031.有頂天
「確かにパーティーで盗賊退治をしなさいと言ったけどぉ、まさかあの『十三番目の狐』を退治するとはねぇ」
「え? エーデ師匠、『十三番目の狐』を知っていたんですか?」
「そりゃぁ、噂程度にはねぇ」
てっきりエーデ師匠はザースディーンの町の事は疎いと思っていたけど、よく考えれば時々僕の知らない時に町に行って買い物やら様子を窺ってたっけ。
いつも家に居るから引きこもりだと勘違いしそうだけど、僕がエーデ師匠の家に来る前からちょくちょく町に行ってたりしてたよね、よく考えれば。
「もう貴方は立派な一人前ねぇ」
「本当ですかっ!?」
「それはぁ、そうでしょう。仲間と協力して、長年町に蔓延っていた盗賊団を倒したのよぉ。これで一人前認定をしない師匠は居ないわよぉ」
「そっか……僕はエーデ師匠に認められた一人前なのか……!」
「ふふふ……、後は貴方の思うがままに冒険をするといいわぁ。あと、一人前になったからと言っても、まだ一流冒険者としての一歩を踏み出したに過ぎないわぁ。精進する事ねぇ」
「はいっ!」
「と言う事で、エーデ師匠から一人前と認められたんだ」
「ふーん、またあの女のところに行ったんだ」
さっきまでニコニコと笑っていたパトルだが、僕がエーデ師匠の事を話すと急に不機嫌になった。
パトル・バトル・ハドル。
燃えるような赤い髪をツインテールにした、身長150㎝くらいのおっぱいの物凄く大きい美少女だ。
背が低いのは、彼女がハーフドワーフだからだ。
背中には彼女の身長ほどもある、2本のグレートソードを装備している。
当然、背のちっちゃい美少女が、己の身長もあるグレートソードを2本も扱えるのかと言えば、扱えたりする。
それは、【大剣二刀流】と言うスキルを持っているからだ。
ただしパトルはスキルに依存したりはせずに、【大剣二刀流】を使いこなすために15歳まで冒険者登録をせずに鍛え上げてきた強者だ。
パトルは僕たちのパーティーのメインアタッカーだ。
前面に出て戦うからか、性格的に考えるより行動に移す方が好みの様だ。
最近は脳筋になりつつあるんじゃないかと疑っている。
そんな彼女が、急に不機嫌になった。
僕、何か変なこと言ったかな?
「確かに『十三番目の狐』の討伐は物凄い功績です。エーデリカさんも認めざるを得ないはずです。ヴォルさんは師匠に認められて嬉しいのでしょうが、私は勧誘がウザくて仕方ないです。何とかならないです?」
「あー、急に手のひらを返してきたように勧誘してきたんだ」
「そうなんです」
そう言いながらモコは深いため息をつく。
モコ・モコモコ。
ふざけたような名前だけど、真面目に本名だったりする。
ピンクブロンドのモコモコヘアに、身長165㎝と僕よりも背が高く、おっぱいの大きい美少女だ。
モコのスキルは【ものまね師】と言って、当初は近くにいる人の動きを真似るだけのスキルだった。
その為、周りからは使えないスキルと認定されていて、14歳で冒険者になって5年間、ソロでずっと活動していた。
ところが、僕たちとパーティーを組んで活動して行くうちに、【ものまね師】のスキルの仕組みが分かっていき、ついにLv99になったとたんに使えるスキルに変わったのだ。
これまでは近くにいる人の動きをトレースする【ものまね師】だったけど、Lv99になったらこれまで見てきたスキルやその人の技術を真似する【ものまね師】へと変貌を遂げた。
これにより、モコは1人でほとんどの事が再現可能の完璧超人に変わったんだけど、『十三番目の狐』を討伐したことでそのことが知れ渡り、これまで見向きもされなかったモコは注目を浴びて、他のパーティーの勧誘ラッシュにあってると。
中にはパーティーから追放した元仲間(5年前の初心者時に組んでいた)からの勧誘もあったとか。
と言うか、パーティーメンバーの引き抜きはしないで欲しいなぁ。
「アリエスも似たようなものなんだよね?」
「そうだな。吾輩も使えないと散々言われてきたが、こうも手のひら返しが凄いとある意味感心するな」
そう言いながらも、少し嬉しそうに話すアリエス。
今まで切り捨てられた仲間に意趣返しが出来たことが嬉しかったのかな?
アリエス・アリエル。
金髪のイケメン。
ただし眉にちょっと皺が寄っている難しい顔をしているのがデフォルトだ。
身長は170㎝と背が高く、年は18歳と意外と若い。
意外と言ったのは、吾輩だの汝だの言い回しがちょっと年寄りっぽいから。
そんな彼はモコと同じく色々なパーティーから使えないと追放されてきた経緯がある。
アリエスのスキルは【極大魔力】。
これだけ聞けば凄いスキル持ちだと思える。
が、スキルは基本1人に付き1つだ。
つまりアリエスは【極大魔力】と言う物凄い魔法の元は持っているけど、肝心の魔法スキルが無いから全くの役立たずのスキルだったと言う訳だ。
けどアリエスは諦めずに【極大魔力】を利用する術を探し、魔道具で魔法を再現する方法を見つけた。
これなら【極大魔力】も活用でき、魔法も高威力で発揮できる、と当初はそう思っていたみたい。
けど実際は、モコとは逆に【極大魔力】は威力がありすぎるスキルだったのだ。
アリエスが手に入れた魔道具は初級の魔法を放つだけのものだったんだけど、【極大魔力】が凄すぎて、初級魔法でも威力がありすぎて他のパーティーメンバーに被害を出していた。
その為、アリエスはパーティーから追放され続けていた。
そんな時、僕たちが魔法使いが欲しいと言う事でアリエスをパーティーに誘った訳だ。
そりゃあ最初の頃は上記に言っていたように、魔法の威力がありすぎて僕たちにも被害があったけど、エーデ師匠の助言と制御用の魔道具のお陰で、今では多少なりと魔法の放出時に多少のコントロールが出来るようになった。
そのお陰でアリエスも使える人物と化した訳だけど、モコと同様にいろんなパーティーや元パーティーから勧誘を受けていたりする。
「まぁ、吾輩は今更このパーティーを出ていくつもりはないがな」
「うん、私もです」
「あたしも出ていくつもりはないからな! 例えどんなに金を積まれようとも、好待遇で迎え入れると言ってもな!」
モコとパトルも嬉しいことに僕のパーティーに居続けると言ってくれる。
パトルも【大剣二刀流】と分かりやすいスキル持ちだから、引き抜きの勧誘が激しかったりする。
……そう言えば僕は他のパーティーへの誘いが無かったような。
それは僕がパーティーリーダーだからだよね?
【回転】スキルが使えないスキルと認定されているからじゃないよね?
くっ……! 一度付いた認識はそう簡単には覆らないか。
他の人からは、ただ物を回転させるだけのスキルと思われているからなぁ。
実際のところはこの【回転】スキルは使えるスキルなのだ。
……まぁいいか。パトルたちが僕のスキルの有用性を理解してくれているから。
だから僕は浮かれていた。
エーデ師匠にも注意されていたのに。
仲間にも恵まれ、冒険者としても成功しつつあり、将来が明るい。調子に乗るのは当然だった。
そんな僕にある噂を耳にする。
――魔女の森の魔女の討伐が決定したと――
僕は浮かれて気分が一気に吹き飛んだ。




