029.討伐完了
パトルとカウボーイが互いに剣を交える。
一見すると互角に見えるけど、不利なのはパトルの方だった。
さして広くもない部屋で3本のグレートソードが飛び交っているのだ。
2本のグレートソードを扱うパトルが部屋の広さが邪魔して思うように攻撃を出せずにいた。
「思ったよりもやりますね。その2本のグレートソードは見掛け倒しじゃなかったみたいですね」
「くそっ、この程度の剣技、あたしにとっちゃ屁でもねぇのに!」
パトルも狭い空間での【大剣二刀流】を操る術を身に着けているけど、僕たち4人にカウボーイと部屋の中に5人も居れば思うように動けないか。
「ですがこれ以上時間はかけられません。一気に決めさせていただきます。
――"炎よ、踊れ"――」
するとカウボーイのグレートソードから炎が噴き出した。
炎を纏った一撃がパトルを襲う。
「うぉっ!? 【十字受け】!」
グレートソードを交差してパトルはカウボーイの一撃を何とか防ぐ。
だが、炎を纏ったグレートソードのカウボーイの一撃より、パトルのグレートソードにヒビが入る。
いや、ヒビと言うより炎の熱で溶かされたっぽい。
「ああっ!? あたしのグレートソードがっ!?」
やばい、このまま押し込まれるとパトルのグレートソードが真っ二つにされちゃう。
僕は腰に下げたポーチからパチンコ玉を取り出し、【回転】スキルでジャイロ回転を加えた指弾を放つ。
だが、カウボーイの目を狙い放った指弾は、パトルからあっさり引き下がることで躱される。
二射・三射と続けざまに放った指弾も炎を纏ったグレートソードを盾にされて阻まれた。
「ほぅ……、魔剣か」
「そう、魔剣・炎武帝です。炎を纏うだけですが、単純な分強いですよ」
アリエスの目利きに嬉しそうに語るカウボーイ。
自慢の魔剣の披露に気を良くしたんだろうけど、ちょっと隙あり、だね。
「【アイスバインド】です!」
モコが地面に手をついて放った氷の蔦が、カウボーイまで伸びてその足を氷漬けて縫い付ける。
「っち、小細工を。と言うか、貴女は【石法師】のスキル持ちじゃなかったんですか!?」
カウボーイは足を縫い付けた氷の蔦を魔剣・炎武帝で切り付け溶かし、慌ててその場を離れる。
そして気付く。
モコが【石法師】以外のスキルを使っていることに。
自分の【路傍石】のスキルを見破ったのは、同じ【路傍石】だろうと予測はしたんだろうけど、そこから先はどんなに考えても分からないだろうね。
モコは既に幾つものスキルを物真似している。
一般的なスキルは最早モコにとっては自由に扱う事が出来る。
まぁ、それでも使いこなすにはそれなりに練習は必要だけど。
その間にも僕はジャイロ回転指弾を要所要所で放ち、パトルはうざがって指弾を何とか躱しているカウボーイに斬りかかる。
とは言え、剣の性能ではパトルが負けているのでイマイチ決め手に欠けているのも事実だ。
「【ドラゴンファング】!」
「甘いです!」
グレートソードが持ちそうにないと見たパトルは勝負に出た。
2本の剣を上下からの突きを放つスキルだ。
だけど、その強引に放ったスキルの隙を見逃さなかったカウボーイがパトルのグレートソードを打ち砕く。
炎熱で断ち切られたグレートソードだったけど、上の牙は届かなかったが、下の牙はカウボーイの脇腹を切り裂いた。
「くそっ、痛み分けか」
「痛み分け? それこそ甘い判断です」
カウボーイは懐から女神像を取り出し、脇腹の傷を癒そうとする。
いやいや、甘いのはどちらかな?
僕たちが黙ってそれを見ていると思っているのならプリンよりもめっちゃ甘いよ。
僕はカウボーイの女神像を持っている腕を目掛けて指弾を4発放つ。
カウボーイは片手で魔剣・炎武帝を逆手に持ちながら盾にして僕の指弾を防ぎつつ、もう片方の手で女神像をもって傷を癒そうとする。
まぁ、さっきから指弾で攻撃していれば傷を癒させまいと狙うって分かっているから防ぐよね。
「【ホーミングボム】です!」
けどそれは囮で、僕に意識を向けさせモコの【無魔法】の自動追尾弾で女神像を狙う。
「それも予想済です!」
カウボーイは器用にも足元に転がっている物を蹴り上げ、モコの放った【ホーミングボム】を迎撃させる。
うん、それはこっちも予想通りなんだよね。
あわよくば、モコの攻撃で隙を作れればと思ったけど。
本命はこっち。
「【ライト】」
今まで黙っていたアリエスの放つ【光魔法】による【ライト】。
本来であれば明かりを灯す魔法だけど、戦闘時においては持続時間をゼロにしてフラッシュの目暗ましとして使える魔法でもある。
それがアリエスの【極大魔力】で放てばどうなるか。
部屋を塗りつぶすほどの最大瞬間光力が、カウボーイの目を焼く。
「がぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」
当然僕たちは合図とともに目を思いっきり瞑り、【ライト】の光をやり過ごしている。
思わぬ事態に慌てたカウボーイは、女神像を取りこぼし思わず目を擦っていた。
それでも魔剣・炎武帝を手放さなかったのは流石と言うべきか。
だけどパトルは残った片方のグレートソードで魔剣・炎武帝を抑え、そのまま接近し頭突きをぶちかます。
ドゴンッ!
とても頭突きとは思えない音を響かせ、カウボーイはその場に崩れ落ちた。
「まさか、こんな単純な、目暗まし、という手に、引っかかるとは……」
「よっしゃぁっ! 『十三番目の狐』頭領・カウボーイ討ち取ったり!」
パトルの勝鬨が部屋の中に響き渡る。
気持ちは分かるけど、ちょっと残心が足りないよ。
でもまぁ、カウボーイは完全にダウン。部屋の中、もしくは部屋の外にも屋敷の中にも手下の気配もなし。
約7年。
誰も成しえなかった『十三番目の狐』を僕たちが討伐した瞬間だった。




