041.帰省1
「あー、ちょっと実家に戻ろうと思うんだが」
「……え゛?」
僕が立ち直って次の日。
パトルが唐突にパーティーを抜けると言い出した。
「パ、パトル、僕何かした……? あ、いや、昨日の僕は確かに頼りなかったと思うけど、これからちゃんとするから! だからパーティーを抜けるだなんていわないでよ」
「違う違う、親父にグレートソードを拵えてもらおうと思ってな。ほら、この間の『風雷姫』との戦いでグレートソードが壊れただろ? どうせだから親父にもう一回造ってもらおうと思ってさ」
あ……、そ、そっか。
確かに、この前の戦いでパトルはグレートソードを壊していたっけ。
……ほっ。良かった。パーティーを抜けるって事じゃなかったみたい。
と言うか、実家に帰るって言い方。
勘違いしちゃうよ。
「あれ? でもパトルさんはもう1本グレートソードを持っていたはずですが?」
そう言えば、パトルは元々2本のグレートソードを持っていて、『十三番目の狐』の討伐で魔剣・炎武帝を手に入れたからもう1本持っているはず。
「まぁ、確かにもう1本持っているけど、出来ればもう少し性能の良いのが欲しくなってな。ほら、『風雷姫』との戦いじゃ持たなかったわけだし」
ええ~~~、あんな戦い、そう何度もあったら持たないよ。
「そもそも汝パトルの父親は剣を作れると言う事は、鍛冶師なのか?」
「あれ? 言ってなかったっけ? 親父は鍛冶師であたしが冒険者になる祝いとして2本のグレートソードをくれたんだ」
「ドワーフの造った剣かー。羨ましいな」
パトルは人間とドワーフのハーフだ。
ともなれば、父親はドワーフの鍛冶師なんだろう。
「あー……、違う違う。ドワーフはおふくろの方。親父は人間だよ。おふくろがドワーフ冒険者で、親父が人間鍛冶師」
「え?」
「は?」
「ほぅ?」
まさかの人間鍛冶師とは。
「と言う訳で、一度実家に帰ろうかと」
「まぁ、そいう事なら。戦力を上げるのは間違いじゃないしね」
ザースディーンの町にも鍛冶師や武器屋はあるけど、パトルにしてみれば父親の剣の方が使い慣れているだろうし、金銭的にも懐に優しいし。
「あの、もしよかったら私たちも一緒に付いていってもいいです?」
「「え?」」
思わず僕とパトルの声が重なる。
「ほら、折角ですので、ヴォルさんも剣を造ってもらったらいいのです。剣以外にもナイフとか防具とか見繕えればと思ったのです」
……確かに。
折角、パトルを通してコネがあるのに使わない手はないよね。
パトルのグレートソード以外にも、他の武器や防具を揃えるのも手か。
「よし、行こう! みんなで。あ、パトルが嫌じゃなければだけど」
思い立ったが吉日。
早速パトルに確認を取ろうと見ると、何やら小声でぶつぶつ呟いていら。
「い、いきなり親に紹介とか、きゅ、急すぎるだろ……! ど、どうすんだよ、これ。おふくろは絶対揶揄うだろうし、親父はヴォルの事を認めないだろう。村の男どもがあたしに近づいてきただけで怒鳴り散らしていたし」
よく聞き取れないけど、付いていっていいのかな?
「パトル? おーい、パトルー?」
「うぇっ!? な、なんだっ!? ヴォ、ヴォルが決してダメとかじゃなくて、親父が頑固なだけだから!」
「えーっと、何を言っているのか良く分からないけど、付いていっていいのかな?」
「あ、ああ。い、いいぜ。うん、そうだな。折角だからおふくろと親父にヴォル達を紹介しよう。装備も揃えれば言う事なしだな」
ほっ、良かった。
そうと決まれば早速準備をしてパトルの故郷に向かおう。
何故かモコとアリエスがニコニコしているのが不思議だったけど。
……そう言えば昨日も同じようにニコニコしてたよね、2人とも。
次の日、僕たちはパトルの故郷――フォードティン村に向かう。
ウエストザースディーンから出発し、北西へ2日ほどの場所にフォードティンはあった。
フォードティンはどこにでもある普通の村だった。
「あれ? パトルじゃないか。どうした? やっぱり冒険者は無理で、戻ってきたのか?」
「んなわけねぇよ。ちゃんと冒険者として上手くやっているよ。と言うか、一緒にいる仲間を見て失敗したとかよく言えるな?」
村に入って入り口の傍に居た村人に声を掛けられる。
見た感じ20前後の若者で、軽口を言い合うくらいパトルとも仲がよさそうに見えた。
パトルを先導に、村の中を進んでいくと、いろんな村人からそれぞれ声を掛けられる。
その都度パトルは「久しぶり」だの「一時的な里帰り」だの「親父に剣を造ってもらいに来た」だの答えていく。
そんな村人の中、1人の女性ドワーフが近づいてきた。
ただその女性ドワーフは他の村人と違い、グレートアックスを背負い、鉄と革鎧を身に纏った冒険者だった。
「あら。パトルじゃないの。男子三日会わざれば刮目して見よなんて言うけど、女の子にも当てはまるのかしら。ちょっと見ないうちに随分と逞しくなったわね」
「まぁな。町に行ってから色々あったからよ」
「それと、いい仲間にも恵まれたみたいね。いらっしゃい、パトルのお仲間さん」
そう言って僕たちを見るパトルのお母さん。
一瞬、鋭い目で僕たちを見たのは、パトルの仲間に相応しいか見定めをしたのかも。
「それとお帰り、パトル」
「ただいま、おふくろ」




