037.2回戦
ヴォル:作者から謝罪です。
前話、途中からの話が始まってしまって、間が抜けてました。
更新直後に読んだ方には申し訳ございませんでした。
2回戦? そんなことを言っていた数分前の僕を殴りたい。
ものの数分もしないうちに、僕たちはあっという間に『風雷姫』に敗れていた。
いや、正確にはまだモコが相対しているけど。
つまり、まともにやりあえているのがモコだけという事。
僕とパトルはあっという間に、アリエスがちょっとは粘ったものの、やはりS級の猛攻には耐え切れず倒れてしまった。
モコだけが【ものまね師】のスキルで『風雷姫』を真似て、辛うじて戦っている状況だ。
「【ライトニング】」
「……っ【ライトニングロード】です!」
『風雷姫』が放つ雷の砲をモコが右手を振り、避雷針の魔法で雷の砲を明後日の方角へと飛ばす。
「【サイクロンバースト】です!」
「【エアフロー】」
お返しとばかりにモコが圧縮した台風の塊を『風雷姫』に放つけど、こちらもさっきのモコと同じように風の通り道を作って台風の塊を上空へと逸らす。
一見すると、【風魔法】と【雷魔法】を使う者同士の戦いで千日手の様に見えるけど、実際はモコの方が押されていたりする。
今のモコの【ものまね師】のスキルは、相手の技術まで真似をするからほぼ無敵の様に見えるけど、相手は流石S級と言うべきか、ものまねをしたモコの上を行っていた。
強いて差を上げるとすれば、経験だろうか。
言い換えれば熟練度、かな。
モコは経った今、『風雷姫』のスキルを、技術を真似ただけで使いこなせていない。
逆に、『風雷姫』にはこれまでの経験で【風魔法】と【雷魔法】を使いこなしている。
そうだよ。よく考えればいくら2つの祝福を受けし者とは言え、スキルが2つあるくらいでS級冒険者にはなれない。
それだとただの【風魔法】と【雷魔法】の2種魔法の使い手と言うだけだ。
『風雷姫』は己の腕を磨き、【風魔法】と【雷魔法】を使いこなし、更にはその上を行ったのだ。
これがS級冒険者か。
僕たちが挑むのは無謀だったのかもしれない。
モコが相手をしていられるのは持ってあと30分もあればいいところかな。
その前にどうするかを決めないと。
と言っても、出来る事はほぼ決まっているけど。
僕は何とか立ち上がってモコの隣に並ぶ。
「モコ、僕が時間を稼ぐ。その間にパトルとアリエスを連れて逃げてくれ」
「何を言っているのです!? 仲間を置いて逃げるなんて言語道断です!」
「モコだって気付いているだろ? このままじゃ負けるって」
「……うぐっ」
「だから、僕が足止めをする。モコたちは逃げてくれ。これ以上僕の我儘に付き合う必要はないよ」
「却下です。我儘上等です。いくらでもお付き合いするですよ」
「だな。ここまで来て逃げろだなんて言うなよ」
「吾輩たちの覚悟を甘く見ないでもらおうか」
気が付けば、パトルとアリエスも立ち上がって僕たちの隣に並んでいた。
パトルはノーマルのグレートソードが折られてしまったので、魔剣・炎武帝だけを構えている。
アリエスも出力制御していた制御装置を腕輪から外して【極大魔力】全開の魔法を放つ準備をする。
「みんな……」
はは、僕には勿体ないくらいの仲間だよ。ほんと。
だからこそ、こんなところで死なせたくないな。
何か、何か『風雷姫』を凌ぐ方法はないか、僕は必死になって考える。
「仲間との別れは済んだか? 済んだのなら順番にあの世へと送ってやる。恨むのなら魔族と関わった己を恨め」
「生憎と、エーデ師匠には感謝はすれど、恨む気持ちはこれっぽっちも無いね。例え今ここで殺されようとも」
「魔族に魅入られた裏切者め。死ね」
『風雷姫』が僕たちに止めを刺そうと右腕を掲げる。
……ダメだ。逆転する手どころか逃げる手段すら思いつかない。
半ば諦めようとした時。
「あらぁ、ダメよぉ。その子たちは将来有望な冒険者なのよぉ。こんなところで死なせちゃダメでしょうぉ?」
『風雷姫』の右腕が弾かれる。
弾いたのは―――――エーデ師匠だ。
魔女の森からゆっくりと姿を現したエーデ師匠の手には鞭が握られていた。
「もぉ、わたくしとは無関係を装いなさいって言ったのにぃ、それを無視するなんて師匠不幸ものねぇ、ヴォルはぁ」
「エーデ師匠……、すいません。でもその命令だけは聞けませんよ。僕をここまで育ててくれたエーで師匠を見捨てるだなんて」
「その所為で、今ぁ、命の危険があったのにぃ?」
「うぐっ、それを言われると弱いんですが」
「相手の実力を見極めてから生意気な口を利く事ねぇ。どう見ても相手が悪いでしょうよぉ」
確かに、今となっては『風雷姫』に挑んだのは間違いだと分かる。
最近は僕とパトルの新人離れした強さに、モコの【ものまね師】のスキルの覚醒、アリエスの【極大魔力】の使いこなしと、順調にいきすぎて調子に乗ってたと言わざるを得ない。
S級冒険者も何とかなるのではないかと。
甘かった。シロップくらい甘かった。
エーデ師匠が来なければ僕たちはここで終わっていただろう。
「ほらぁ、下がってなさいぃ。ここからはわたくしが相手するわぁ」
エーデ師匠はそう言いながら鞭を軽く振り回しながら『風雷姫』と対峙する。




