012.あやつり師
「それで、あたし達のパーティーに入ってもらえるのか?」
「…………」
改めての、パトルからのパーティー加入の勧誘に、モコはピシリと固まってしまう。
「おいおいおいおい、ここまで腹を割って話したのに、まさか断るだなんて言わないよな?」
「待って! パトル、それじゃあ脅しになっちゃうよ」
「ああ? だけどよぉ……」
まぁ、確かに親身になって【ものまね師】のスキル検証に付き合ってあげたのに、それでサヨナラじゃ寂しすぎるけどね。
だけど、パーティーに加入するかしないかを決めるのはモコだ。
そこに僕たちの強制力を働かせてはダメだ。
「あ、あの、ごめんなさいです」
……はぁ、パトルじゃないけど、僕としてもパーティーに加入してくれるんじゃないかって気持ちでいたから、こうハッキリと断られるとキツイね。
「あ、違うです! ごめんなさいって言うのは、パーティーに加入するのを断るって意味じゃなくて、私なんかの為にいろいろしてくれてごめんなさいって意味です」
ん? パーティー加入の断りじゃなかった?
「私なんかで良ければ、私をヴォルさん達のパーティーに入れて欲しいです。ただ、さっきも言いましたけど、今の私の【ものまね師】じゃ、お二人のお役に立てないので、それはごめんなさいです」
「よっしゃぁ! 3人目ゲット! あと、役に立たないだなんて気にするな。少なくとも、モコが加入することで面白くなるってあたしの勘がそう言っている」
「え? パトルは【第六感】スキルを持っていないよね? それなのに勘?」
「スキルが無くたって勘は働くぜ。強いて言うなら"女の勘"だな。なんだよ、ヴォルはモコが入るのは反対なのか?」
「まさか、大歓迎だよ。それに、【ものまね師】のスキルがどう大化けするのかワクワクしているよ」
使えないと蔑まれていたスキルが大化けした時の周囲の反応が見ものだしね。
それが僕のパーティーだとすれば胸のすく思いにもなる。
「それじゃあ、改めて宜しくね。モコ」
「よろしくな!」
「は、はい! よろしくお願いするのです!」
こうして3人目のパーティーメンバーを加えた僕たちは、次の日、早速モコの【ものまね師】のスキルを鍛えるべく、いつもの森……じゃなく、森の外――イーストザースディーンの東に広がる平原に居た。
「さて、モコにはまず戦闘に慣れてもらう事から始めよう」
「は、はいです。ですけど、私あまり戦うことが出来ませんです」
「それって、【ものまね師】が戦闘向きじゃないからって事だよね?」
昨日のモコの話だと、スキルが使えないから戦えないって言ってた。
だけど、まったく戦えないって訳じゃない。
それだとE級冒険者に上がることは出来ないし、芸人の真似事だけで5年も生活は出来ないはず。
「大丈夫だよ。相手をしてもらうのはゴブリン1匹だよ」
「ゴブリン1匹なら何とか……」
「ただし、【ものまね師】のスキルを使ってね。折角だから、戦闘での【ものまね師】のレベル上げをしようか」
芸人の【ものまね師】よりも、戦闘での【ものまね師】のレベル上げの方が、これからのモコの【ものまね師】の効果が高そうだしね
「え!? まだ【ものまね師】は動きをトレースするだけにしか使えないですよ!?」
「大丈夫大丈夫。あ、来た来た。まずはパトルが連れて来たゴブリンを相手してもらうね」
「ええええっ!?」
パトルには魔女の森に入ってゴブリンを1匹だけ連れてきてもらっていた。
そのあとは、邪魔が入らないように周囲を警戒してもらう。
「おーい、連れて来たぞー」
「それじゃあ、モコ。僕の動きを【ものまね師】で真似てね」
「え? え? え?」
やることは簡単だ。
今まではモコが傍に居る人を【ものまね師】で真似ていたから戦いにくかったと思う。
だけど、発想の逆転をすれば答えは簡単だ。
モコが僕を真似るんじゃなく、僕がモコを操るんだ。
僕の動きを真似するんであれば、僕がモコをその通りに動かし、ゴブリンを相手させる。
「グギャァ!」
パトルを追いかけていたゴブリンが、目標をモコに変えて襲いかかってきた。
僕はそれを見て、剣を上段に構える。
モコはそれを真似て、同じように剣を上段に構えた。
そして振り下ろしゴブリンの頭に叩きつける。
「ギャッ!」
ゴブリンは辛うじて頭に直撃を避けたものの、肩にヒットする。
剣はそのまま流れる様に脇腹を狙い、横薙ぎに振るう。
傍から見ると、僕は一人演武をしている訳で、そのそばではモコがゴブリンの相手をしている。
かなりシュールな光景だ。
とは言え、【ものまね師】を通じているとは言え、モコを操っている感覚は意外と楽しい。
3撃目で、ゴブリンは沈黙した。
「はぁー、凄いです。まさか【ものまね師】を使ってモンスターを倒せるとは思わなかったです」
「まぁ、この方法は条件付きでだけどね」
2人が同じような足場で戦うために平原に限定し、対応するモンスターは1匹だけとなる。
後は、横やりが入らないように警戒する人を用意する。
これならモコも【ものまね師】で戦える。
後は出来るだけモコが【ものまね師】のレベルを上げて、使い方の意識を『動き』から『技術』で使用できるようになれば、僕たちのパーティーの戦術の幅が広がるはず。
この後、僕たちはモコの【ものまね師】のスキルを鍛えるために、十数回の戦闘をこなした。




