026.討伐開始
『十三番目の狐』の賞金首は2種類ある。
1つは『十三番目の狐』の頭領の賞金首。
これには頭領の名前、似顔絵が表示されて、勿論デッドオアアライブだ。
2つ目は『十三番目の狐』の組織としての賞金首。
組織として壊滅させてもOKだし、組織が機能しないように幹部だけを討伐してもOKとなっている。
賞金額は、その時の討伐状況に応じて支払われ、『十三番目の狐』を完全に潰せはその賞金首は莫大な額となり、幹部だけだと最低限の額となる。
まぁ、幹部だけでもかなりの額にはなるけど。
2つ目の賞金首の内容がふわっとしているのは、頭領以外の幹部などの上層部の情報が不明だからだ。
頭領の名前や似顔絵が出回っているのは、第2回目の討伐時に自らが表に出て名乗りを上げたからだ。
何が言いたいかと言うと、クローディアが調べた情報凄いって事。
クローディアの情報の元、僕たちは既に2人の幹部を捕まえた。
クローディアと出会った小屋に、その2人の幹部を縄で雁字搦めにふん縛って転がしている状態だ。
「随分あっけなく捕まえることが出来たな」
「それだけクローディアの情報が正確だったって事だね」
クローディアの情報に基づいて、それぞれの幹部が居る隠れ家、拠点を奇襲して捕まえた。
当然、幹部のほかにも手下が数人いたけど、ベストな時間での襲撃だったため、殆ど被害が無く無事完了だ。
因みに、クローディアは依頼は終わったとばかりに僕たちに必要な情報を渡すと、マックスを連れて去って行ってしまった。
どうやら討伐まで手を貸すようなことはなかったみたい。
あわよくば、とは思っていたけどそこまで甘くはないね。
まぁ、これはエーデ師匠から与えられた僕のパーティーの試験でもあるから、4人で当たるのは当然なんだけど。
「さて、次は『流通』担当のミ・ホースだね」
「こいつは、カジノの『スタリオン』に居るみたいだな」
『十三番目の狐』の5人の幹部にはそれぞれ担当が割り当てられている。
と言うか、組織のそれぞれの役割の頂点が幹部となっている。
『情報』担当のラビットン。
ターゲット、噂、敵対組織、町の協力者などの情報を一手に担う担当だ。
『流通』担当のミ・ホース。
奪った金銀財宝や、人身売買などの闇ルートでの金銭のやり取りをする担当だ。
『強奪』担当のティガー。
強盗として押し入ったり、忍び込んでの盗み出したりと、実際に行動を起こす実行部隊だ。
『荒事』担当のサルサ。
まぁ、所謂チンピラ、下っ端と言った如何にも盗賊団としての顔で、表立って暴力で解決する担当でもある。
『支援』担当のメリー。
各担当の活動を支援する縁の下の力持ちでもある。この担当が居なければ組織として覚束ないとクローディアの情報に掛かれていた。
僕たちは、まずは『情報』担当のラビットンを捕まえ、僕たちの事を知られないようにし、『支援』担当のメリーを捕まえて各部署の動きを鈍くした。
で、次のターゲットが『流通』担当のミ・ホースって訳。
ここでミ・ホースを捕まえて、組織の資金を抑えるつもり。
「上手くいくか心配です」
「ふむ、これからの相手は先ほどの2人とは違うであるからな」
モコの心配も、アリエスの言う事も尤もだ。
先ほど捕まえた2人、ラビットンとメリーは裏方ともいえる部署で、実際戦いとは無縁の様だったからね。
盗賊団の幹部である以上戦闘面でも優秀なんだろうけど、組織として大きくなり過ぎたのか、それとも入れ替わりがあったのか、結構簡単に捕まえることが出来た。
逆に、手下の方が手強かったけどね。
あ、因みに捕まえた幹部の2人は女性だ。
だから簡単だったって言うのもあるけど。
僕たちは準備を終えて、ミ・ホースが居る『ブライアン』に向かう。
カジノである『ブライアン』はウエストザースディーンの一角にある。
カジノが盗賊団と繋がっていると言うか、盗賊団がカジノを運営しているのはお約束と言えばお約束なんだけどね。
町の人たちも最早見て見ぬふり。
触らぬ神に祟りなし。
まぁ、それだけ町に『十三番目の狐』が食い込んでいることでもある。
捕まえた幹部2人を衛兵などに突き出さないのもその為だ。
クローディアの情報に役人や衛兵に『十三番目の狐』の息のかかった人物は把握しているけど、その対処を領主にお願いした。
匿名で、クローディアの情報の一部を領主に届くようにしたのだ。
その為、現場では一部混乱が生じている。
その隙を突いて『情報』担当のラビットンを狙った意味もあるけど。
ラビットンを捕まえてから町の混乱(?)も拍車をかけ、僕たちは動きやすくなった。
なんせ情報の伝達が巧く行ってないんだからね。
極端な騒動になっていないのは、おそらくだけど後釜に座る予定の『鋼竜の晩餐』が動いているからだと思う。
そうしてウエストザースディーンの町中を進んでいると、僕たちの前に立ち塞がる人物が現れた。
後ろに20人ほどの人を引き連れた、男――コサインだった。
「よぉ、随分と景気がいいみてぇじゃねぇか。ちょいとばかし俺様に誠意を見せて献上しろや」
「卑怯な手段で儲けた金なんだろ? コサインさんに差し出すのが筋ってもんだ」
そして当然の様にコサインの後ろに控えていたザインも口を出してくる。
僕は、それを見て思いっきりため息をついた。
コサインは兎も角、ザインは本当に周りが見えていないんだなぁ。
強者にへつらう姿を見れば哀れにも思える。
「はぁ……、周りからは中堅冒険者が、新人冒険者に強請り行っているように見えるけど、実は『十三番目の狐』の制裁なんだろ? コサイン、あんたの本名はサルサ。『十三番目の狐』の『荒事』担当のサルサだ」




