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僕はヴォル! スキルは【回転】!  作者: 一狼
第4章 護れ! 導きの守護魔女を!
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032.噂

「タンジェさん、一体どういうことですか!」


 イーストザースディーンの冒険者ギルドの受付嬢であるタンジェさんは、僕の剣幕におっぱいを揺らしながら驚いていた。


 って、おっぱいを見ている場合じゃない。


「何の事かな、ヴォル君」


「魔女の森の魔女を退治するって噂を聞いたんですけど! しかもS級冒険者を派遣するって!」


「ああ、その事ね。もう噂になってるんだ。うーん、あまり公には言えないけど、それは事実よ」


 そ、そんな……!


「魔女の森の魔女は何も悪い事をしていないじゃないですか。寧ろ町へ向かうモンスターを退治したり、森で迷子になった人を届けたりとか、町の手助けをしているんですよ。それが何故、退治されるんですか!」


「え? 魔女が町の手助けをしているって聞いたことないわ。逆に被害報告が出ているわよ。町の男を誑かして森に誘い込んだとか、森でモンスターを繁殖させて町に嗾けたりとか、この前の倒壊した商会の店舗も魔女の仕業だって報告が上がってきているけど?」


 エーデ師匠が男を誑かす?


 確かにエーデ師匠は妖艶な雰囲気を醸し出す女性魔族だけど、町の男を誑かして森に誘い出した事なんて一度もない。


 と言うか、それって戦うすべを持たない人が森に入ってモンスターの被害に遭っただけなんじゃ。


 森でモンスターを繁殖させてるのだって、まるっきり逆じゃないか。


 エーデ師匠はモンスターを増やさないように、人知れず倒しているのに。


 あと、最後の商会の店舗崩壊は完全に冤罪だよ。


「タンジェさんは、その被害報告が真実だって信じているの?」


「そうね。正式な被害報告じゃないけど、行方不明になっている人は出ているし、モンスターの被害も年々増えてきているわ。そう考えると、ね」


 ……確かに、何も知らない人が聞いたら魔女の森の魔女の所為だって思うかもしれない。


 けど! 事実を知っている僕が、エーデ師匠の弟子である僕が、エーデ師匠の悪評を晴らさないでどうする!


「なぁ、なんで急にそんなことになったんだ? これまで魔女の森には魔女が居るって知ってたんだろ?」


 それまで黙って後ろでやり取りを見守っていたパトルたちが、今回の件について疑問を挟んできた。


「そうね。今回の魔女討伐は領主からの強制依頼なのよ。長年、懸念事項であった『十三番目の狐』が解決したでしょ。それならと、もう1つの懸念事項である魔女もどうにかしようって。それで可能性のあるS級冒険者を派遣するようにって」


 そ、そんな……


 僕たちが『十三番目の狐』を退治したから、その所為で。


「あ、おい! 何処へ行くんだよ、ヴォル!」


 踵を貸した僕をパトルが呼び止める。


「決まっている。エーデ師匠を助けるんだよ」


「なぁ、あいつだって分かっていると思うぞ。いつかかこうなるって。余計な事をしない方がいいんじゃないのか? ヴォルもこれ以上あの女に係わるなよ」


「エーデ師匠を見捨てろって言うのっ!?」


 僕はパトルの言葉に思わず怒鳴り返す。


「そうは言ってない! だけど、ヴォルは人族であの女は魔族なんだ」


「それがどうしたって言うの。人が仲良くなるのに、そこに人族や魔族は関係ない」


 僕はそれ以上何も言わずに後ろで喚き立てているパトルの声を無視して魔女の森へ――エーデ師匠の元へ向かう。


 僕はバイクをかっ飛ばして魔女の森を駆け抜ける。


「エーデ師匠!」


「あらぁ、どうしたのかしらぁ。そんなに慌ててぇ」


 僕はエーデ師匠の住むログハウスの扉を勢いよく開けて飛び込むと、そこにはのんびり構えているエーデ師匠が居た。


 僕はエーデ師匠にS級冒険者が差し向けられた事を話す。


「そう。そろそろ潮時なのかもねぇ」


「潮時って……」


 まさか。


「いい加減にここを離れた方がいいのかもねぇ」


「エーデ師匠は何も悪い事をしていないでしょう! 逆にザースディーンの町を助け敵じゃないですか!」


「そんなのは関係ないのよぉ。魔族がそこに居る、それだけで人族にとって討伐の対象になるのよぉ。寧ろこれまで見過ごされてきたことの方がおかしいのよぉ?」


 そんなの納得できない!


 魔族にだって悪い人は居ないって教えてくれたじゃないですか。


 エーデ師匠が自ら。


「いい機会だから貴方ももうここに来ない方がいいわぁ。魔族と関わっていると知られると面倒な事になるわよぉ」


 エーデ師匠には魔族が師匠だと周囲に言わないように厳命されている。


 この前のパーティーメンバーをここに連れてきて教えたのは、エーデ師匠の命令でもあるけど、パーティーメンバーを信頼できる僕の仲間として見極める為でもあった。


 だからこれ以上、魔族とかかわりがあることを知られてはならないとエーデ師匠は言う。


「知られたっていいですよ。僕の師匠はエーデ師匠だけです。人族と仲良くなれる魔族だって僕は知ってます」


「もぅ、頑固な弟子ねぇ。わたくしは、貴方を一人前と認めたわぁ。一人前ならば聞き分ける事ねぇ。貴方は魔女とは関係ない、ただの町の普通の冒険者だってねぇ」


「エーデ師匠を助けちゃダメなんですか? エーデ師匠には僕の手助けはいらないんですか?」


「ふふふ……、自らのピンチを弟子の手助けを借りて解決するほど落ちぶれてはいないわよぉ。S級冒険者はわたくしが何とかするわぁ。貴方は何も知らないふりをして町に戻りなさい」












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