Side-2.パトル2
ヴォルとパーティーを組んだあたしは充実した日々を過ごしていた。
まぁ、ザインの悪意によってヴォルの悪評が広まったせいで、パーティーメンバーを増やせずにいたけど。
なんだよ、ヴォルのスキル【回転】が使えないだって?
ザインの目は曇ってんな。
傍目から見れば、ただ単に物を回転させるだけのスキルに見えるが、ただそれだけじゃない。
単純だからこそ威力があり、応用も効きやすいのだ。
事実、ヴォルは【回転】スキルを鍛え上げる事によって、スキルの威力を攻撃力に転嫁し、更にはスキルの応用で様々な技や道具をも生み出している。
おまけにコストも回転させる分だけなので魔力の消費も随分と安い。
これが広範囲攻撃魔法だとすれば、1発撃つのに時間と魔力消費がヤバかったりする。
その点、【回転】スキルはコストが少なく済む分、スキルの使用回転率が高いのだ。
それが分からないからザインは雑魚なんだな。
暫くはヴォルの悪評でパーティーメンバーは集まらなかったけど、紆余曲折を経て2人の仲間がパーティーに入ってくれた。
【ものまね師】のモコ・モコモコ。
【極大魔力】のアリエス・アリエル。
2人ともスキルを見てわかる通り、一癖も二癖もある奴らだ。
だけど、今はあたし達にとってかけがえのない仲間でもある。
そうして何とか4人パーティーを組む事になったあたし達だが、ヴォルが急に常々自慢していた師匠に合わせてくれると言う。
ヴォルを冒険者に育てた師匠に興味があったが、ヴォルに連れられて行った場所が魔女の森の奥だった。
何かやな予感がした。
そうして会わせられたのは、魔女の森の由来となった魔女――魔族の女だった。
人族と魔族は不倶戴天の敵同士。
これがこの世界の常識だ。
実際、十数年前まで魔族の王、魔王による人族への侵攻が行われていた。
長い戦い――人魔大戦は勇者が魔王を討ったことで人族に平和が訪れた訳だが、それで人族と魔族の仲が急によくなったりはしない。
それなのに、ヴォルは魔族を師匠だとあたし達に紹介する。
当然、あたしは反発した。
しかもよりにもよって、魔族の女だ。
際どい衣装を着た、妖艶な雰囲気を醸し出している魔族の女。
この魔族の女がヴォルを師匠として手取り足取り教えていただと?
何故か知らないが、面白くない。
すっごく、面白くない。
ヴォルからは人族も魔族も変わらないと説得された。
人族に悪人が居る様に、魔族にも人族にとって善人な者も居ると。
あたしは不承不承納得したが、やっぱり面白くない。
何でヴォルは人族よりもこの魔族の女を持ち上げるんだよ。
だけどヴォルが師匠を大事にし、あたし達が認めようとしても、世間はそうは見てくれない。
いつか来るであろうと思われていた魔女の森の魔女の討伐の話が持ち上がった。
当然、ヴォルはそんなことはダメだと憤慨し、師匠を助けるのだと魔族の女の元へと向かって行った。
「追いかけなくてよかったです?」
「なんだよ。あたしに魔族の女を助ける手助けをしろとでも言うのかよ」
ヴォルを黙って見送ってしまったあたしに、モコが話しかける。
良かったのかと。
「そうは言いませんけど、ヴォルさんがエーデさんを助ければ更に師弟の絆が深まるです」
「……む、それはそれで面白くないな」
「それに、このままだとヴォルさんは捕まってしまうです」
「はぁっ!? 何でだよ!」
「だってこれって領主様からの依頼ですよ? その邪魔をするヴォルさんは魔族の味方とみられても仕方ないです」
……言われてみればそうだ。
魔族を庇って領主の使命を受けた冒険者に逆らえばただじゃすまない。
「吾輩たちに取れる手段は2つ。仲間ヴォルを止めるか、仲間ヴォルと供にお尋ね者になるか、だな」
アリエスの提案にあたしは言葉に詰まる。
魔族の女を助けるだなんてあたしは出来ない。
ならば取れる手段はヴォルを止める事。
だけど、さっきのやり取りでもヴォルは止まらなかった。
「パトルさんはエーデさんを助けるのは嫌です?」
「当たり前だろ。魔族だぞ、人族の天敵の」
「ここは東大陸ですからそれほど魔族差別が激しいわけじゃないですが……」
確かに魔族とやりあっていた西大陸と違い、ここ東大陸では魔族が居ない為、魔族差別はあまり見たことが無いな。
とは言え、人族と魔族が敵対しているのは人族全部の認識だと思っていたんだが。
「パトルさんはエーデさんが魔族と言うのを抜きにして、助けるのは嫌です?」
「嫌だね」
「何故です? 魔族を関係なしにしてですよ?」
……なんでだろうな、何となく嫌だ。
魔族じゃないのに、あの女のためにヴォルが頑張るのは嫌だ。
「これはまだ自覚していないみたいです」
「そのようだな。見ている分には面白いが」
モコとアリエスの2人が何やらごそごそ言っているがよく聞き取れない。
「ふぅ、そんなパトルさんにもう1つの手段を教えるです」
「は? なんだよ、まだ取れる手段があるのかよ」
「まぁ、裏技みたいなものです。根本的解決になってませんが、今は有効な手段ですね」
「おい、教えろよ」
あたしはモコを促してその手段を聞く。
あの魔族の女を助けるのは嫌だし、だからと言ってヴォルを見捨てるのは論外だ。
ならばあたしはあたしの出来る事をする。




