンとか幻のモンスターとか狙うのもありだな」
そっか、目標かー
今思えばパーティー最初の目標は『十三番目の狐』はかなり無茶だったなぁ。
だけどこれでパトル達の名声は上がったし、僕の悪評も少しは緩和したからあれはあれでありだったけどね。
でもそうなると、これからの目標はどうしようか。
『十三番目の狐』以上となると、かなりハードルが高いような気がする。
パトルの言う通りS級を目指す?
それとも強いモンスターでも狩ってくる?
「ドラゴンは勘弁してほしいです。あ、いえ、いつかは倒したいですけど、私たちはまだ駆け出しなのです。今は無茶をする時期じゃなく、じっくり力をつける時です」
「ふっ、既に吾輩たちはE級の枠を超えてC級以上ともいえる実力はあるのだがな」
うむむ、モコの言う通り力を蓄えるときかな?
でもアリエスの言う通り、僕たちのパーティーは既に新人とは言えない冒険者となっているからね。
「だよな。さっさとあたし達をC級に上げればいいのに」
「ダメだよパトル。物事には順番というものがあるんだよ。一気にC級になったとしても、基本を疎かにしていたら足元を掬われるよ。基礎が大事なのはパトルも一番わかっているでしょ?」
「ちぇ、言われなくても分かっているよ。ただ、まどろっこしいんだよ。いちいちランクを上げていくの」
「気持ちは分かるけどね。そうだね、取り敢えず僕たちパーティーの目標は地道に依頼をこなしつつA級を目指すと言う事でいいかな?」
盗賊団は最も大きい組織だった『十三番目の狐』が居ない為、群雄割拠の様にひしめき合っているから狙う旨味が無いからね。
後釜を上手く掻っ攫った『鋼竜の晩餐』は、プラチナナイト帝国の裏の支配者と言われている『黒の機関』の隠れ蓑組織だし、僕たちの協力組織でもあるから目標にすることは出来ないし。
ドラゴンや幻のモンスターは今はまだ早いと思う。
流石に僕たちの実力はそこまで到達していると言えないから。
じゃあ、後の選択肢としては実力を上げつつ冒険者ランクを上げるのが目標になるかな。
冒険者ランクが上がれば冒険者ギルドからの恩恵が色々あるし。
「S級冒険者を目指すと言わない所がヴォルさんらしいです」
「あはは、S級は規格外だからね……」
「なんだよ、ここはS級を目指すと言っとけよ。目標はでっかくだな」
えー……、パトルはよくそんなこと言えるね。
ついこの間、S級冒険者の『風雷姫』イチカ・ファーストクラスと戦ってコテンパンにのされたばかりなのに。
あれを目の当たりにすれば、容易に目指すだなんて言えないと思うんだけどなぁ……
「ふむ、当面は今のままと言う訳だな。吾輩も汝ヴォルの意見に同意する」
「良かったです。パトルさんの言葉に惑わされて無茶を言うんじゃないかとハラハラしたです」
「なんだとぉ? おい、モコ。お前強くなったからってあたしに喧嘩を売っているのか?」
「ちょっ!? 濡れ衣です! ヘルプです!」
あはは、パトルはもう少し、普段の言動を見直した方がいいね。
僕はパトルたちのやり取りを楽しそうに眺めている。
だけど、そんな楽しいひと時は終わりを告げる。
第三者の乱入によって。
「お前が『躍る冒険者たち』のヴォルだな」
僕たちのテーブルの前に5人の人物が立っていた。
声を掛けてきたのはこのグループのリーダーらしき男。
かなり頑丈そうな鎧を身にまとった厳つい表情をした偉丈夫だ。
ただ、その鎧は神官のような意匠が施されている。
おそらく神官戦士かな?
「私はAlice神教の聖騎士、ニコライ・セカンダリィだ」
あれ、思ったよりも位が高かった。
聖騎士は、神官戦士の上の位だ。
Alice神教の為の戦士が神官戦士と呼ばれ、その神官戦士を取りまとめ、部隊を率いる体調などが聖騎士と言われている。
もしくは純粋に強者が任命されるとか。
そんな聖騎士様が僕に何の用だろう?
「貴様には邪教信者の容疑がかかっている」




