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僕はヴォル! スキルは【回転】!  作者: 一狼
第3章 叩け! 町に蔓延る盗賊団を!
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024.フェンリル

「グルル……」


 子供フェンリルが僕たちを警戒し、唸り声をあげる。


 な、なんでこんなところにフェンリルが居るんだよ。


 いくら子供とは言え、神狼と呼ばれるモンスターだ。


 そう簡単にはいかないと思う。


 ……あれ?


 そもそもフェンリルに限らず魔狼や魔獣は嗅覚が鋭い。


 それなのに、なんで子供フェンリルは僕たちがここまで近づくのを許したんだろう。


 もしかして幼過ぎて、それほど脅威じゃない……?


「おい、ヴォル。クローディアの言っていたのはこいつ、だよな? さっさとやっちまうぞ」


 相手が神獣だろうと、遠慮が無いパトル。


「パトル、分かっているの? 相手は神獣だぞ。捕獲が目的だけど、一筋縄じゃ行かないよ。と言うか、捕獲の方がもっと難易度高いんだけど」


「はっ! 相手にとって不足はねぇって事だな! 行くぜ!」


 パトルは背中に交差して収めていた2本のグレートソードを抜き放ち、果敢と子供フェンリルに向かって行く。


「おらぁっ! 【十字斬り】!」


 先手必勝とばかりに、パトルは【大剣二刀流】で【十字斬り】を放つ。


 って、思いっきり攻撃しているよ! 捕獲が目的なのに!


 あ、いや、でもフェンリル相手だからいいのかな?


「パトル! 倒しちゃだめだよ!」


「分かってる! 峰打ちだ。何の問題もねぇ!」


 いやいや、思いっきり刃を立ててるじゃないか。


 ええい、パトルに任せていたら問題が発生しそうだ。


 僕も鞘に入ったままの剣を持って、子供フェンリルに向かう。


「せいやぁっ!」


 『ギジ(疑似)・スラッシュ』を放ちつつ、体裁きを【回転】スキルを混ぜながら小刻みに位置を変えて子供フェンリルを誘導しつつ、パトルのサポートを行う。


 そしてタイミングを見計らってアリエスに指示を出す。


「アリエス!」


「うむ、吾輩に任せたまえ。【アイスアロー】」



 本来の【アイスアロー】は十数の氷の矢を放つ魔法だ。


 だけどアリエスが放つ【アイスアロー】は【極大魔力】の影響を受け、数十本の氷の矢を放つ魔法へと変わる。


 下手をすれば、百本以上もの【アイスアロー】へとなってしまう。


 だが、今目の前に展開しているのは、3mほどの長さの氷の槍と化した4本の【アイスアロー】だった。


 そもそも、アリエスは【火魔法】【水魔法】【風魔法】【土魔法】の4つ初級魔法しか使えない魔道具の腕輪しか持っていなかった。


 だけど今は、それとは別の【氷魔法】【雷魔法】【光魔法】【闇魔法】の4つの初級魔法が使える魔道具の腕輪を持っている。


 その理由は、僕が皆をエーデ師匠に会わせた時のことが関係している。







『まぁ、取り敢えず、お近づきのしるしに貴方にはこれを上げるわぁ』


 そう言ってエーデ師匠がアリエスに渡したのは1つの腕輪と2つのリングだ。


『これは?』


『氷・雷・光・闇の4つの初級魔法が使える魔道具よぉ。貴方が今右腕に着けているジーオウ作の別バージョンよぉ』


『なんと……! それで、こちらのリングは?』


『それはぁ、その魔道具の出力制御装置よぉ』


『制御装置……?』


『ええぇ、貴方は【極大魔力】の制御を諦めていないかしらぁ? 確かに【極大魔力】の威力は凄いけどぉ、それは入力部分の事であって、出力に関してはコントロールが効くのよぉ』


 エーデ師匠の言葉にアリエスは目を見開いて驚く。


『でもいきなり出力を制御しろと言われても無理だから、そのリングのサポートを受けて慣れる事ねぇ』


『そうか……吾輩の【極大魔力】は制御できるのか……』







 などのやり取りがあった訳で、アリエスは【アイスアロー】を4本の氷の槍に纏め、周囲への被害を極力抑える形に持っていくことに成功した訳だ。


 アリエスの放った4つの【アイスアロー】は子供フェンリルに向かって突き刺さる。


 アリエスも捕獲が目的だと言うのをちゃんと理解し、敢えて直接狙わずに、子供フェンリルの機動力を奪う位置に向かって放っていた。


「グルゥ!」


 流石子供と言えどフェンリル。


 機動力を削ぐために放たれた【アイスアロー】を紙一重で躱しつつ、脅威と映ったアイリスに向かって牙を剥く。


 そこへ立ち塞がったのはモコだ。


「来た……です! やっと来たです! Lv99! 【ものまね師】の真骨頂の発揮です!」







 モコもエーデ師匠にアドバイスを貰っていた。


『貴女、【ものまね師】はどこを真似ていると思うかしらぁ?』


『……? 動きを真似ているんじゃないですか?』


『ふふふ、そうねぇ。でもそれだけじゃないのよぉ。ものまねはねぇ、"心"を真似るのよぉ』


『心を……ですか』


『ええぇ、動きだけではなく、その人の心をまでを真似る事で【ものまね師】は完成するのよぉ』








 そのアドバイスを受けて、モコの【ものまね師】のレベルはどんどん上がっていった。


 僕たちのアドバイスでもレベルがかなり上がっていたけど、エーデ師匠のアドバイスを受けてからの方がレベルが爆上がりだ。


 普通であれば、レベルが高ければ上がりにくくなるのに、モコの【ものまね師】は一気にLv98まで上がっていたのだ。


 Lv98まで上がっても、動きのリアルトレースしか出来なかった【ものまね師】だけど、おそらくLv99になることによって、動きだけじゃなく、技まで真似れるようになるんだと思う。


 究極の大器晩成型だ。


 【ものまね師】の理解を深め、極意を得たことでレベルが上がりやすくなったんだと思う。


 そしてついにLv99になったモコは、早速僕の動きやスキルを真似る。


 向かってくる子供フェンリルを、【回転】スキルで横にズレて躱す。


 それと同時に、【回転】スキルの威力を利用して鞘に嵌ったままの剣で子供フェンリルを叩きつける。


「ギャウンッ!」


 子供フェンリルが直ぐにその場を離脱しようと距離を取ろうとするが、僕は腰に下げた袋からパチンコ玉を取り出し、【回転】スキルでジャイロ回転を加えた指弾で子供フェンリルの脚を狙い撃つ。


「ギゥ!?」


 僕のパチンコ玉を受けた子供フェンリルはその場でもんどりうって倒れる。


「【ウインドボム】!」


 そしてすかさず【ものまね師】で風の塊を放つもモコ。


 まともに【ウインドボム】を受けた子供フェンリルはパトルの前まで転がされる。


「よし! あとはあたしに任せな!」








『それで? あたしには何もないのかよ』


 アリエスとモコに魔道具やアドバイスを送ったエーデ師匠に、パトルが噛みつく。


『あらぁ? 貴女もアドバイスが欲しいのかしらぁ?』


『あたしもヴォルの仲間だぞ。2人にやってあたしに無いなんて仲間外れにする気か?』


『ふふふ、冗談よぉ。貴女にもアドバイスはあるわよぉ』


『ふん、よし言え。聞いてやる』


 先ほどまでのやり取りがあるからだろうけど、どうして素直になれないのかなぁ、パトルは。


 そんなパトルにエーデ師匠はアドバイスを授ける。


『パトル、貴女はもう少し頭を使った方がいいわよぉ』


『頭……? なんだよ、頭突きでも鍛えろって言うのか?』


『…………』


 流石にこの返しに、エーデ師匠も呆れてしまっていた。


 パトル……そうじゃない。そうじゃないんだよ。


 と言うか、最初の頃はそうでもなかったけど、パトルの奴、脳筋になりつつないか……?









「おらぁ!」


 パトルは転がってきた子供フェンリルに、渾身の頭突きを放つ。


 ドゴンッ!


 とても頭突きとは思えない音を鳴らしながら、子供フェンリルの頭にヒットする。


 子供フェンリルは脳震盪を起こしたのか、ふらふらと千鳥足になっていた。


「ヴォル、今ならあれ、使えるんじゃないのか?」


 ああ、あれね。


 僕はクローディアから渡されたハンカチを取り出す。


 すると警戒を露わにしていた子供フェンリルは、ハンカチの匂いに釣られて鼻をクンクンと鳴らす。


「クーン……、クーン……」


「おお、本当に大人しくなった」


 僕は大人しく撫でられながらすり寄ってくる子供フェンリルを見ては驚く。


「マジでだな。さっきまでの警戒は何だったんだか」


「こう見ると可愛いです」


「ふむ、ともあれこれで協力者クローディアの要請には応えられた訳だ」


 だね。後はクローディアの情報待ちか。











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― 新着の感想 ―
[一言] 師匠、三人にアドバイス。脳筋加速により頭を使う→頭突きに(笑) 子フェンリル、どう考えてもあの子だな。
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