Side-1.パトル1
あたしの名前はパトル・バトル・ハドル。
人間の鍛冶師の親父とドワーフの冒険者のかーちゃんを親に持つハーフドワーフだ。
かーちゃん譲りの真っ赤な髪が自慢だけど、ハーフドワーフの所為か背が小さいのが悩みでもある。
え? 親の立場が逆じゃないかって?
あたしもそう思う。
普通はドワーフが鍛冶師で父親なんだろうけど。
冒険者のかーちゃんが武具の購入で親父と知り合ったのが切っ掛けだったらしい。
ドワーフで冒険者なんて普通はあまりあり得ない。
しかも女で。
かーちゃんはかなりお転婆だったみたいだ。
そんなかーちゃんの影響を受けたあたしは、小さいころから冒険譚を聞かせられて育ったため、将来は冒険者になろうと親父の鍜治場から大人用の剣を持ち出しては冒険ごっこをしては叱られていた。
そんな小さいころから大きい剣をぶん回していたせいか、5歳の時の祝福の儀では女神Alice様から【大剣二刀流】と言うレアスキルを授かった訳だ。
あたしは早速冒険者なろうと直ぐに町に向かおうとしたけど、かーちゃんに止められた。
如何に凄いスキルだろうと使いこなせなければ意味が無いと。
その為、かーちゃんの指導の下、成人する15歳まで徹底的に鍛え上げられた。
冒険者になって直ぐに死なないようにと。
かーちゃんに聞かされた冒険譚では華やかな面を思い浮かべていたけど、実際の冒険者と言うのは過酷な職業とも言われた。
小さい頃はそんなかーちゃんに反発してたけど、大きくなるにつれてかーちゃんの言う事が正しいことが分かり、今では感謝している。
そうして待ちに待った15歳となったあたしは、早速ザースディーンの町を訪れて冒険者登録をしようとした。
餞別に親父から2本のグレートソードを貰って、意気揚々と憧れていた冒険者ギルドへと向かった。
受付で冒険者登録を行うと早速声がかかる。
お? 冒険者通過儀礼の新人いじめか?
違った。
ただの勧誘だった。
と言うか、冒険者になったばかりのド新人に声を掛けるか、普通?
「へへ、どうだ? 俺たちが手取り足取り冒険者の流儀を教えてやるぜ」
ザインと名乗ったこの男、胡散臭すぎる。
胡散臭すぎるどころかその勧誘で本当に仲間になると思っているのだろうか。
「断る!」
あたしがきっぱりと断りを入れると、その事を理解したザインが顔を真っ赤にして怒鳴り散らす。
「お、おまえ、この町の冒険者ギルドでコサインさんの誘いを断るのかよ」
「あたしはこの町に来たばかりだからそんな奴は知らん! そもそもお前は胡散臭いんだよ」
「ど、何処が胡散臭いんだよ!?」
「登録したてのド新人に、甘い言葉で誘惑してくる奴なんて、どう見たって怪しい奴じゃないか。おまけに声を掛けたのがあたしのような美少女だったら尚更だな!」
自分で言うのもなんだが、村では美少女と言われていた。
どうも親父譲りのイケメンが遺伝したらしく、人間・ドワーフともに美少女に見えるらしい。
あたしはあまり気にしたことなかったけどな。
そんな事よりそこの黒髪の少年が気になる。
ザインよりも明らかに強い……!
冒険者ギルドに来て早速強者に出会えるとは。
だが、話を聞けばこの黒髪の少年は、冒険者登録をして間もないE級だと言う。
そしてザイン曰く、ズルをして冒険者としての功績を積んでいるらしい。
とてもそうは見えないんだが。
……っ! そうだ、良い事を思いついた。
そこであたしは一計を案じ、黒髪の少年とザインを戦わせることにした。
黒髪の少年の実力を見極める為だ。
上手い事口車に乗ったザインは、黒髪の少年と決闘をする事になった。
まぁ、黒髪の少年をなし崩し的に巻き込んだ形になってしまった訳だが、黒髪の少年も逆にあたしに条件を付きけて来た。
黒髪の少年――ヴォルが勝ったらあたしとパーティーを組む事と。
これはあたしにとっては願ってもいないチャンスだった。
冒険者ギルドに来て早々、強者とパーティーを組めるだなんてな。
決闘の結果によってはザイン達とパーティーを組む事になるのに、もうヴォルとパーティーを組んだ気になっていいのかって?
心配する必要もないね。
と言うかなかったね。
結果はあたしの予想通り、ヴォルの圧勝で終わったよ。
「これであたしはキミの物になった訳だ」
「人聞きの悪い事を言わないでよ。パーティーメンバーでしょ、パーティーメンバー」
あたしのちょっとした悪戯に、ヴォルは困った表情をしながら答える。
うん、その表情もいいじゃん。
こうしてあたしはヴォルと出会った。
これが運命だったとは知らずに。




