018.盗賊団退治
冒険者ギルドでは、盗賊の討伐依頼は基本出されることはない。
相手はモンスターではなく、知恵のある人だからだ。
ちょっと頭の回る者なら、根城にしている町に人をやり情報を集めるだろう。
そこに堂々と冒険者ギルドで盗賊団の討伐の依頼がだされれば、これから向かうのがバレバレだ。
盗賊団の方も迎え撃つ罠を仕掛けたり、場所を移動したりと対策されてしまうから。
そもそも、盗賊退治は冒険者の仕事ではなく、その土地を治めている領主の仕事だ。
まぁ、そんなわけで冒険者ギルドには盗賊の討伐依頼を出されることはない。
但し、賞金首としては張り出されている。
「エーデ師匠からの試験で、盗賊団討伐をする事になっているんだけど、これなんかどうかな?」
そう言いながら僕は冒険者ギルドに併設された酒場で1枚の賞金首の紙をみんなに見せる。
「ほぅ……、ザースディーンの賞金首の中では一番高い盗賊団だな」
「ですね……。私たちにはちょっと難しいのではないですか?」
「あの魔族の女からの試験ってのが気に入らないが、いいのに目を付けるじゃねぇか、ヴォル」
僕が選んだ賞金首の盗賊団は、ザースディーンの町が出来た当時から町を食い物にしている古参の盗賊団・『十三番目の狐』だ。
古参だけあって、なかなか手強く賞金首も高い。
普通なら駆け出しの冒険者には手に余る案件でもある。
だけど、パトルは相変わらずバトル脳だから僕が選んだ『十三番目の狐』に諸手を挙げて喜んでいた。
「少なくとも戦闘力では引けを取らないと思うよ。問題は、どうやって見つけるかだね」
モコは未だに【ものまね師】のスキルを『技術』で使うことは出来ないが、【ものまね師】を通じて操って戦ってきたので、戦闘を避けていた頃よりは戦力になりつつある。
アリエスは【極大魔力】があるから過剰戦力だし、パトルに至っては戦場で勝手に突っ走っていかないかの方が心配だ。
「噂じゃ、イーストザースディーンじゃなく、ウエストザースディーンの方に根城があるらしいです。だから詳しい情報もウエストザースディーンの冒険者ギルドに行けば分かるかもしれないです」
なんだかんだ冒険者歴が長いモコは、『十三番目の狐』の噂も聞きつけていたらしく、ウエストザースディーンに向かったらどうか提案してくる。
「ウエストザースディーンかぁ……」
「あそこのギルド支部は吾輩たち東支部を見下しているからな」
「あー……、あいつら面倒くさいんだよなぁ」
どういう訳か、ウエストザースディーンのギルド支部の冒険者たちは、イーストザースディーンの冒険者たちを田舎者と見下している。
イーストザースディーンのギルドでは開拓が中心で、街の外に出てモンスターを討伐するのが主となっているけど、ウエストザースディーンでは西からくる物資や人材が流れてくる関係で、町中を中心とした依頼が主となっている。
その所為か、西の自分たちはシティーボーイ?な流行りに乗った冒険者と自負していて、僕たち東はモンスターを相手する野蛮人かイケてない田舎者扱いなのだ。
まぁ、その西が発展しているから盗賊団が多いんだけどね。
「でも、『十三番目の狐』の情報は、ウエストザースディーンの方が集まりやすいですよ」
「うーん……、しょうがない。行ってみるか?」
モコの提案により、僕たちは取り敢えずウエストザースディーンのギルド支部に行って情報を集めることにした。
僕たちが冒険者ギルドを出ようとした時、見覚えのある人物が入ってきた。
「あ? 卑怯者が何でギルドに居やがる。周囲は騙せても俺は騙されないぞ」
ザインとその仲間たちだ。
あれだけボコボコにやられたにも関わらず、未だに卑怯者呼ばわりをしている。
公衆の面前で僕が実力を示したこともあり、今ではザインの言葉に耳を傾ける人はあまりいない。
……いないけど、一度ついた印象は簡単には拭えないからなぁ。
僕は未だに他の冒険者には嫌煙されているし。
と、話がずれたね。
ザインが決闘に負けたのも卑怯な手段を使ったと頑なに信じて僕を貶している。
まぁ、僕はあまり相手にしていないんだけどね。
「ふん、デカい面をしていられるのも今のうちだ。我々が正しかったって事が証明されるだろう」
ザインに続いて兄貴分のコサインも僕に忠告してくる。
……一度もデカい面をした覚えはないんだけどなぁ。
「ん? その手に持っているのは、賞金首の紙か? はっ、辞めておけ。返り討ちにあいたくなければな」
その時、目敏く僕が手に持っていた賞金首の紙を見ては厭味ったらしく言ってくる。
「マジか? ぎゃはは! ド素人共が盗賊団退治かよ」
「ふーん、無謀な挑戦をするんだね」
ザインとコサインの残り2人のメンバーも僕たちをバカにする。
「ご忠告どーも」
「はっ、あたしらを舐めんじゃねぇよ。見てろ、近いうちに盗賊団壊滅の報を届けてやるよ」
僕はそっけない態度でスルーしようとしたけど、パトルが余計な事を言っちゃう。
こういうのは相手しない方がいいのに。
ザイン達は更にバカにした罵詈雑言を浴びせながらギルドの奥へと向かう。
「パトル……」
僕は溜息を付きながらパトルに恨みがましい目を向ける。
「な、何だよ……」
「別に」
「まぁ、あれだけ啖呵を切ったんだから、尚更『十三番目の狐』をやっつけないとな!」
気楽に言っちゃって……
でもまぁ、結局は盗賊団を討伐しないとエーデ師匠の試験はクリアしたことにはならないからね。頑張らないと。




