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僕はヴォル! スキルは【回転】!  作者: 一狼
第4章 護れ! 導きの守護魔女を!
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035.VSイチカ

「そうか、ならば死ね」


 途端に口調が変わる『風雷姫』。


 殺気も撫でるようなものから切り裂くようなものへと変化する。


「【サンダージャベリン】」


「うっ……わっ!?」


 急に放たれた雷の槍を、僕は右足を軸に体を【回転】させて辛うじて躱す。


 やっぱり戦闘は避けられなかったみたい。


 僕は剣を抜いて『風雷姫』に駆け寄って間合いを詰めようとする。


 『風雷姫』の周りに十数もの【ウインドボール】が浮かび上がる。


「【エアロボム・ピンボール】」


 だけど、『風雷姫』の放つ風の球の乱射によって近づくこともままならない。


 さっきみたいに足を軸に体を【回転】させたり、剣で風の球を弾いたり凌いでいたけど、流石に数が多い上に威力が普通の【エアロボム】とは違って僕は次第に乱撃に曝される。


「うっ……ぐぅっ……!」


 ああっ、いつまで続くんだ、これっ!?


 剣で弾いたと思ったら反対から攻撃を喰らい、体を【回転】させて躱したかと思ったら上下左右からの一斉射撃。


 近づく事すら出来ないのか?


 そう思いながらも1歩1歩足を動かして前へ進んでいたけど、終いには乱撃でその場に動きを縫い留められてしまう。

 と、不意にその乱撃が止まった。


「なぜ耐える。命乞いはしないのか?」


 ……? 言っている意味が分からない。


「魔族から命乞いは教えてもらわなかったのか?」


 こいつ……!


 エーデ師匠を所詮は魔族、そういう目で見ているのだと分かると体が熱くなった。


「生憎と、あんたみたいに相手を気遣うような温い教えを受けていないんで」


「そうか。ならば遠慮はいらんな。【エアロボム・ピンボール】【サンダーボール・ピンボール】」


 ちょっ!?


 右手で【エアロボム・ピンボール】を。左手で【サンダーボール・ピンボール】を。


 今度は風の球だけでなく、雷の球をも交えての乱撃。


 勿論さっきまで風の球すら捌ききれなかったのに、雷の球まで加わっては手も足も出ない状態に追い込まれる。


 おまけに雷の球は接触すれば痺れて体が一瞬硬直してしまう。


 ダメだ。このままじゃやられてしまう。


 僕は奥の手の1つを使う事にした。


「……む?」


 『風雷姫』は僕の変化に気が付いたみたい。


 さっきまでは2種の球に成す術もなくその身を晒していたけど、今は喰らっても多少は無視できるほど体を前に動かすことが出来る。


 剣で弾いていたのも、弾かれるのではなく弾けさせている。


「【ウインドエッジ】」


 だけど流石『風雷姫』。


 様子の変わった僕にすかさず別の魔法を、風の刃を放ってきた。


 ふふふ、さっきまでの僕だと思ったら大違いだ。


 風の球同様、風の刃を切り裂く。


 『風雷姫』は目を剥く。


 普通の冒険者が放つ【ウインドエッジ】とは違ってS級の放つ【ウインドエッジ】だ。


 本来であれば、風の球とは違い風の刃によって僕の剣は真っ二つにされていただろう。


 だけど僕の奥の手の1つ、魔力纏装によってそうはいかなかった。


 これはエーデ師匠から教えてもらった、ある魔族の一族の秘術だ。


 生物は総じて魔力を持っている。


 その魔力を体や武器に纏わせ威力や防御力、そして身体能力を高める技術だ。


 実はこの魔力を纏わせるのは、誰でも大なり小なり無意識に行っていたりする。


 達人ともなればその纏わせる魔力が凄くて威力が桁違いなのだ。無意識だけど。


 それを意識的に行い、魔力の出力次第によっては身体能力強化系やエンチャント系のスキルさえも上回ることが出来るのだ。


 魔力全開で纏わせるのを10とするなら、普段は1か2くらいの出力で魔力纏装を行っていた。


 だけど、相手はS級冒険者だ。


 流石に魔力全開で魔力纏装を行えばあっという間に魔力が空っぽになるから、7~8くらいの出力で魔力纏装を行う。


 それでも効果は絶大で、S級の放つ【ウインドエッジ】を弾けさせていたのだ。


 出力7~8の魔力纏装を行う事で身体能力も上がり、【エアロボム】と【サンダーボール】の乱撃を強引に無視して一気に『風雷姫』に駆け寄る。


 あと1歩。


 剣が届く間合いになろうとしたところで『風雷姫』の次の攻撃が僕を襲った。


「【ライトニング】」


「ぐぁぁぁぁぁぁっ!?」


 太さが1mくらいの雷の砲が、僕を吹き飛ばした。


 魔力纏装のお陰で致命傷まではいかなかったけど、全身を雷で焼かれ一瞬にして行動不能に陥ってしまった。


 僕は何とか立ち上がりながら懐から『十三番目の狐』を討伐した報酬で貰った女神像を取り出す。


「女神よ、我に癒しを。『ヒール』」


 その効果は直ぐに表れた。


 全身を覆っていた火傷が瞬く間に治っていく。


 よし、まだ戦える。


 そう思っていたけど甘かった。


 僕はまだ、『風雷姫』を甘く見ていた。


「【ライトニング】【ライトニング】【ライトニング】【ライトニング】【ライトニング】【ライトニング】」


 傷を癒す暇もなく雷の砲が僕の体を焼く。


「――――――――――っ!!」


 僕は声のならない声を上げるけど、『風雷姫』は容赦がなかった。


 体が痺れ、思考が途切れ途切れになりながらも、僕はエーデ師匠の事を考える。


 ……エーデ師匠の、所へ、行か、せる、か。


 気が付けば僕は地面に倒れ、それを『風雷姫』は見下ろしていた。


「魔族の魔力纏装には驚いたが、所詮はこの程度か。無駄な足掻きはもう終わりか? ならば死ね」


 う……、あ……?


 魔力纏装を、知っている……?


 いや、そうじゃ、ない……


 このまま、じゃ、やられる……


 女神像で、傷を癒し、て……


 違う、その前に、避けな、きゃ……


 ダメだ、思考、がまとまらな、い……


 『風雷姫』が何やら呟いている。


 止めの魔法を放とうとしているみたいだ。


 だけど、その時―――――


「させる、かー!」


 突然現れた誰かが『風雷姫』の止めの魔法を弾き飛ばした。


「よくもあたしのヴォルを傷つけてくれたな!」


 僕はその誰かを見て、驚く。


 燃えるような赤い髪をツインテールにし、おっぱいの大きな美少女。


 両手には身の丈もあるグレートソードを持ち、片方は魔剣で刀身が炎に包まれている。


 それは呆れられて僕の元を去ったと思われたパトルだった。











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